算定基礎届は年に1回の手続きであるため、つい手順を忘れがちです。この記事では、算定基礎届の概要から具体的な書き方までをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
・算定基礎届とは何か、いつ・どこへ出すのか
・提出の対象になる人/ならない人の線引き
・3~5月の報酬で6月改定になった人の扱い(算定は出す。9月にもう一度変わる)
・記入例と、70歳以上・75歳以上・途中入社の書き方
「被保険者報酬月額算定基礎届」の概要
そもそも標準報酬月額とは?
従業員から徴収する健康保険・厚生年金保険料は、「標準報酬月額」によって決まります。
もとになる「報酬」は給与の基本給、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当の他、現金又は現物で支給されるものすべての金額です。(イメージとしては通勤費込みの総支給額ですね)
この1か月ぶんの合計を「報酬月額」といい、それを保険料額表の等級に当てはめたものが「標準報酬月額」です。(総支給額がそのまま標準報酬月額になるわけではない、ということですね)
なお、年4回以上の支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。(年3回以下の賞与は報酬に含めず、賞与支払届のほうで扱います)

算定基礎届とは?
毎月の給与と標準報酬月額に大きな差が出ないように、7月1日現在の健康保険・厚生年金保険の被保険者、70歳以上被用者(以後対象者)について、4~6月に支払った賃金を「算定基礎届」で届出し、毎年1回標準報酬月額を決定します。(これを定時決定といいます)
「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月に適用されます。健康保険料の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となります。
つまり、
算定基礎届の4~6月給与により健康保険料・厚生年金保険料を計算し、9月から健康保険料・厚生年金保険料が変更になる
ということです。
算定基礎届の提出対象者
算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在の全ての被保険者及び70歳以上被用者です。(印刷されているのは、あくまでも日本年金機構が発送する時点の名簿であり、入退社等で変更の可能性があります)
ただし、以下は対象外です。
- 6月1日以降に資格取得
- 6月30日以前に退職
- 7月改定の月額変更届を提出
- 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出
ただ、このうち7月改定の月額変更届を提出する人と8月または9月に随時改定が予定されている人については、紙で提出する場合、算定基礎届の報酬月額欄を記入せず、空欄で、備考欄の「3.月額変更予定」に〇をする必要があります。(電子媒体・電子申請の場合は、この2つに当てはまる人を除いて作成します)
気をつけたいのが、この4つに6月改定の人は入っていないことです。次で書きます。

算定基礎の対象として忘れやすいので、次の人達も注意しましょう!
- 育児休業中
- 介護休業中
- 病気療養中
- 二箇所以上の勤務者
- 70歳以上の方
- 出向中の方
3~5月に給与が変わって6月改定になった人はどうする?
6月改定になった人も、算定基礎届は通常どおり提出します。そして9月から、算定基礎届で決まった標準報酬月額にもう一度変わります。
というのも、上の対象外4つは「7月改定」か「8月・9月改定予定」の人の話で、6月改定はどれにも当てはまらないからです。
なお、6月までの随時改定が使えるのは、その年の8月までと決まっています。
6月までに随時改定によって決定された標準報酬月額は、再び随時改定がない限り、当年の8月までの各月に適用されます。また、7月以降に改定された場合は、翌年の8月までの各月に適用されます。
随時改定(月額変更届) – 日本年金機構
ですので、たとえば3月に支払う給与から固定的賃金が変わり、3・4・5月の平均で随時改定に該当した人は、
6月 ⇒ 月額変更届で決まった標準報酬月額(8月まで)
9月 ⇒ 算定基礎届で決まった標準報酬月額(翌年8月まで)
という2段階になります。同じ人の等級が3か月で2回動くので、給与ソフトへ反映する月を間違えやすいところだと思います。
ここでいう「変わった月」は、辞令が出た月ではなく変わったあとの固定的賃金で給与を支払った月です。3月に支給する給与から上がったなら3月が起点になります。(4月支給ぶんから上がったなら起点は4月=7月改定になります)
変動後の給与を初めて支払った月ごとに整理すると、こうなります。
| 変動後の給与を初めて支払った月 | 随時改定の判定対象 | 改定月 | 算定基礎届はどうなる? |
|---|---|---|---|
| 3月 | 3・4・5月 | 6月 | 通常どおり提出する。9月から算定の標準報酬月額に変わる |
| 4月 | 4・5・6月 | 7月 | 対象外。月額変更届のほうを提出する(紙の算定基礎届では備考「3.月額変更予定」に〇・報酬月額欄は空欄) |
| 5月 | 5・6・7月 | 8月 | 申出をすれば省略できる(備考「3.月額変更予定」に〇・報酬月額欄は空欄) |
| 6月 | 6・7・8月 | 9月 | 同上 |

