「出産手当金支給申請書」は3枚綴りで、1〜2枚目は本人と医師、3枚目は会社側(経理・総務)が記入する形になっています。
出産手当金は、産休中で給料が出ない期間に、給料の代わりに支給される給付金です。病気のときの傷病手当金によく似ています。
名前が似ている「出産育児一時金」とよく間違えられますが、あちらは出産費用そのものに充てるお金で、こちらは給料の代わりのお金、という違いですね。
この記事では、受給できる人(対象者)や3枚それぞれの用紙の記入例・書き方、特に担当者が悩みがちな3枚目の賃金欄について、欠勤控除の書き方など具体例を挙げてまとめていきます。
出産手当金の受給の条件
誰でも出産すればもらえる訳ではなく、次の3つの条件を満たす必要があります。
- 1.被保険者が出産すること(給与の代わりなので、給与を受けている本人が対象です。家族(被扶養者)の出産は対象外です。)
- 2.出産で仕事を休み、会社から給与の支払いがないこと(短時間労働や有給などで給与が発生すれば、その分は支給されません。)
- 3.妊娠4か月(85日)以上の出産であること(早産・流産・人工妊娠中絶なども入ります。)
ちなみに、似た制度の傷病手当金については別の記事でまとめています。3枚目の書き方もほぼ同じ要領なので、合わせて見てもらえると理解が早いと思います。

出産手当金の支給期間や金額
いつから、いつまでもらえる?
支給される期間は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以降56日までのうち、無給の期間です。
出産予定日より出産が遅れた場合、遅れた日数分も支給対象になります(予定日ベースで42日+遅れた日数+産後56日)。逆に早まった場合は、出産日基準で42日前からに繰り上がりますね。
いくらもらえる?
1日当たりの金額 = 支給開始日以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3
支給開始日以前の被保険者期間が12ヶ月に満たない場合は、「当該被保険者の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額」または「支給開始日の属する年度の前年度9月30日における協会けんぽ全被保険者の同月の標準報酬月額の平均額」のいずれか低い額で計算します。
健康保険の「出産手当金支給申請書」の記入例、書き方
誰が・どの順番で書くの?
1・2枚目は本人と医師等が記入し、そのあと会社が3枚目を記入して、会社から協会けんぽへ提出する流れですね。
申請者情報・振込口座・出産予定日などを本人が記入します。
出産日・出生児数などを、出産した病院の医師等に証明してもらいます。
勤務状況・賃金支給状況を会社側(経理・総務)が記入し、会社から協会けんぽへ郵送または電子申請で提出します。
1枚目(本人記入)の書き方

上の例の様に書いてもらえれば、問題ないと思います。被保険者証の記号番号・氏名・生年月日・住所・振込先口座など、項目の指示通りに埋めていく形ですね。
ちなみに振込先口座は、本人名義の普通預金口座が基本です。旧姓のままの口座だと戻されるケースもあるので、結婚で姓が変わった直後の方は特に注意が必要です。
2枚目(本人+医師記入)の書き方

2枚目の上半分は本人が申請期間などを記入し、下半分は出産した病院の医師(または助産師)に書いてもらう部分です。
病院によっては1通あたり数千円(2,000〜5,000円程度)の文書料がかかります。出産費用と一緒に請求されることが多いので、領収書は取っておきましょう。
なお、出産手当金と出産育児一時金は別制度です。一時金の方の記入例は別記事にまとめています。
「健康保険の「出産育児一時金支給申請書」の記入例、書き方、注意点」

