初めて外国人を採用したとき、私が一番困ったのは「だれに聞けばいいかわからない」という点でした。顧問社労士に聞いても「在留関係はちょっと…」と言われ、結局、出入国在留管理局(昔の入国管理局)にすべて電話して聞いて回った記憶があります。
あとから「申請取次行政書士に聞けばよかったんだ」と気づきましたが、当時はその存在すら知りませんでした。
この記事では、外国人採用で実際に苦労した経験をもとに、手続きの全体像・確認書類・社会保険の処理・よくある落とし穴まで、担当者目線でまとめています。これから初めて外国人を採用する方の参考になれば幸いです。
外国人採用で一番重要なポイント:就労できる在留資格かどうか
外国人採用で最初に確認すべきことは、その外国人が「就労できる在留資格を持っているか」です。日本には出入国管理及び難民認定法(入管法)により、外国人の在留資格ごとに就労できる業務の範囲が定められています。
在留資格は大きく3種類に分かれます。
| 区分 | 主な在留資格 | 就労 |
|---|---|---|
| 就労制限なし | 永住者、日本人の配偶者等、定住者 | 制限なし |
| 就労ビザ(業務限定) | 技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習 など | 資格に定められた範囲のみ |
| 就労不可 | 留学、短期滞在、家族滞在 など | 資格外活動許可が必要 |
【重要ポイント】在留資格と業務内容が一致しているか必ず確認
就労ビザの場合、在留資格に定められた業務以外に従事させると「不法就労」になります。雇用した事業主も処罰の対象となりますので、採用前に必ず業務内容との整合性を確認してください。
在留カードは、新規の上陸許可、在留資格の変更許可や在留期間の更新許可など在留資格に係る許可の結果として我が国に中長期間在留する者(中長期在留者)に対して交付されます。
出入国在留管理庁


なので、在留カード=就労許可とは限りませんので注意しましょう。特に在留資格が留学の場合はは就労不可の場合が多いです。裏面の許可の範囲を確認しましょう。
在留カードとは?
在留カードで確認すべき2つのポイント
採用面接の前に、在留カードで以下の2点を必ず確認しましょう。
- ① 在留資格の種類:就労できる業務内容が自社の業務と合致しているか
- ② 在留期限:有効期限が切れていないか(期限切れは不法滞在扱いになる)
なお、外見や話し方だけでは外国人かどうか判断が難しいケースもあります。全社員から住民票の提出を義務付けておくと、住民票に国籍・在留資格が記載されているため確認が容易です。

違法就労における事業主のリスクは?
1. 刑事罰(出入国管理及び難民認定法違反)
不法就労助長罪(入管法第73条の2)が最も重大なリスクです。
- 罰則:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはその両方)
- 対象行為:
- 在留資格のない外国人を雇用する
- 在留資格の範囲外の業務に従事させる
- 資格外活動の許可を超えた労働をさせる
「知らなかった」は原則として免責されません。在留カードの確認義務があります。
2. 行政上のリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| ハローワーク利用制限 | 求人票の受理拒否(最大6ヶ月) |
| 助成金の不支給・返還 | 雇用関係助成金の受給停止・返還命令 |
| 許認可取消リスク | 建設業・介護事業者等は許認可に影響する可能性 |
特に医療法人など許認可が必要な業種では、違法就労が発覚した場合の行政処分リスクが一般企業より高くなる可能性があるため、入管法コンプライアンスは重要な経営課題です。
採用パターン別:手続きの流れと注意点

外国人の採用は、大きく分けて3つのパターンがあります。それぞれで必要な手続きが異なりますので、どのパターンに該当するかを最初に確認しましょう。(特に4月は込み合うので事前準備が大切です)
パターン①:海外在住の外国人を現地採用する場合
手続きに最も時間がかかるパターンです。内定を出したらすぐに在留資格認定証明書(COE)の申請を開始してください。
申請は採用企業の職員が行います。身分証明書(社員証・運転免許証等)が必要です。申請から許可まで約1〜3ヶ月かかります。
