「報酬・雇用に関する調査票」の記入例、書き方、提出方法~年金事務所の事業所調査で迷う勤務状況欄も解説~

「報酬・雇用に関する調査票」の記入例、書き方、提出方法

年金事務所から届いた封筒を開けると、通知書と一緒に「報酬・雇用に関する調査票」という1枚の用紙が入っています。事業所調査(被保険者の資格及び報酬等の調査)のときに、会社の状況を書いて返送する用紙です。

ところがこの調査票、年金事務所のホームページを探しても様式が出てきません。届いた用紙にいきなり書き込むことになるので、「勤務状況の欄って誰のことを書くの?」「手当はどこまで書けばいいの?」で手が止まります。

私も呼び出しの調査を受けたことがありますが、書類そのものより「この欄で何を聞かれているのか」が分かりにくいんですよね。項目自体は多くないので、意味さえ分かれば15分ほどで書けます。

今回は「報酬・雇用に関する調査票」の記入例と書き方、一緒に出す書類、提出方法までまとめました。記入例の画像も載せているので、手元の用紙と見比べながら書いてもらえればと思います。

【この記事でわかること】

  • 調査票は通知書に同封される用紙で、ホームページからダウンロードはできない
  • 記入欄は「事業所情報」「被保険者等の状況」「勤務状況」「報酬等の支払状況」の4ブロック
  • 勤務状況欄は、一般従業員とそれ以外(役員・パート)を分けて書く
  • 通勤手当は「報酬」に含める(所得税で非課税でも社会保険では報酬)
  • 提出は郵送・持参のほか、e-Govの電子申請でも可能
タップできるもくじ

「報酬・雇用に関する調査票」とは

「報酬・雇用に関する調査票」とは、年金事務所の事業所調査のときに、会社の従業員数・勤務状況・給与の支払い状況をまとめて回答するための用紙です。調査の入口で会社の全体像を把握するために使われます。

調査票そのもので何かが決まるわけではありません。あくまで、この後に見る賃金台帳や出勤簿を読むための「地図」を作る用紙、というイメージですね。

年金事務所の事業所調査の流れ。通知書の到着から調査票の記入、資料提出、確認、是正までを示したフロー図

どんな時に届くの?

年金事務所から「健康保険及び厚生年金保険の被保険者の資格及び報酬等の調査の実施について」という通知書が届いたときに、同封されています。通知書のほうが本体で、調査票はその添付書類という位置づけです。

日本年金機構によると、調査の対象になりやすいのは「短時間労働者を多く使用している事業所、算定基礎届や賞与支払届が未提出の事業所、これまでの事業所調査において指摘の多い事業所等」とされています。とはいえ、特に心当たりがなくても数年に一度の周期で回ってくることが多いですね。実際に呼び出しを受けたときの流れは年金事務所「資格及び報酬等の調査」対応履歴(前編)~呼出しから事前準備まで~にまとめています。

何を確認するための調査票?

確認されるのは、大きく分けて「入るべき人が入っているか」と「届け出た報酬が実際の給与と合っているか」の2点です。調査票の欄も、この2つを聞くために並んでいます。

根拠は厚生年金保険法第100条で、事業主には調査に応じる義務があります(受忍義務)。正当な理由なく資料を出さない・虚偽の陳述をした場合は、同法第102条で6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。断れるタイプの案内ではない、ということですね。

いつまでに提出するの?

提出期限は通知書に日付で書かれています。おおむね発送日から2〜3週間後が指定されることが多いです。呼び出し調査の場合は、指定された日時に調査票と資料を持参する形になります。

賃金台帳のコピーを取るのに意外と時間がかかるので、届いたらまず期限だけ確認して、コピー作業の日を先に押さえておくといいと思います。

様式はダウンロードできるの?

できません。日本年金機構の「申請・届出様式」のページにも掲載されていない用紙で、通知書に同封されたものを使います(2026年7月時点)。

書き損じても予備がないので、鉛筆で下書きしてからペンで清書するか、コピーを取って練習してから本紙に書くのが安全です。私は先にコピーを取っておく派です(1枚しかない用紙に一発で書くのは、やっぱり緊張しますね)。

紛失した場合は管轄の年金事務所に連絡すれば再送してもらえます。事業所整理記号を伝えるとやり取りが早いです。

報酬・雇用に関する調査票の記入例、書き方

調査票は全国共通の様式で、記入欄は大きく4つのブロックに分かれています。実際に書くとこんな形になります。

報酬・雇用に関する調査票の記入例。事業所情報欄、被保険者等の状況欄、勤務状況欄、報酬等の支払状況欄の書き方を示した見本
記入例(見本)。実際の用紙は年金事務所からの通知書に同封されます

上の例の様に書いてもらえれば、問題ないと思います。以下、ブロックごとに補足します。

報酬・雇用に関する調査票の4つの記入ブロック。事業所情報欄、被保険者等の状況欄、勤務状況欄、報酬等の支払状況欄それぞれが何を聞いている欄かを整理した構成図

①事業所情報欄(整理記号はどこを見る?)

