総務や人事の仕事をしていると、「それは労働法的にどうなの?」という会話がよく出てきますよね。でも、いざ「労働法って具体的にどの法律のこと?」と聞かれると、意外とうまく答えられない、という方も多いと思います。
というのも、「労働法」という名前の法律は、実は存在しないからです。労働基準法や労働契約法など、働くことに関わるたくさんの法律をまとめて、ふだん「労働法」と呼んでいるんですね。
この記事では、労働法とはそもそも何なのか、会社が守るべき主な法律と全体像を、総務・経理の担当者向けにやさしく整理してみました。一つひとつの細かいルールというより、「労働法という地図の全体」をつかむための入門編という位置づけです。
労働法とは?1つの法律ではなく労働関係の法律の総称
「労働法」という名前の法律はない
さきほども触れましたが、「労働法」という一本の法律があるわけではありません。働く人と会社の関係を定めた複数の法律をまとめて、そう呼んでいるだけなんですね。

なので、「労働法を確認したい」というときは、実際には労働基準法なのか労働契約法なのか、どの法律の話なのかを意識するとわかりやすくなります。
なぜ労働法があるのか
労働法の根っこにある考え方は、「立場の弱い労働者を守る」というものです。会社と個人では、どうしても会社のほうが力が強くなりがちですよね。そこで、最低限のルールを法律で決めて、働く人が一方的に不利にならないようにしているわけです。
パート・アルバイトにも適用される
労働法は正社員だけのものではありません。パートでもアルバイトでも、契約社員でも、雇われて働く人であれば基本的に適用されます。「アルバイトだから有給はない」といった思い込みは、労働法の観点ではあやういので注意したいところですね。
会社が押さえておきたい主な労働法
労働法に含まれる法律はたくさんありますが、総務・経理の実務でよく出てくる代表的なものを表にまとめてみました。まずは「こういう法律があるんだな」という全体像をつかむのがよいと思います。

| 法律 | 主な内容 |
|---|---|
| 労働基準法 | 労働時間・休日・賃金など労働条件の最低基準 |
| 労働契約法 | 採用から退職までの労働契約のルール |
| 最低賃金法 | 賃金の下限(地域別・特定産業別の最低賃金) |
| 労働安全衛生法 | 職場の安全・健康診断・ストレスチェックなど |
| 労働者派遣法 | 派遣で働く人を守るルール |
| パート有期法 | パート・有期契約の人の待遇(同一労働同一賃金など) |
| 育児・介護休業法 | 育児・介護と仕事の両立支援 |
| 労働組合法 | 労働組合・団体交渉に関するルール |
このほかにも、男女雇用機会均等法や高年齢者雇用安定法など、場面ごとにいろいろな法律があります。すべてを暗記する必要はなくて、「困ったときにどの法律を見ればいいか」が分かれば十分だと思います。
労働基準法でとくに重要なポイント
労働法の中でも、いちばん実務でよく登場するのが労働基準法(労基法)です。労働条件の最低ラインを決めている法律なので、ここだけは要点を押さえておきたいですね。
労働時間・休憩・休日の原則
労働時間は原則として1日8時間・週40時間まで、というのが基本のルールです。これを超えて働かせるには、あとで出てくる労使協定(36協定)などが必要になります。休憩や休日にも最低限の決まりがあります。
割増賃金(時間外・休日・深夜)
残業や休日労働、深夜労働をさせた場合は、通常の賃金に割増をつけて払う必要があります。時間外は25%以上、深夜は25%以上、法定休日は35%以上、というのが基本ですね。ここを間違えると未払い残業の問題につながるので、経理としても気をつけたいところです。
年次有給休暇・解雇のルール
一定期間働いた人には、年次有給休暇を与えなければなりません。また、解雇についても、自由にできるわけではなく、客観的に合理的な理由などが求められます。
有給休暇の日数の数え方など、もう少しくわしく知りたい方は有給休暇入門~日数計算など労務・総務担当者向け詳細解説~もあわせてどうぞ。