COEの有効期間は原則3ヶ月です。発行後3ヶ月以内に入国しないと無効になります。現在は電子メールでの受領も可能です。
在留資格認定証明書・パスポート等を持参して申請します。
入国時に在留カードが交付されます。
入社後は社会保険・雇用保険の加入手続き、ハローワークへの外国人雇用状況届出を忘れずに行います。
パターン②:日本の大学・専門学校を卒業した留学生を採用する場合
「留学」ビザから就労ビザへの変更が必要です。手続きは原則として外国人本人が最寄りの出入国在留管理局で行います。
入社前に雇用契約書を締結します。
「留学」→「技術・人文知識・国際業務」等への変更申請を行います。審査期間は1〜2ヶ月程度です。許可時の手数料は窓口6,000円・オンライン5,500円(2025年4月改定)。
変更が間に合わない場合、入社後の研修スケジュールにも影響するため、余裕をもって早めに申請しましょう。
パターン③:転職者(すでに就労ビザを持つ外国人)を採用する場合
前職と同じ業務内容であれば原則として在留資格の変更は不要です。ただし、業務内容が変わる場合は変更申請が必要になります。また、転職した外国人本人が14日以内に出入国在留管理局へ「契約機関に関する届出」を提出する義務があります(入管法第19条の16)。
【参考】就労資格証明書の取得をお勧めする理由
転職者の場合、在留資格の変更が不要であっても「就労資格証明書」を取得しておくことをお勧めします。この証明書を取得すると、在留資格の業務範囲と自社の業務内容が適合していることを出入国在留管理局が確認・保証してくれるため、不法就労のリスクを回避できます。
採用時に必要な確認書類と入社手続き
外国人採用の入社前確認書類は日本人とほぼ同様ですが、在留資格関係の書類が追加されます。実際に収集した経験をもとに整理した表がこちらです。
| 書類 | 必要性 | 備考 |
|---|---|---|
| パスポート(旅券) | 必須 | コピーを取る(本人同意のもと) |
| 在留カード | 必須 | 在留資格・在留期限・就労制限を確認 |
| 住民票 | 必須 | 国籍・在留資格が記載されている |
| 卒業証明書 | 必須 | 在留資格の審査に関係することがある |
| 健康診断書 | 必須 | 提出日前3ヶ月以内のもの |
| 就労資格証明書 | 任意 | 必須ではない。この書類の有無で採否を決めることは違法 |
| 資格外活動許可書 | 該当者のみ | 留学生のアルバイト等で必要 |
| 年金手帳 | 可能であれば | — |
| 雇用保険被保険者証 | 前職がある場合 | — |
雇用契約書・就業規則について
雇用契約書は日本語版だけでなく、理解不足によるトラブル防止のため英語版(または母国語版)の作成をお勧めします。また、就業規則を日本語のまま適用することも可能ですが、契約書に「就業規則に準ずる」旨を明記しておく必要があります。なお、英語版就業規則は労働基準監督署への届出は不要です。
【重要】在留期間と雇用契約期間の関係
雇用契約期間は在留期間以内に設定する必要があります。在留期限が残り6ヶ月しかない場合、1年の雇用契約は結ぶべきではありません。契約書には「在留期間内の雇用」を前提とした文言を入れておくと安心です。また、在留期限の更新申請は雇用契約を結んでからが原則です(雇用契約が先)。
在留資格認定証明書交付申請に必要な書類
海外からの採用(パターン①)で在留資格認定証明書交付申請を行う際に、採用企業側と本人側でそれぞれ以下の書類が必要です。
企業側が準備する主な書類
- 在留資格認定証明書交付申請書(所属機関作成用)2枚
- 法定調書合計表
- 雇用契約書の写し
- 源泉徴収票
- 登記事項証明書・会社案内等(企業の概要を示すもの)
本人側が準備する主な書類(参考)
- パスポートのコピー
- 在留カード(日本在住の場合)
- 課税証明書
- 卒業証明書・職務経歴書
【参考】申請はオンラインでも可能です
2025年4月から申請手数料が改定され、オンライン申請のほうが窓口申請より500円程度安くなりました。交通費も節約できるため、オンライン申請の活用を検討してみてください。ただし、オンライン申請と電子届出の両方を行うことで一部書類の省略が可能になります。
社会保険・雇用保険の手続きは?