3枚目(会社記入)の書き方

上の例の様に書いてもらえれば、問題ないと思います。前述のとおり、出産手当金は給料の代わりの給付なので、同じ健康保険の傷病手当金3枚目とほとんど同じ記入項目ですね。
勤務状況の書き方
働かない期間を含む賃金計算期間(賃金計算の締日の翌日から締日までの期間)の勤務状況を、出勤した日は「○」、有給の日は「△」、公休日は「公」、欠勤の日は「/」で記入します。
賃金状況の書き方
働かない期間を含む賃金計算期間の賃金支給状況を記入します。通勤手当も健康保険の書類なので含めて書く点に注意ですね。
経験上、協会けんぽから一番多い問い合わせが欠勤控除の計算方法です。(雇用契約書の所定労働日数と、実際に使っている控除分母がズレていると、ほぼ電話がかかってきますね)
欠勤控除 =(基本給 + 技能手当)÷ 22日 × 5日 など
どの手当をどの日数で割ってかけているかを、欄外や備考欄に書き添えておいた方がいいと思います。
完全に休んだ月はどう書く?
賃金計算期間を通してまるごと産休だった月は、勤務状況欄は全日「/」、賃金支給状況欄は「0円」と書けば大丈夫です。
この場合、欠勤控除の計算式は不要で、「全欠勤のため不支給」と備考に一言添えておくと親切ですね。
途中から休んだ月の欠勤控除は?
例えば所定労働日数22日の月で、15日から産休に入り、残り5日分を欠勤控除したケースだと以下のようになります。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 勤務状況 | 1日〜14日:○、15日〜末日:/ |
| 基本給 | 250,000円 |
| 技能手当 | 20,000円 |
| 通勤手当 | 12,000円 |
| 欠勤控除 | △61,363円 (基本給250,000+技能手当20,000)÷22日×5日 |
| 差引支給額 | 220,637円 |
「欠勤控除=(基本給+技能手当)÷ 22日 × 5日」のように、控除の計算根拠を欄外に書いておくと、協会けんぽからの問い合わせが減ります。
有給や公休を挟んだ月は?
産休に入る直前に有給消化をするケースはよくあります。有給の日は勤務状況欄を「△」で記入し、賃金欄は通常どおり支払った金額を書きます。
有給分は「給与の支払いあり」とみなされるので、出産手当金の支給期間に入っていてもその日分は不支給になります(協会けんぽ側で自動的に差し引かれます)。公休日は「公」で記入し、賃金はもともと発生しないので欠勤控除には関係しません。
添付書類
ただし、次のようなケースでは追加書類を求められることがあります。
- 退職後に継続給付として申請する場合 → 退職証明書や資格喪失証明書の写し
- 申請書の記入内容に不備・疑義がある場合 → 賃金台帳・出勤簿のコピー
- 海外で出産した場合 → 出産を証明する書類の翻訳文
通常の在職中の出産であれば、3枚の申請書だけで済むケースがほとんどですね。
出産手当金に関するQ&A
- 退職後も出産手当金はもらえるの?
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退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に出産手当金を受けている(または受けられる状態)の人は、退職後も残りの期間分について継続して受給できます。退職日に出勤してしまうと「受けられる状態」に該当せず打ち切りになるので、退職日は休むのが鉄則ですね。
- 健康保険の任意継続でも出産手当金は出るの?
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任意継続被保険者は、原則として出産手当金の対象外です。ただし、資格喪失時に継続給付の要件(1年以上の被保険者期間+資格喪失時に受給中)を満たしていれば、その分は継続して受けられます。
- 出産予定日より早く・遅く生まれた場合はどうなる?
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予定日より遅れた場合は、遅れた日数分も支給対象に加算されます(予定日前42日+遅れた日数+産後56日)。早まった場合は実際の出産日から42日前に起算日が繰り上がります。
- 有給休暇を取った日も支給されるの?
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有給休暇を取得した日は「給与が支払われた日」なので、その日分の出産手当金は支給されません。ただし、標準報酬日額よりも有給分の給与が少ない場合は、差額が支給される扱いになります。
- 帝王切開や切迫早産で入院した場合も支給される?
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帝王切開・切迫早産・流産・人工妊娠中絶なども、妊娠4か月(85日)以上であれば出産手当金の対象です。なお、出産手当金と傷病手当金は同一期間に両方受けることはできず、出産手当金が優先されます。
- 申請はいつまでにする必要がある?時効は?
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出産手当金の時効は2年です。労務不能であった日ごとに、その翌日から2年以内に申請する必要があります。まとめて出すなら、産休明けに一括で申請するのが一番ラクですね。
出産・育児手続き全般については
分かりにくい出産育児手続きについて次でまとめています。よかったらご覧ください。