記入日・事業所整理記号・事業所番号・事業所所在地・事業所名称・事業主氏名・電話番号を書きます。ここは迷う要素がありません。

事業所整理記号と事業所番号は、毎月届く保険料納入告知額・領収済額通知書(納付書)に印字されています。算定基礎届の控えや、資格取得届の控えでも確認できます。「記号は分かるけど番号が分からない」というときは納付書を見るのが一番早いです。

電話番号は、調査担当者が確認の電話をかけてくる先になります。代表番号ではなく、実際に手続きをしている担当者につながる番号を書いておいたほうがスムーズです。

②被保険者等の状況欄(請負・派遣・海外勤務の数え方)

会社にいる人を種類ごとに数えて書く欄です。項目はおおむね次のとおりです。

記入欄数える人
被保険者総数健康保険・厚生年金保険に加入している人(役員含む)
賃金・報酬を支払っているが被保険者でない人加入していないパート・アルバイト、非常勤役員など
請負契約の人業務委託・請負で報酬を払っている人(雇用ではない人)
派遣労働者派遣元から受け入れている人
海外勤務者海外の拠点に出向・駐在している人

ポイントは、加入していない人の数を正直に書くことです。ここをゼロにしてしまうと、後で賃金台帳を見られたときに人数が合わず、かえって細かく聞かれます。

該当者がいない欄は空欄のままにせず「0人」または「いない」に丸を付けます。空欄だと書き忘れなのか該当なしなのか分からないので、確認の電話がかかってくることがあります。

派遣で受け入れている人は、社会保険は派遣元で加入しているので自社では被保険者になりません。ただし「何人いるか」は聞かれるので数えておきます。請負契約の人も同じで、人数だけ書けば大丈夫です。

③勤務状況欄(一般従業員と役員を分けて書く)

ここが一番つまずく欄です。勤務状況欄は、上下2段に分かれていて、それぞれ書く対象が違います。

  • 上段(就業規則等で定められている一般従業員):正社員の所定労働日数・所定労働時間を書く
  • 下段(一般従業員以外の方の平均的な勤務状況):役員・パート・アルバイトの実際の勤務日数・勤務時間を書く

上段は「うちの会社のフルタイムはこれです」という基準を示す欄です。だから就業規則に書いてある所定労働日数・所定労働時間をそのまま書きます。月20日・1日8時間、といった具合ですね。

下段は、その基準と比べるための実績です。パートやアルバイトが複数いる場合は、平均的な人の数字を書けば問題ないと思います。

報酬・雇用に関する調査票の勤務状況欄。上段に一般従業員の所定労働日数と時間、下段に役員やパートの実際の勤務を書き、両者を比べて4分の3基準を見ることを示した比較図

なぜ2段に分かれているかというと、社会保険の加入基準が正社員の4分の3だからです。上段が分母、下段が分子。この2つを並べて、加入すべき人が漏れていないかを一目で見るための欄なんですね。意味が分かると書きやすくなります。

【就業規則がない会社はどう書く?】

従業員10人未満で就業規則を作っていない会社もあります。その場合、上段は空欄のままでも受理されます。空欄にするか、雇用契約書に書いてある所定労働日数・所定労働時間を書くかのどちらかで大丈夫です。

役員しかいない会社は、上段に該当者がいないので「役員のため該当なし」と理由を書いておくと、確認の電話を1本減らせます。

④報酬等の支払状況欄(締日・支払日・昇給月・賞与)

給与をいつ締めていつ払っているか、どんな報酬を払っているかを書く欄です。

記入欄書き方
給与の締切日・支払日末日締切・翌月10日払い、20日締切・当月25日払い など
報酬の種類月給・日給・時給のうち該当するものに丸。役員報酬があれば「役員」にも丸
昇給月毎年4月など。決まっていなければ「不定期」
昇給月の変更の有無前回の届出から変わっていなければ「無」
賞与の支払月7月・12月など。年3回以下か4回以上かで扱いが変わる
賞与支払月の変更の有無変わっていなければ「無」

