
労基の調査と聞くとどんな印象をお持ちでしょうか?特に何も思わない人もいれば、怖い、しつこい、めんどくさいなどのネガティブな印象を持たれているケースも少なくないと思います。
おそらく会社の業界や会社の姿勢などにより印象が大きく異なると思います。
そういう私も以前の職場では労基の調査など数年、数十年に一度くらいしかなかったのに、今の職場ではグループ会社を含めると毎年どこかの会社で調査があり、是正を受けている状態です。
今回はそんな労基の調査の概要と実際の対応した様子をご紹介できれば思います。
労働基準監督署の調査とは
労働基準監督署とは

労働基準監督署は厚生労働省の組織です。内部は下のような部署で分かれています。その中で調査を主に行う部署は「方面(監督課)」になります。
部署名 | 役割 |
---|---|
方面(監督課) | 労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受付や、相談対応、監督指導 |
安全衛生課 | 機械や設備の設置に係る届出の審査や、職場の安全や健康の確保に関する技術的な指導 |
労災課 | 仕事に関する負傷などに対する労災保険給付など |
業務課 | 雑務・会計処理など |
調査を担当する方面(監督課)の仕事は、主に次の通りで「警察」に近い印象です。
- 相談、申告の受付・・・労働条件に関する相談や従業員からの労働基準法違反などの申告の受付
- 臨検監督(監督指導)・・・労働基準法などの法律に基づいて、定期的にあるいは働く人からの申告により、現場に立ち入り、設備や帳簿などを調査して労働条件について確認。違反がある場合には事業主に是正を指導。緊急時は使用停止などの行政処分を行う。
- 司法警察事務・・・事業主が、繰り返しの指導にもかかわらず是正を行わないなど、重大・悪質な事案については、法令違反事件として取調べ等の任意捜査や捜索・差押え、逮捕などの強制捜査を行い、検察庁に送検。
労働基準監督署が行う調査の種類
労働基準監督署が行う調査(臨検監督)の種類は、色々ありますが主に、定期的な調査「定期監督」と労働者からの申告による「申告監督」に分かれます。
調査の流れ
労働基準監督署の調査の流れは次の図の通りです。
多くの場合、①事業所のへの連絡、②調査、③是正、(④再提出)、⑤完了または送検となります。

労働基準監督署からの連絡方法
労働基準監督署からの連絡方法は、①郵送・電話で案内が来る、②いきなり現地に来るなどがあります。
「労働条件等に関する調査の実施について」の案内
文書の案内の場合、「労働条件等に関する調査の実施について」というタイトルが多く、日時、場所、準備するもの等が記載されています。
XXX基署発第1号
令和6年12月15日
事業主各位
XXX労働基準監督署
労働条件等に関する調査の実施について
平素から労働基準行政の運営につきまして、ご理解とご協力をいただき感謝申し上げます。
さて、当署におきましては、かねてから労働基準法、労働安全衛生法等の周知徹底に努めているところでありますが、このたび管内における事業場の法令の遵守状況を確認するため、下記のとおり労働条件等に関する調査を実施することといたしました。
つきましては、貴事業場の代表者又は労務担当責任者にご来署いただきますよう、通知いたします。
なお、ご欠席の場合は、後日当署担当官が貴事業場を訪問し、必要な調査を実施させていただくことがありますので、あらかじめご承知おきください。
記
1日時 令和7年2月1日 午前10時 から(所要約2時間)
2場所 ○○県○○市△1-1 XXX労働基準監督署
(封筒記載の地図をご参照ください)
3持参いただくもの
(1)本状
(2)同封の「労働条件調査票」(あらかじめご記入願います)
(3)就業規則·賃金規程
(4)タイムカード等労働時間が確認できる書類(直近6か月分)
(5)賃金台帳(直近6か月分)
(6)時間外労働·休日労働に関する協定届(控)
(7)変形労働時間制を採用している場合その関係書類(労使協定、勤務割表等)
(8)労働条件通知書もしくは雇用契約書
(9)年次有給休暇管理簿
(10)健康診断個人票
(11)過重労働対策に関する書類(長時間労働者への通知、面接指導記録等)
調査があるのはどんな時
従業員からの申告などの場合もあり、法令違反などが疑われる場合もありますが、定期的調査もあるため、心当たりがなければ必要以上におびえる必要はありません。
事前準備について
案内文面に書かれた書類等を準備するほか、事業所内の調査の場合は安全管理なども再確認しましょう。
顧問の社会保険労務士に同行してもらう場合は連絡しましょう
実際の調査の流れ
労働基準監督署の調査で見られるポイント

上の定期監督の違反事項の統計の通り、 ①時間外労働(残業)を行わせた、 ②設備などの安全基準を満たしていない、 ③ 時間外労働(残業)等の割増賃金を支払っていないなどが多くなっています。
このあたりが、通常みられるものだと考えてよさそうです。
実際の調査を受けて
先日あったのは、管轄の労働基準監督署での調査でした。顧問の社会保険労務士と一緒に行ったのですが、2名までと人数制限があったので、現場の責任者は同行できずでした。
是正勧告書とは
調査の終わりに「是正勧告書」という文書を通常渡されます。
これは、どういう問題点があるので直してくださいねという内容です。これに沿って是正していきます。
この文書自体は通常行政指導の範囲で拘束力はないのですが、従わない場合や悪質な場合は検察庁に送検されるので、実質的に従わなくてはなりません。
是正の流れ、やり方、注意点等
実際の是正は、どうやって直したかを報告書にして労働基準監督署に提出して行います。
是正報告書の記入例、書き方


是正報告書Q&A
- 文章で書きにくい場合はどうしたらいいの?
-
写真や振込明細などでわかりやすい方法が一番です。
- 報告用紙は渡されたものを必ず使わなければいけないの?
-
任意の様式でいいみたいです。ただ、報告先の監督署名、報告者の名義(職氏名)が記載されていること
・監督署からの指摘事項とそれに対する是正・改善措置の具体的な内容が分かること
遡及での支払いの証明について
残業代未払の場合は、次の給与と一緒に支払えばいい場合といつまでに即時支払って下さいと言われるケースなどがある。
支払ったことを証明するのは、賃金台帳に「修正分」いくらと記載があればOKの場合や、ネットバンキングやATMなどの振込した際の用紙を添付してください、などがある
是正の対応
郵送や監督署に再度訪問など。内容によって監督官に確認が必要です。再訪問までもなければ郵送でOK
その後の対応
是正報告書を持って行ったら再指摘される
たまにあるのが、是正報告書を持って行くと「ここだけでなく、あれも指摘したはずです」と範囲が広がっていくケースが多いです。
解釈の違いで広がっていくので注意が必要です。(実際の経験では、是正報告書を数度出したこともあります)