強行法規としての労働法|会社が守らないとどうなる
労働者に不利な特約は無効になる
労働法の多くは「強行法規」と呼ばれ、当事者の合意よりも優先されます。たとえば「残業代は出さない」と労使でお互い合意していても、労基法を下回る部分は無効になります。
【ポイント】「本人が同意したから大丈夫」は通じないことがある
労働法は、本人が納得していても法律の最低基準を下回ることは認めません。「従業員が了承しているから」という理由だけでは、未払い残業や違法な労働条件は正当化されない、という点は覚えておきたいですね。
違反したときのペナルティ
労働基準法などに違反すると、罰則(罰金や懲役)が定められているものもあります。未払い残業があれば、さかのぼって支払う義務が生じますし、悪質な場合は付加金を求められることもあります。会社の信用にも関わるので、軽く見ないほうがよいと思います。
労働基準監督署の役割
労働基準法などがきちんと守られているかを監督するのが、労働基準監督署(労基署)です。労働者からの申告などをきっかけに調査(臨検)に入り、問題があれば是正勧告をおこないます。労基署から指摘が来ないよう、ふだんから社内のルールを整えておくことが大事ですね。
就業規則・労働契約との関係
会社のルールには、法律のほかに就業規則や労働契約があります。これらがぶつかったときにどれが優先されるのか、という順番を知っておくと整理しやすいです。
法律→就業規則→労働契約の優先順位
大きな枠から順に、法律がいちばん強く、その下に就業規則、さらにその下に個々の労働契約がある、というイメージです。下位のものが上位のものを下回ることはできません。

- 労働法(労基法など)……すべての土台になる最低基準
- 就業規則……会社全体のルール(法律を下回れない)
- 労働契約……個々の従業員との契約(就業規則を下回れない)
就業規則は法律を下回れない
就業規則で独自のルールを決めること自体は問題ありませんが、労働法の最低基準を下回る内容は無効になります。たとえば法定の有給日数より少ない日数しか与えない就業規則は、その部分が認められません。
これから就業規則を整えたい会社は、就業規則のひな形・モデル就業規則の入手先と使い方もあわせて参考にしてみてください。

労働協約・労使協定との関係
労働組合と会社が結ぶ「労働協約」や、残業をさせるための36協定などの「労使協定」も、会社のルールの一部です。とくに36協定は、法定の労働時間を超えて働かせるために欠かせないものなので、対象になる会社は忘れずに締結・届出をしておきたいですね。
総務・経理担当者が実務で意識したいこと
法改正が多いので最新情報を追う
労働法は改正がとても多い分野です。割増率や育児介護休業のルールなど、数年単位で内容が変わっていきます。古い知識のままだと思わぬ違反につながるので、年に一度は最新情報をチェックしておくと安心です。
社内ルールの整備
法律をそのまま運用するのは難しいので、就業規則や各種規程として社内ルールに落とし込んでおくことが大切です。法律が変わったら、就業規則も合わせて見直す、という流れをつくっておくとよいと思います。
迷ったら専門家・労働局に相談する
労働法の判断は、ケースによってはとても難しいです。自社だけで抱え込まず、社会保険労務士や弁護士、各地の労働局・労働基準監督署などに相談するのも一つの手です。早めに相談したほうが、トラブルが大きくなる前に対応できると思います。
労働法のよくある質問(FAQ)
- パートやアルバイトにも労働法は適用されますか?
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はい、適用されます。雇用形態にかかわらず、雇われて働く人であれば労働基準法などの労働法が適用されます。有給休暇や割増賃金なども、要件を満たせばパート・アルバイトにも発生します。「正社員ではないから」という理由で労働法を適用しないのは誤りです。
- 就業規則と法律はどちらが優先されますか?
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法律が優先されます。就業規則は労働法の最低基準を下回ることができず、下回る部分は無効になり、その部分は法律の基準が適用されます。会社のルールは法律の範囲内で決める、という関係になっています。
- 労働法に違反するとどうなりますか?
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内容によっては罰則(罰金や懲役)の対象になります。未払い残業があればさかのぼって支払う義務が生じ、労働基準監督署から是正勧告を受けることもあります。会社の信用にも影響するため、軽視しないことが大切です。
- 労働法の条文はどこで確認できますか?
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e-Gov法令検索などで、労働基準法や労働契約法といった個別の法律の条文を確認できます。また、厚生労働省のサイトには、制度をわかりやすく解説したページやパンフレットも用意されています。条文だけだと読みにくいので、解説ページとあわせて見るのがおすすめです。
- 小さい会社でも労働法を守る必要がありますか?
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必要です。労働法は会社の規模にかかわらず適用されます。ただし、就業規則の作成義務(常時10人以上)のように、一部のルールは規模によって扱いが変わるものもあります。基本的なルールはどんな会社でも守る、と考えておくとよいと思います。
労働法は範囲が広くて最初はとっつきにくいですが、「働く人を守るための複数の法律の総称」で、「法律→就業規則→労働契約」の順に強さが決まっている、という全体像さえつかめれば、ぐっと整理しやすくなります。細かいルールは必要になったときに、その都度くわしく調べていけば大丈夫だと思いますよ。