締切日と支払日は、賃金台帳の記載とそろえます。ここがずれていると、賃金台帳と照合したときに「どの月の給与ですか?」という話になります。

昇給月は、算定基礎届の提出時期(毎年7月)との関係で聞かれます。4月昇給なら、4月・5月・6月の3か月で算定した標準報酬月額に昇給が反映されているはずなので、そこを見られるわけですね。算定基礎届そのものの書き方は「被保険者報酬月額算定基礎届」の記入例、書き方、提出方法、注意点にまとめています。

⑤役員だけの会社(ひとり社長)の場合

社長ひとりの法人にも調査票は届きます。書く内容はぐっと少なくなります。

【記入例】役員1名のみの法人

  • 被保険者総数:1人
  • 賃金を払っているが被保険者でない人:0人
  • 請負契約・派遣労働者・海外勤務者:いずれも「いない」に丸
  • 勤務状況(上段):役員のため該当なし
  • 勤務状況(下段):1か月20日・1週40時間
  • 給与の締切日・支払日:末日締切・翌月10日払い/報酬の種類は「役員」に丸
  • 昇給月の変更・賞与支払月の変更:いずれも「無」に丸

提出書類も、賃金台帳と調査票の2点だけで済むことが多いです。役員報酬しかなく出勤簿もないので、そこは正直に「役員のみのため出勤簿なし」と伝えれば大丈夫です。

どの手当を「報酬」に書く?

社会保険でいう「報酬」は、労働の対償として経常的・実質的に受けるものすべてです。所得税の課税・非課税とは範囲が違うので、ここは分けて考える必要があります。

報酬に含める報酬に含めない
基本給・役員報酬年3回以下の賞与(標準賞与額として別扱い)
役付手当・職階手当結婚祝金・見舞金(臨時のもの)
家族手当・住宅手当・別居手当出張旅費・交際費の実費精算
通勤手当(非課税分も含む)解雇予告手当・退職金
早出残業手当・特別勤務手当傷病手当金・労災の休業補償給付
宿直手当・日直手当・勤務地手当・物価手当年金・恩給
継続して支給する見舞金
現物給与(社宅・食事・通勤定期券)
社会保険の報酬に含めるものと含めないものの分類図。通勤手当は所得税で非課税でも報酬に含めることを示している

通勤手当は含めるの?

含めます。ここが一番間違えやすいところですね。

通勤手当は所得税では一定額まで非課税なので、源泉徴収の感覚だと「報酬じゃない」と思いがちです。ただ健康保険法・厚生年金保険法では、就業規則や労働契約でルールを決めて払っているものは経常的な報酬にあたるので、非課税でも報酬に含めます

3か月・6か月分の定期代をまとめて払っている場合は、1か月あたりの金額に割って各月の報酬に足します。6か月定期を6で割る、という計算ですね。

賞与は「報酬」に入れないの?

年3回以下の賞与は、月々の報酬には入れません。標準賞与額として賞与支払届で別に届け出ます。

逆に、年4回以上支給する賞与は「報酬」扱いになります。この場合は1年間の合計を12で割って、毎月の報酬に上乗せします。決算賞与を毎年出していて、夏・冬とあわせて年3回なら賞与のまま。そこに期末手当が加わって年4回になると報酬に変わる、という境目です。

社宅や食事の現物支給はどうする?

現物で支給しているものも報酬です。社宅・寮・食事・通勤定期券などが該当します。

金額は実費ではなく、都道府県ごとに決まっている「現物給与の価額」(厚生労働大臣が定める価額)で計算します。食事は1人1月・1人1日・1食あたりの価額、住宅は面積あたりの価額で決まっています。

【令和8年10月1日から】住宅の計算方法が畳数から面積に変わります

社宅・寮の現物給与の価額は、令和8年9月30日までは「居住室部分の畳1畳あたり」、令和8年10月1日からは「総面積1平方メートルあたり」で計算します。台所・トイレ・浴室・廊下も、10月1日からは面積に含めて計算します(9月30日までは含めません)。

令和8年度は、食事の価額が4月1日から、住宅の価額が10月1日から変わります。改定時期が別々なので、社宅がある会社は10月分の給与計算の前に価額表を確認してください。