7月・8月・9月の改定については、日本年金機構も随時改定が優先とはっきり書いています。
7月、8月または9月の随時改定に該当する場合は、随時改定により決定された標準報酬月額が優先されます。
算定基礎届と月額変更届(7月・8月・9月改定分)では、どちらの標準報酬月額が優先されますか。 – 日本年金機構
逆に言うと、6月改定はこの「優先」の話に入ってきません。6月改定の人の報酬月額欄を空欄にしたり、備考の「3.月額変更予定」に〇をしたりしないよう気をつけてください。
月額変更届そのものの書き方は「「被保険者報酬月額変更届」の書き方、記入例、注意点など」にまとめているので、よかったらご覧ください。
算定基礎届の提出期限・提出先
6月中旬以降、順次、用紙が届くので、
7月1日から7月10日(10日が土日祝の場合はその翌日まで)までに、
「被保険者報酬月額算定基礎届 70歳以上被用者 算定基礎届」等を、
日本年金機構へ郵送または電子申請にて提出します。
算定基礎届の提出書類・添付書類
必要書類は次の用紙です。
「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届/70歳以上被用者 算定基礎届 」
(この届書を電子媒体でする場合は、1.電子媒体(CD又はDVD) 2.電子媒体届書総括票(データでなく紙で) が必要です)
添付書類
基本なし。
下の場合のみ必要
- 被保険者報酬月額変更届(7月改定者)
- 年間報酬の平均で算定することの申立書
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等
算定基礎届を間違えると・・・
算定基礎届を提出しても記入漏れとかではない限り、指摘されることはないと思います。
ただ、給与額を間違えたりすると、「健康保険、厚生年金の資格報酬調査の結果」でも書いたように、過去にさかのぼって修正させられたりするので注意が必要です。
雇用保険、社会保険の手続きについてはこの1冊がオススメです↓↓
<<こんな本です>>
昔からある本ですが、更新されてて安心です。わからないとこを調べる「辞書」のように使えます。
「被保険者報酬月額算定基礎届」の記入例、書き方、提出方法、注意点
算定基礎届の書き方はこんな感じです。
例えば、月給制で、毎月15日締め、25日給与支給の会社で例を作ります。
<<月々の給与(例)>>
| 給与支払日 | 総支給(交通費込)(⑪) | 日数(⑩) |
| 4/25 | 251,000 | 3/16–4/15なので31日分 |
| 5/25 | 253,000 | 4/16–5/15なので30日分 |
| 6/25 | 257,000 | 5/16–6/15なので31日分 |

<<記入例>>
間違いやすいのが、「日数」だと思います。
月給の人は暦数(4月なら30日、5月なら31日)がずれる形になると思います。
雇用保険の離職票みたいに。(離職票と同じで、欠勤して、給与から減額している場合は、その日数をマイナスします)
(14)の「総計」欄は、基礎日数が17日以上(短時間就労者(パート)で4月~6月の支払期に17日以上の月がない場合は、15日以上)の月を総計した額を記入してください。
なお、特定適用事業所などに勤める「短時間労働者」は基準が違っていて、支払基礎日数が11日以上の月で算定します。(パート=短時間就労者と、社会保険の適用拡大でいう短時間労働者は別物なので、ここは分けて考えてください)
つまり、5月が12日しかなければ、(11)の金額は記入するが、(13)の金額は「-」(横棒)で、合計の(14)には足さない形です。
また、(10)の日数はパートの人とかは暦数ではなく、出勤日数です。(この場合は、有休の場合、有休日数をプラスします)