社会保険・雇用保険の手続きは、基本的に日本人と同様です。外国人だからといって特別な書類が増えることはほとんどありませんでした。
年金事務所での手続き(社会保険)
手続きはいつも通りです。氏名はカタカナで入力し、フリガナ欄は空白にします。在留カード等の特別な追加書類は不要でした。
なお、外国人も健康保険・厚生年金の加入義務があります(健康保険法第3条、厚生年金保険法第9条)。加入を拒否されるケースもあるため、面接時から制度の説明をしておくことをお勧めします。もし社会保険の加入を断固拒否する場合は、採用を見送ることも選択肢に入れてください。
【参考】脱退一時金について
外国人が帰国する場合、厚生年金の保険期間が6ヶ月以上であれば「脱退一時金」を請求できます(国民年金の被保険者でなく、老齢年金の資格期間を満たしていない場合)。2021年4月から、支払い上限年数が3年から5年に引き上げられています。
ハローワークでの手続き(雇用保険)
ハローワークの手続きも基本的には日本人と同様です。氏名のローマ字は氏名欄に、フリガナはフリガナ欄に記入し、備考欄に在留資格等を記入すれば「雇用保険被保険者資格取得届」でOKです。在留カード等の添付書類は不要でした。
【重要】外国人雇用状況の届出を忘れずに
外国人を雇用・離職させた場合、すべての事業主にハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています(労働施策総合推進法第28条)。届出を怠ったり虚偽の報告をしたりすると、30万円以下の罰金が科される場合があります。
| 外国人の種別 | 届出方法 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者になる | 雇用保険被保険者資格取得届(備考欄に在留資格等を記入) | 雇入れの翌月10日まで |
| 雇用保険の被保険者にならない | 外国人雇用状況届出書(様式第3号)を別途提出 | 雇入れの翌月末日まで |
届出には在留カード番号の記載も必要です(2020年3月から義務化)。届出はハローワーク窓口のほか、e-Gov電子申請・外国人雇用状況届出システムからオンラインでも可能です。
【注意】雇用時だけでなく離職時の届出も必要です
外国人雇用状況の届出は、雇用時だけでなく離職時にも提出が必要です。忘れがちですので注意しましょう。また、派遣社員の場合、届出義務があるのは派遣先ではなく派遣元企業です。
在留期間の管理を怠らない
在留資格は永久ではなく、最長でも5年(多くは3年・1年・3ヶ月)です。在留期限が切れたまま就労させていると、事業主も罰則の対象になります。
- 在留カードのコピーを保管し、在留期限を台帳等で管理する
- 在留期限の3ヶ月前から更新申請が可能。遅くても2ヶ月前には手続きを進める
- 更新後の新在留カードの提出を忘れずに求める
担当窓口:どこに聞けばいい?