本人から家賃や食事代を徴収している場合の扱いは、住宅と食事で違います。

  • 住宅:現物給与の価額から徴収額を差し引いた額が現物給与の価額になる
  • 食事:徴収額が現物給与の価額の3分の2未満なら、差し引いた額が現物給与の価額になる
  • 食事:徴収額が現物給与の価額の3分の2以上なら、現物による食事の提供はないものとして扱う(現物給与はゼロ)

たとえば東京の事業所で、1か月あたりの食事の現物給与価額が25,500円だとします。3分の2は17,000円なので、本人から10,000円徴収しているなら残りの15,500円が現物給与、17,000円徴収しているなら現物給与はゼロ、という計算になります。

調査票と一緒に提出する書類

調査票だけでは終わりません。実際に見られるのはこちらの資料のほうです。通知書に指定された対象期間(直近1年分など)でそろえます。

書類確認されること
賃金台帳(給与・賞与)報酬額と標準報酬月額が合っているか
出勤簿・タイムカード勤務日数・労働時間が加入基準を満たしていないか
源泉所得税の領収証書給与を払っている人数と被保険者数のズレ
労働者名簿在籍している人と届出の一致
雇用契約書所定労働時間・雇用期間の定め
就業規則・給与規程手当のルール・所定労働時間の定め

賃金台帳

一番よく見られる資料です。給与だけでなく賞与の分も必要になります。

手当の内訳が分かる形で出します。「支給合計」だけの台帳だと、通勤手当がいくら入っているかが分からないので、内訳の質問が増えます。給与ソフトを使っているなら、手当ごとに列が分かれた形式で出力してください( などのクラウド給与ソフトは、手当別の賃金台帳をそのままPDFで出せます)。

人数が多い会社だと、コピーだけで半日かかります。電子申請にすればPDF出力で済むので、この点は楽ですね。

出勤簿・タイムカード

加入していないパート・アルバイトの労働時間を確認するために使われます。「正社員の4分の3以上働いている未加入の人はいないか」「被保険者51人以上の会社なら、週20時間以上働いている未加入の人はいないか」を見るためですね。

賃金台帳に出勤日数と労働時間が載っている場合は、出勤簿の提出を省略できることがあります。省略できるかは通知書に書いてあるので、そこを読んでから準備すると手間が減ります。

源泉所得税の領収証書

所得税徴収高計算書(納付書)の控えを、直近分だけ出します。

これは、納付書に書いた「支給人員」と社会保険の被保険者数を突き合わせるためです。給与を10人に払っているのに被保険者が6人なら、残り4人は誰ですか、という質問につながります。だからこそ、調査票の「被保険者でない人の数」を正直に書いておく必要があるわけですね。

労働者名簿・雇用契約書・就業規則

雇用契約書は、パート・アルバイトの所定労働時間を確認するために見られます。契約書は週15時間のままなのに、実際の勤務は加入要件に届いている、というケースがよくあります。

就業規則は、手当の支給ルールを確認するために使われます。作っていない場合は、無いと伝えれば大丈夫です(10人未満なら作成義務がないので、そこを責められることはないと思います)。

提出方法(郵送・持参・電子申請)

通知書のタイプによって、郵送で出すか年金事務所に持参するかが決まります。呼び出し調査なら持参、資料提出依頼なら郵送または電子申請ですね。

郵送で出すとき

返信用封筒が同封されていることもありますが、入っていないこともあります。その場合は自社で封筒と切手を用意して送ります。

返信用封筒があっても、切手が貼っていない・料金不足ということがあります。賃金台帳のコピーが入ると意外に重くなるので、送る前に重さを量ったほうが安全です。個人情報のかたまりなので、特定記録や簡易書留にしておくと安心ですね。

電子申請(e-Gov)で出すとき

e-Govの電子申請で「事業所(船舶所有者)調査資料の提出 電子申請用送付書」という手続きを検索すると、資料をまとめて送信できます。添付できるのはCSV形式・PDF形式・JPEG形式の3種類です。

STEP
資料を電子ファイルにする

調査票は記入してスキャン、賃金台帳などは給与ソフトからPDFで出力します。使えるのはCSV・PDF・JPEGの3形式です。スキャンするときは、文字がつぶれない解像度にしてください。