「被保険者報酬月額算定基礎届」70歳以上の場合の書き方
70歳以上の方で、
過去に厚生年金保険加入があり、常時働いている方は、⑯備考の「1.70歳以上被用者算定」に〇をします。
「被保険者報酬月額算定基礎届」75歳以上の場合の書き方
75歳以上は健康保険は喪失していますが、70歳以上被用者に当てはまるなら、厚生年金のほうで届出が必要です。70歳以上被用者は、過去に厚生年金保険の被保険者期間がある人で、いまも厚生年金保険の適用事業所で働いている人をいいます。(「過去に健康保険に入っていたか」ではなく、厚生年金のほうを見ます)
この場合、基本的に書き方は他の人と同じですが、健康保険の被保険者整理番号は空欄になります。ただし個人番号(または基礎年金番号)は記入が必要で、⑯備考の「1.70歳以上被用者算定」にも〇をします。
「被保険者報酬月額算定基礎届」4~6月の間に入社した場合
例えば上の例で5月分から入社しているなら、
4月の行は空欄で、
⑭は253,000+257,000=510,000となり、
⑮は510,000/2=255,000となります。
先ほど月の勤務日数が17日(パートの場合は15日)以上の場合を対象にすると書いていますが、その月の途中で入社した場合は17日以上であっても対象に含みません。
例えば、上の例なら15日締めなので16日入社は計算に入るのですが、4月18日、19日に入社した場合は、5月分の金額は計算対象から外すことになっています。
この場合、⑱の「4.途中入社」の欄に丸をして、合計金額から5月分を省く形(つまり6月分だけの金額)で書けばいいと思います。
入社の場合と書いていますが、パートなどで社会保険に加入した場合も、その加入日を基準に同様に判断していきます。
「被保険者報酬月額算定基礎届」に新入社員などが印字されていない場合
被保険者の氏名等は、5月中旬頃時点の情報を基に印字されています。
届出用紙に氏名等が印字されていない場合は、手書き等で追記します。用紙が足りなければ、管轄年金事務所に言えば送ってくれます。
「被保険者報酬月額算定基礎届」注意点
・電子申請が義務化されていたり、これまで電子申請でされている場合は、電子申請が早いと思います。
・電子申請の手続きをしていないとか、従業員が少ない場合は、用紙やCDを郵送で提出する形が多いのではないかと思います。
・個人的には従業員が多くなると算定基礎の計算もですが、9.10月の改定手続きが面倒なので、自動でやってくれる給与計算ソフトに合わせて、申請方法を変えるのが楽かなと思います。
・標準報酬月額は改定された時、必ず従業員に通知しなくてはなりません。
・最後にこれを書くと、とても無責任ですが、経験上、年金事務所の対応は人によって違います。。。あくまで、私が聞いたり調べた事をまとめてますので、参考に見て頂き、不安な場合は、年金事務所にご確認ください。
<<労働保険の更新はこちら>>
労働保険の年度更新のやり方~「労働保険概算・確定保険料/一般拠出金申告書」の記入例、書き方など~
<<月額変更についてはこちら>>
<<賞与支払届についてはこちら>>
「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届」の書き方、記入例、提出方法
<<住民税についてはこちら>>
「被保険者報酬月額算定基礎届」のQ&A
- 6月改定になった人の備考欄は、何か〇をするの?
-
特に〇は不要で、通常どおり4~6月の報酬を記入して提出します。備考の「3.月額変更予定」は、7月~9月に随時改定が予定されている人のための欄なので、6月改定の人には使いません。
- 9月改定の予定で申出をしたのに、結局要件を外れたらどうなるの?
-
あらためて算定基礎届を出すことになります。日本年金機構も「随時改定の要件に該当しないことが判明した場合は算定基礎届を、速やかにご提出ください」としているので、判明した時点で出す形ですね。
- 算定で決まった保険料は、いつの給与から控除するの?
-
新しい標準報酬月額は9月分の保険料から使います。翌月控除の会社なら10月に支給する給与から、当月控除の会社なら9月に支給する給与からになります。ここは自社がどちらなのかで変わるので注意してください。
- 決定通知書はいつ届くの?
-
提出後、9月ごろに「健康保険・厚生年金保険 標準報酬決定通知書」が事業所へ届きます。届いたら従業員へ通知する必要があるので、給与明細に載せるなどして知らせてください。
- 6月改定で上がったのに、9月の算定で下がることもあるの?
-
あります。6月改定は3~5月の平均、算定は4~6月の平均なので、対象にする月がずれているためです。残業の多い月がどちらに入るかで結果が変わるので、下がっても間違いとは限りません。
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