外国人採用に関わる窓口は目的によって異なります。最初に迷わないよう整理しておきましょう。
| 相談内容 | 窓口 |
|---|---|
| 在留資格・就労ビザ・在留期限の更新・変更 | 出入国在留管理庁(旧:入国管理局) |
| 健康保険・厚生年金の手続き | 年金事務所 |
| 雇用保険・外国人雇用状況の届出 | ハローワーク(公共職業安定所) |
| 在留資格申請の代行・専門的サポート | 申請取次行政書士 |
| 労務管理・就業規則・社会保険全般 | 社会保険労務士(在留関係は対応範囲外のことも) |
私の経験では、顧問社労士に在留資格のことを聞いたところ「あまりよくわかりません」との回答でした。社労士は年金事務所やハローワークでの手続きは詳しくても、在留関係の手続きは専門外のケースが多いです。在留資格に関しては「申請取次行政書士」に相談するのが最も確実です。

【実務での注意点】実際に苦労したポイント
社会保険の加入拒否問題
外国人採用で想定外だったのが、社会保険の加入を嫌がるケースがあることです。「保険料が高い」「母国に帰ったら損」などの理由で拒否されることがあります。ただし、適用事業所での要件を満たす従業員は日本人・外国人を問わず加入義務があります。面接段階で「社会保険に加入していただくことが条件です」と明確に伝えておくことをお勧めします。
申請タイミングの見極め
海外からの採用の場合、申請から許可まで1〜3ヶ月かかります。4月入社に間に合わせるには遅くとも12月〜1月には申請を始める必要があります。4月入社が多い場合、申請時期と在留期限の更新時期が重なり非常に忙しくなるため、余裕をもったスケジュール管理が重要です。
コミュニケーションの問題が一番の課題
外国人労働者が定着しない最大の理由はコミュニケーション不足です。日本語に問題がなくても、日本特有の「あいまいな表現」は理解しにくいことが多くあります。指示や評価は具体的な言葉で、身振り手振りも交えながら丁寧に伝えることが大切です。また、文化や価値観の違いを理解し、職場環境を整えることで定着率が大きく変わります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 就労資格証明書がないと採用できないのか?
A. いいえ、就労資格証明書は任意の書類です。この書類の有無を採否の条件にすることは違法です。ただし、取得しておくと自社の業務内容に在留資格が適合しているかを確認しやすくなるため、可能であれば取得を求めると安心です。
Q2. 在留期限まで1ヶ月しかない外国人と1年の雇用契約を結べるか?
A. 在留期間を超えた雇用契約は結ぶべきではありません。雇用契約期間は在留期間内に設定し、更新見込みがある場合は更新を条件とした内容にしておきましょう。また、在留期限の更新申請と雇用契約締結のタイミングは「雇用契約が先」が原則です。
Q3. 外国人の賃金は日本人より低くしてもいいか?
A. 外国人だからという理由で賃金を下げることはできません。同一労働同一賃金の原則のもと、担当業務に対して日本人と同等の賃金を支払う必要があります。最低賃金法も当然適用されます。
Q4. 賞与(ボーナス)の支給をなしにできるか?
A. 雇用契約で支給なしを明確にすれば可能ですが、就業規則に準ずると定めている場合は日本人と同程度の支給が必要になります。採用時に明確にしておくことが大切です。
Q5. ハローワークへの届出を忘れた場合はどうすればいいか?
A. 届出を怠ると30万円以下の罰金が科される可能性があります。気づいた時点でただちに事業所を管轄するハローワークへ問い合わせ、指示に従って対応してください。
Q6. 保証人は日本人でないといけないか?
A. 身元保証人は日本人が望ましいとされますが、必須ではありません。秘密保持や競業禁止に関する取り決めは日本人と同様です。保証人への連絡は労働者本人の事前承諾があれば可能です。
Q7. 英語版就業規則は労働基準監督署へ届出が必要か?
A. 英文の就業規則は労働基準監督署への届出は不要です。日本語版の就業規則を届出し、外国語版は社内配布用の翻訳版という位置づけで作成してください。
まとめ:外国人採用のポイント一覧
- ✅ 在留カードで在留資格・在留期限・就労制限を必ず確認する
- ✅ 採用パターン(海外採用・留学生・転職者)によって必要な手続きが異なる
- ✅ 海外採用の場合、在留資格認定証明書の申請から許可まで1〜3ヶ月かかる
- ✅ 雇用契約の期間は在留期間内に設定する(雇用契約を先に締結する)
- ✅ 社会保険・雇用保険の手続きは基本的に日本人と同様(追加書類は不要なことが多い)
- ✅ ハローワークへの外国人雇用状況の届出は全事業主の義務(怠ると30万円以下の罰金)
- ✅ 在留期限の管理を台帳等で継続的に行う
- ✅ 在留資格の専門家は「申請取次行政書士」に相談するのがベスト
- ✅ コミュニケーションの工夫が定着率向上のカギ