ファイル名を「賃金台帳_2025年4月〜2026年3月」のように内容が分かる名前にしておくと、担当者が開く順番で迷いません。

STEP
e-Govで手続きを検索する

e-Gov電子申請にログインし、手続検索で「事業所(船舶所有者)調査資料の提出 電子申請用送付書」を探します。日本年金機構あての手続きです。

初めて使う場合はGビズIDかアカウント登録が必要になります。当日に登録から始めると間に合わないことがあるので、期限に余裕を持って準備してください。

STEP
送付書に会社情報を入力する

電子申請用の送付書に、事業所整理記号・事業所名称・所在地などを入力します。調査票に書いた内容と同じにそろえてください。

ここで入力ミスがあると別事業所の資料として処理されかねないので、整理記号だけは2回確認したほうがいいと思います。

STEP
管轄の年金事務所を選んで送信する

ファイルを添付し、通知書を送ってきた年金事務所を選んで送信します。本部あてではなく、通知書に書かれている事務所を選びます。

添付できるファイル容量に上限があるので、賃金台帳が大きいときは月ごとに分けて添付すると通りやすいです。

STEP
到達通知を保存する

送信すると到達通知が発行されます。これが提出した証拠になるので、PDFで保存しておきます。

郵送と違って控えが手元に残らないので、送った資料一式もフォルダにまとめて保管しておくと、後で聞かれたときにすぐ出せます。

期限に間に合わないとき

黙って遅れるのが一番よくないです。通知書に書かれている担当者に電話して、いつまでに出せるかを伝えれば、たいていは待ってもらえます。

調査そのものが無くなるわけではないので、日程を調整してもらうという考え方ですね。当日の流れや、調査後に訂正が必要になったときの手続きは年金事務所「資格及び報酬等の調査」対応履歴(後編)~当日の対応、調査後の対応~にまとめています。

調査票でつまずきやすいポイント

調査票を書いている途中で「あれ、これ届出してなかったかも」と気づくことがあります。よくあるパターンを挙げておきます。

パート・アルバイトの社会保険加入判定フロー。4分の3基準と、被保険者51人以上の会社での週20時間以上などの短時間労働者の要件を順に判定する図

パート・アルバイトの加入漏れ

一番多い指摘です。契約は週15時間なのに、実際は週25時間働いている、というケースですね。

加入基準は、正社員の4分の3以上の労働時間・労働日数です。それ未満でも、被保険者51人以上の会社なら、週20時間以上・月額8.8万円以上・学生でない・2か月を超える雇用見込み、のすべてを満たすと加入対象になります(2026年7月時点)。

加入漏れが見つかると、要件を満たした日までさかのぼって加入手続きをすることになります。さかのぼりは最大2年で、その期間の保険料を会社と本人で負担します。本人分を後から回収するのは、正直かなり大変です。

試用期間中を未加入にしている

「試用期間が終わってから加入」という運用は誤りです。加入は入社日からで、試用期間かどうかは関係ありません。

入社日と資格取得日がずれていると、賃金台帳と資格取得届を突き合わせたときにすぐ分かります。ここは指摘されると必ずさかのぼりになるので、心当たりがあれば調査票を出す前に自主的に届け出たほうがいいと思います。

月額変更届の出し忘れ

昇給・降給で報酬が大きく変わったのに、月額変更届を出していないパターンです。提出が必要になるのは、次の3つをすべて満たしたときです。

  • 昇給・降給や手当の変更などで、固定的賃金が変わった
  • 変動した月から3か月の平均で、標準報酬月額が2等級以上変わった
  • 3か月とも支払基礎日数が17日以上ある(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)

なお、固定的賃金が上がったのに等級が下がった(またはその逆)というときは、随時改定の対象になりません。残業代の増減で動いただけ、というケースですね。

見落としやすいのは、通勤手当が変わったときですね。引っ越しや通勤経路の変更で定期代が上がると、それだけで2等級動くことがあります。書き方は「被保険者報酬月額変更届」の書き方、記入例、注意点などにまとめています。

賞与支払届の出し忘れ

賞与を払ったのに賞与支払届を出していないと、賃金台帳を見た時点で分かります。決算賞与や寸志など、いつもと違うタイミングで払ったものが漏れがちです。

金額が少なくても届出は必要です。届出の書き方は被保険者賞与支払届の書き方、記入例、提出方法、注意点などにまとめました。

漏れに気づいたら、調査当日を待たずに先に届出を出してしまうほうが印象はいいです。「調査票を書いていて気づいたので、先に提出しました」で通ります。

【2026年10月改正】賃金要件の撤廃で調査の見られ方が変わる

令和7年(2025年)6月13日に成立した年金制度改正法で、短時間労働者の加入要件が変わります。調査票の「被保険者でない人の数」に直接効いてくる改正なので、押さえておきたいところです。

月8.8万円の賃金要件がなくなる(令和8年10月予定)

