年金事務所「資格及び報酬等の調査」対応履歴(前編)~呼出しから事前準備まで~

年金事務所の資格及び報酬等の調査に対応する総務担当者のイラスト

年金事務所の「健康保険・厚生年金保険の被保険者資格及び報酬等の調査」の対応について、調査前の前編、調査当日とその後の対応の後編に分けて、まとめます。

この前編は、呼出しの通知が届いてから当日までの話です。どういう調査なのか、何を見られるのか、何を持って行くのかを整理しました。当日の様子と、調査後に訂正が必要になったときの手続きは後編にあります。

【この記事でわかること】

  • 事業所調査は厚生年金保険法第100条・健康保険法第198条に基づくもので、正当な理由なく断ることはできない
  • 見られるのは「入るべき人が入っているか」と「届け出た報酬が実際と合っているか」
  • 持って行くのは賃金台帳・出勤簿・源泉所得税の領収証書・労働者名簿など
  • 加入漏れが見つかると、最大2年さかのぼって保険料を求められることがある
  • 2026年10月に短時間労働者の賃金要件が撤廃される予定(本記事は2026年7月時点の内容)
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健康保険・厚生年金保険の被保険者資格及び報酬等の調査とは

全国健康保険協会管掌健康保険及び厚生年金保険被保険者の資格及び報酬等の調査よびだし

年金事務所によって様式は異なるものの、このような案内の書類です。

この通知書には「報酬・雇用に関する調査票」という記入用紙が同封されていることが多いです。会社の人数・勤務状況・給与の支払い状況をまとめて書いて返す用紙で、様式は年金事務所のホームページからダウンロードできません。書き方は「報酬・雇用に関する調査票」の記入例、書き方、提出方法にまとめました。

この調査は断れるの?

断れません。これはどういう調査なのでしょうか?年金事務所のHPによれば次の通りで、断れないタイプの調査です。

(4)事業所調査の受忍義務
事業所調査については、厚生年金保険法第100条において「厚生労働大臣は、被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関する決定に関し、必要があると認めるときは、事業主に対して、文書その他の物件を提出すべきことを命じ、又は当該職員をして事業所に立ち入つて関係者に質問し、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」とされ、また、同第102条において、事業主が、正当な理由がなくて「第百条第一項の規定に違反して、文書その他の物件を提出せず、又は当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。」は6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされています。

厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組み|日本年金機構より

引用文の罰則表記は、現行法では「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」です。懲役と禁錮は2025年6月1日施行の改正で拘禁刑に一本化されました。なお、健康保険のほうは健康保険法第198条が同じように立入検査などを定めています。

とはいえ、日程が合わないだけなら電話で調整してもらえます。通知書に担当者の名前と電話番号が書いてあるので、無視して放置するより先に一本かけたほうがいいと思います。

調査のポイント

どういう点をチェックする調査なのでしょうか?実体験は今回の後編でまとめますが、一般的には次のような点を確認されます。

  • 被保険者の資格や報酬について適正な届出が行われているか
  • 被保険者の加入や賞与支払に関する届出の未提出
  • 報酬月額の届出記載誤り
  • これらの不備・不足の場合は再提出や是正

具体的には、

  • アルバイト/パートの加入漏れはないか
  • 入社時から加入しているかどうか
  • 資格取得の標準報酬は合っているか
  • 算定基礎、賞与届は適正にされているか
  • 月額処理をちゃんとしているか
  • 60歳以上で従業員はちゃんと加入しているか

とかでしょうか?最後の高齢者の話だけ補足しておくと、厚生年金保険に入るのは原則70歳未満までで、70歳以上の人は「70歳以上被用者該当届」のほうが対象になります(健康保険は原則75歳まで)。

このあたりは届出の控えを見れば分かる話なので、事前に自分でひととおり突き合わせておくと当日が楽です。届出そのものの書き方は「被保険者報酬月額算定基礎届」の記入例、書き方、提出方法、注意点にまとめています。

賞与のほうは被保険者賞与支払届の書き方、記入例、提出方法、注意点などです。決算賞与や寸志など、いつもと違うタイミングで払ったものが漏れやすいので、そこだけ先に確認しておくといいと思います。

どこまで遡られるの?

社会保険の加入基準を満たしているのに加入を怠った場合は、入社日または加入要件を満たした日まで遡って、最大2年間の保険料支払いを要求されることがあるそうです。

社会保険の加入漏れが見つかったときの遡り。入社日または要件を満たした日まで最大2年遡り、会社負担分と本人負担分の保険料が発生することを示した図

会社負担分だけでなく本人負担分も発生するので、すでに辞めた人の分まで出てくると回収が大変です。きちんとやっているつもりでもモレはあるので怖いところです。(しかも、今の会社はケチって社労士を使わないから色々自信がないです。)

年金事務所の資格及び報酬等の調査必要なもの

  • 賃金台帳、給与明細書等、給与額が確認できるもの。
  • 出勤簿またはタイムカード
  • 所得税徴収高計算書(源泉所得税の領収書)の直近分
  • 労働者名簿、雇用契約書、就業規則、給与規定
  • 本通知書
年金事務所の事業所調査に持って行く書類と、それぞれ何を確認されるかの対応表

昔行ってから数年たっているので、何を聞かれたかもあまり覚えていないのです。まあ、定期的なもので、持って行った書類をチェックされるという流れですね。

なお、原本ではなくコピーで問題ありません。郵送で出す場合は返ってこないので、コピーを送るようにしてください。

社会保険の加入条件

加入要件をおさらいするとこんな感じです。まずは正社員の4分の3という基本の基準から。

パートタイマー・アルバイト等が被保険者の対象になるか否かの判断は、同じ事業所で同様の業務に従事する一般社員の所定労働時間および所定労働日数を基準に判断することとなります。
 
≪判断基準≫
次の(ア)及び(イ)が一般社員の4分の3以上である場合は、被保険者になります。
(ア)労働時間
1週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上
(イ)労働日数
1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上

適用事業所と被保険者|日本年金機構より

4分の3に届かない人はどうなるの?

