75歳以上の新入社員の社保・扶養の手続きと注意点

従業員の高齢化や定年延長の流れにより、75歳以上の方を新たに採用するケースが増えてきました。ところが、「74歳以下の社会保険との違いが分からない」「年金や健康保険の届出はどうすればいいのか」といった疑問を持つ担当者は少なくありません。

本記事では、75歳以上と74歳以下での社会保険の違いを整理し、必要な届出や実務上の注意点をわかりやすく解説します。ケーススタディやフローチャートも交えてまとめていますので、ぜひ日々の実務にお役立てください。


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75歳以上の従業員を採用したときの社会保険手続きと74歳以下との違い

高齢者雇用が一般的になってきた中で、「75歳以上で入職した場合の社会保険の取り扱い」は、総務・労務担当者にとって悩みどころです。特に74歳以下の従業員と比較すると、厚生年金や健康保険の扱いが大きく変わり、社内手続きも異なります。


健康保険と厚生年金の加入年齢の違い

まずは、74歳以下と75歳以上での大きな違いを表にまとめます。被用者という考え方が出てきます。

制度加入できる年齢74歳以下75歳以上
健康保険(協会けんぽ・健保組合等)~74歳勤務条件を満たせば強制加入加入不可(自動的に後期高齢者医療制度へ)
厚生年金保険~69歳勤務条件を満たせば強制加入加入不可。ただし「70歳以上被用者」として届出義務あり
雇用保険年齢制限なし条件を満たせば加入条件を満たせば加入

75歳以上の従業員を雇用する場合の必要な届出

75歳以上の従業員を雇用する場合、以下の届出が必要になります。

タイミング届出書類ポイント
入社時(75歳以上)・雇用保険資格取得届
・厚生年金保険70歳以上被用者該当届
厚生年金は加入不可だが、報酬を届ける必要あり
退職時70歳以上被用者不該当届退職日の翌日から5日以内に提出
毎年7月算定基礎届標準報酬月額を届け出る(保険料は発生しないが年金支給調整に必要)
給与変動時月額変更届報酬月額が2等級以上変動した場合に必要
賞与支給時賞与支払届賞与も年金支給調整に影響するため必ず提出

70歳以上被用者該当届とは?

提出の目的

75歳以上になると厚生年金の被保険者資格は喪失しますが、会社が「70歳以上被用者該当届」を提出する義務があります。これは「在職老齢年金」の支給調整のために、報酬月額や賞与を年金機構に通知する手続きです。

先輩担当者の声
「70歳以上被用者該当届は強制提出です。在職老齢年金の支給制限に関わるので、会社が必ず報酬を届けなければなりません。ただし、実際に制限がかかるのは年収がかなり多い人だけです。」

強制加入なのか?

  • 健康保険・厚生年金の保険料は発生しません
  • しかし、届出は強制的に必要です。
  • これは報酬に応じて年金支給額を調整する制度(在職老齢年金)があるためです。

在職老齢年金とは?〜働いている場合に年金支給が制限される仕組み〜

在職老齢年金とは、働いている場合に年金支給が制限される仕組みで次のような仕組みです。

老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるときに、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となる場合があります。

厚生労働省「在職老齢年金の計算方法

「70歳以上被用者該当届」の記入例、書き方

上記のように通常の資格取得などに比べるとシンプルな記入になります。

記入用紙は日本年金機構「2-5:従業員が70歳になったとき」からダウンロード可能です。


健康保険の扱いと市役所での手続き

75歳になると自動で後期高齢者医療制度へ

  • 健康保険の資格は75歳の誕生日当日に自動喪失します。
  • その後は各自治体の運営する「後期高齢者医療制度」に自動的に加入し、被保険者証が送付されます。

従業員本人の手続き

  • 会社側:健康保険資格喪失届を提出し、健康保険証を回収して返却。
  • 本人側:基本的に市役所での手続きは不要。新しい「後期高齢者医療保険証」が自動的に届きます

扶養家族の取り扱い〜従業員の家族は健保の扶養は加入できない?

後期高齢者医療制度には扶養という仕組みがありません

  • 従業員が75歳以上になった場合
    → その時点で健康保険を喪失するため、扶養家族(配偶者など)も同時に資格を失います。家族は国民健康保険等に加入手続きが必要です。
  • 扶養家族が75歳以上になった場合
    → 自動的に後期高齢者医療制度に加入します。会社は「被扶養者異動届」を提出し、保険証を返却します。

ケーススタディで理解する

事例①:75歳の新入社員(週30時間勤務)

  • 健康保険:加入不可(後期高齢者医療へ)
  • 厚生年金:70歳以上なので加入不可。ただし「70歳以上被用者該当届」提出が必要
  • 雇用保険:週20時間以上勤務なので加入対象
  • 手続き:雇用保険資格取得届、70歳以上被用者該当届、健康保険喪失届

事例②:74歳で在籍 → 翌月75歳到達

  • 健康保険:資格喪失 → 後期高齢者医療へ自動移行
  • 厚生年金:すでに70歳で資格喪失済み。報酬届出は継続
  • 家族:配偶者(70歳未満)は扶養資格喪失 → 国民健康保険へ加入手続き

手続きの流れ(フローチャート)


まとめ:75歳以上従業員の社会保険対応の要点

  1. 厚生年金は70歳未満まで加入可能。70歳以上は「被用者」として報酬届出のみ必要。
  2. 健康保険は75歳未満まで。75歳で自動的に後期高齢者医療制度へ移行。
  3. 70歳以上被用者該当届は強制提出。在職老齢年金の支給調整に必要。
  4. 算定基礎・月額変更・賞与支払届も必要(保険料は発生しないが年金調整のため)。
  5. 扶養制度は75歳以上で終了。本人・家族ともに後期高齢者医療または国保へ。


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