短時間労働者の加入要件のうち、「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件が令和8年(2026年)10月に撤廃される予定です。いわゆる106万円の壁がなくなる改正ですね。

正確には「法律の公布から3年以内で政令で定める日」とされていて、全国の最低賃金が1,016円以上になる見込みを踏まえて令和8年10月と案内されています(2026年7月時点)。施行日が確定しているか、直前に日本年金機構のページで確認してください。

要件2026年9月まで2026年10月から(予定)
週の所定労働時間20時間以上20時間以上(変更なし)
賃金月額8.8万円以上要件なし(撤廃)
雇用期間2か月を超える見込み2か月を超える見込み(変更なし)
学生学生でないこと学生でないこと(変更なし)
企業規模被保険者51人以上被保険者51人以上(2027年10月から段階的に縮小)

最低賃金が上がって、週20時間働けばほぼ月8.8万円を超えるようになったので、要件として機能しなくなった、という背景です。これで対象になる人が全国で200万人ほど増えると見込まれています。

実務でいうと、これまで「時給を抑えて8.8万円未満にしていた」パートさんが対象に入ってきます。10月以降に調査を受けるなら、ここは間違いなく見られます。

企業規模要件は2027年10月から段階的に撤廃

「被保険者51人以上の会社」という企業規模要件も、10年かけて段階的になくなります。

時期対象になる企業規模
現在被保険者51人以上
令和9年(2027年)10月36人以上
令和11年(2029年)10月21人以上
令和14年(2032年)10月11人以上
令和17年(2035年)10月企業規模要件を撤廃(予定)

今は50人以下で対象外という会社も、順番に対象になっていきます。自社が何人目のラインで入るのかを一度確認しておくと、あわてずに済むと思います。

まとめ

「報酬・雇用に関する調査票」は、年金事務所の事業所調査で会社の状況を回答する用紙です。通知書に同封されてくるもので、ホームページからのダウンロードはできません。

記入欄は「事業所情報」「被保険者等の状況」「勤務状況」「報酬等の支払状況」の4ブロックです。つまずきやすいのは勤務状況欄で、上段が正社員の所定労働日数・時間、下段が役員やパートの実際の勤務状況、と分けて書きます。就業規則がなければ上段は空欄でも受理されます。

報酬の範囲は所得税と違うので注意してください。通勤手当は非課税でも報酬に含めます。逆に年3回以下の賞与は報酬に入れず、賞与支払届で別に届け出ます。

提出は郵送・持参のほか、e-Govの電子申請でも可能です。書いている途中で届出漏れに気づいたら、調査を待たずに先に届け出てしまったほうがいいと思います。日頃から手続きをしていれば、そんなに身構える調査ではないです。

よくある質問

調査票を書き損じてしまいました。コピーに書いて出してもいいですか?

コピーでも受理されることが多いですが、心配なら管轄の年金事務所に電話して用紙を再送してもらってください。事業所整理記号を伝えれば、その場で手配してもらえます。修正液で直すより、二重線と訂正印のほうが無難です。

調査票に社印や代表者印は必要ですか?

社会保険の届出書は原則として押印が廃止されているので、調査票にも押印は不要です。ただし用紙に押印欄が印刷されている場合は、押しておいたほうが返戻の心配がありません。

社労士に代わりに出してもらえますか?

提出も当日の立ち会いも代理でお願いできます。加入漏れの心当たりがある場合や、さかのぼりの可能性がある場合は、最初から相談しておいたほうが結果的に安く済むことが多いです。

従業員が1人もいない(役員だけ)でも調査票は出すのですか?

出します。書く内容は少なく、被保険者数と役員報酬の支払い状況が中心です。出勤簿がない場合は「役員のみのため該当なし」と書いておけば問題ありません。

調査を無視したらどうなりますか?

厚生年金保険法第100条で調査に応じる義務が定められていて、資料を出さない・虚偽の陳述をした場合は同法第102条で6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。日程が合わないだけなら電話で調整してもらえるので、放置しないでください。

提出した資料は返してもらえますか?

郵送で出したコピーは、原則として返却されません。原本ではなくコピーを送ってください。呼び出し調査で原本を持参した場合は、その場で確認して返してもらえます。

調査は何年おきに来るものですか?

法律で周期が決まっているわけではありませんが、4年に一度くらいの間隔で回ってくるという話をよく聞きます。短時間労働者が多い会社や、算定基礎届・賞与支払届が未提出の会社は、対象になりやすいとされています。

参考リンク

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