4分の3未満でも、次の要件をすべて満たす短時間労働者は被保険者になります(2026年7月時点)。

要件内容
労働時間週の所定労働時間が20時間以上
雇用期間2か月を超える雇用の見込みがある
賃金所定内賃金が月額8.8万円以上
学生学生でない
企業規模厚生年金保険の被保険者が51人以上の企業(特定適用事業所)

この2つは以前の内容から変わっているので注意してください。雇用期間の要件は2022年10月に「1年以上の見込み」から「2か月を超える見込み」へ短縮されました。企業規模の要件も、2024年10月に101人以上から51人以上へ引き下げられています。

つまり、以前は対象外だった短期のアルバイトや、51〜100人規模の会社のパートさんが対象に入ってきているということですね。前回の調査から数年空いている会社ほど、ここでズレが出やすいと思います。

【2026年10月改正】加入条件はこう変わる

令和7年(2025年)6月13日に成立した年金制度改正法で、短時間労働者の加入条件がさらに広がります。これから調査を受けるなら押さえておきたいところです。

短時間労働者の社会保険加入条件の改正タイムライン。2022年10月の雇用期間要件の短縮、2024年10月の企業規模51人以上への引き下げ、2026年10月の賃金要件撤廃予定、2027年以降の企業規模要件の段階的撤廃を示した図

月8.8万円の賃金要件がなくなる

「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件が、令和8年(2026年)10月に撤廃される予定です。いわゆる106万円の壁がなくなる改正ですね。

正確には「法律の公布から3年以内で政令で定める日」とされていて、全国の最低賃金が1,016円以上になる見込みを踏まえて令和8年10月と案内されています。週20時間以上働けばほぼ8.8万円を超えるようになったので、要件として意味がなくなった、という背景です。

時給を抑えて8.8万円未満にしていたパートさんが、賃金以外の要件(週20時間以上・2か月を超える雇用見込み・学生でない・被保険者51人以上の会社)を満たしていれば対象に入ってきます。撤廃されるのは賃金要件だけで、ほかの要件はそのまま残るということですね。10月以降に調査を受けるなら、ここは間違いなく見られると思います。

51人以上という企業規模の要件もなくなる

企業規模の要件は、10年かけて段階的に引き下げられ、最終的になくなります。

時期対象になる企業規模
現在被保険者51人以上
令和9年(2027年)10月36人以上
令和11年(2029年)10月21人以上
令和14年(2032年)10月11人以上
令和17年(2035年)10月企業規模要件を撤廃(予定)

今は50人以下で対象外という会社も、順番に対象になっていきます。自社が何人目のラインで入るのかだけ、一度確認しておくといいと思います。

4年に一度の調査が多いと聞きますが、今回も無事に乗り越えたいところです。

続きは、「年金事務所「資格及び報酬等の調査」対応履歴(後編)~当日の対応、調査後の対応~」です。よかったらご覧ください。

年金事務所の調査のQ&A

調査は必ず年金事務所まで行くの?

呼出しで年金事務所に行くタイプと、調査官が会社に来るタイプ、資料を郵送・電子申請で出すだけのタイプがあります。どれになるかは通知書に書いてあります。短時間労働者が多い事業所などは訪問調査になることがあるようです。

日程が合わないときはどうすればいい?

通知書に書いてある担当者に電話すれば調整してもらえます。決算期や算定基礎届の時期と重なったので、という理由でも大丈夫だと思います。黙って行かないのが一番よくないですね。

社労士に代わりに行ってもらえるの?

お願いできます。加入漏れの心当たりがある場合や、遡って加入させる可能性がある場合は、最初から相談しておいたほうが結果的に楽だと思います。うちは使っていないので自力ですが。

持って行く書類は原本じゃないとダメ?

コピーで問題ありません。郵送で提出する場合は返却されないので、必ずコピーを送ってください。呼出しで持参する場合は、その場で確認して返してもらえます。

従業員が役員1人だけでも調査は来るの?

来ます。書く内容は少なくて、被保険者数と役員報酬の支払い状況が中心になります。出勤簿がない場合は「役員のみのため該当なし」と伝えれば大丈夫です。

調査票を書いていて届出漏れに気づいたら?

調査当日を待たずに、先に届出を出してしまったほうがいいと思います。「調査票を書いていて気づいたので先に提出しました」で通ります。指摘されてから直すより印象がいいですね。

2026年7月更新:短時間労働者の加入要件(雇用期間・企業規模)を現行の内容に修正し、2026年10月以降の改正予定を追記しました。

今月のおすすめ本

<コメント>契約書の注意点や弁護士との付き合い方がわかる、これまでにない一冊

著:飯田裕子
¥1,980 (2026/10/08 19:25時点 | Amazon調べ)

<コメント>この手の本の集大成。迷ったらこの一冊!

<コメント>経理でAIを使わなあかんなと思ったらまず読んでみて。

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