社員が立て替えた経費を会社が払い戻す「経費精算」。毎月かならず発生する仕事ですが、流れやルールがあいまいだと、申請がもれたり、領収書が足りなかったりと、こまかいトラブルが起きやすいところです。
逆に、申請から支払いまでの流れと、立替精算の基本ルールがしっかり決まっていれば、経理も社員もまよわずに動けます。差し戻しが減って、お互いに楽になりますね。
今回は、経費精算の全体の流れから、立替経費精算の基本ルール、申請時の添付書類や相見積もりの考え方まで、経理担当者向けに整理しました。これから精算業務を担当する方は、よかったら参考にしてください。
経費精算とは?立替経費と仮払いのちがい
まずは言葉の整理からです。経費精算は、お金を払うタイミングによって「立替経費」と「仮払い」の2つに分かれます。
経費精算って何をすること?
経費精算とは、社員が業務のために自分のお金で立て替えた費用を、会社が払い戻す手続きのことです。電車代やタクシー代、出張先での宿泊費、ちょっとした備品の購入など、立て替えの場面はいろいろあります。
立て替えた社員から見れば「払い戻してもらう」手続き、会社から見れば「経費を確定させて支払う」手続きです。経理は、その申請が正しいかを確認し、支払いまでつなげる役割を担います。
立替経費と仮払いはどう違う?
立替経費と仮払いのちがいは、お金を払う順番です。

| 区分 | お金の流れ | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 立替経費 | 社員が先に払い、あとで会社が払い戻す | 少額・日常的な支払い |
| 仮払い | 会社が先に概算で渡し、あとで精算する | 出張など高額になる支払い |
少額のものは立替経費、出張のように金額が大きく社員の負担が重くなるものは仮払い、と使い分けるのが一般的です。仮払いの具体的な運用や仕訳については、仮払金申請書_仮払金精算書の書き方と記入例、フォーマット〜無料テンプレート付き〜でくわしく解説しています。

この記事では、立替経費の精算を中心に見ていきます。
経費精算の流れ(申請から支払いまで)
立替経費の精算は、おおまかに次の5ステップで進みます。会社によって細かい違いはありますが、基本の型はだいたい同じです。

社員が業務に必要な費用を自分で支払い、領収書やレシートを必ず受け取ります。あとで精算するときの根拠になるので、もらい忘れに注意します。
使った日付・金額・内容を経費精算書に記入し、領収書を添えて申請します。何の費用かが伝わるよう、目的や相手先まで書いておくと差し戻しが減ります。
申請内容が業務に必要なものか、上長が確認して承認します。経費として認めてよいかを、現場を知る立場で判断する段階です。
経理が、金額と領収書が合っているか、勘定科目は何か、社内ルールに沿っているかを確認します。不備があればこの段階で差し戻します。
確認がすんだら、社員へ払い戻します。給与と一緒に振り込む、専用の振込日にまとめて払う、といった方法があります。これで精算が完了します。
経費精算書そのものの書き方や記入例は、経費精算書の書き方と記入例、フォーマット〜無料テンプレート付き〜にまとめています。テンプレートも配布しているので、申請する側に案内するときにも使ってください。

立替経費精算の基本ルール
流れがつかめたら、次は精算のルールです。ここをそろえておくと、判断にまよう場面がぐっと減ります。

領収書・インボイスを確認する
精算の基本は、領収書やレシートで支払いの事実を確認することです。あわせて、消費税を差し引くには、登録番号の入ったインボイス(適格請求書)が必要になります。宛名や但し書きがあいまいなものは、後で経費として認められない場合があるので、受付の段階で確認しておきましょう。
領収書をなくしてしまった場合は、出金伝票や支払証明書で代用することもありますが、原則は領収書をそろえてもらうのが基本です。
申請時に添付する書類(見積書・カタログなど)
精算で添える書類は、領収書だけとはかぎりません。とくに備品や物品を買う場合は、何をいくらで買ったのかを示す書類があると、承認やチェックがスムーズになります。よく添付するものは次のとおりです。
| 添付書類 | 役割 |
|---|---|
| 領収書・レシート | 実際に支払った事実を示す(精算の必須書類) |
| 見積書 | 購入前の金額や内訳を示す。事前申請のときに添える |
| カタログ・仕様書 | 買うものの内容・型番・必要性を説明する |
| 明細書・納品書 | 何をいくつ買ったか、内訳を裏づける |
見積書やカタログは、「なぜそれを、その金額で買う必要があったのか」を説明する材料になります。高額な購入や、初めて買うものほど、こうした書類を添えてもらうと、承認する側もチェックする経理も判断しやすくなりますね。
高額な購入は相見積もりを取る
金額の大きな購入をするときは、1社だけでなく複数の業者から見積もりを取る「相見積もり(あいみつもり)」をルールにしておくのがおすすめです。複数の見積もりを比べることで、価格が適正かどうかを判断でき、買いすぎや割高な発注を防げます。
たとえば「○万円以上の購入は2社以上の相見積もりを添える」といった基準を決めておくと、運用がぶれません。相見積もりは、価格を抑える効果だけでなく、特定の業者だけに発注が偏る不正やなれ合いを防ぐ意味でも役立ちます。すべての精算で必要なわけではないので、金額の基準を決めて、高額なものだけに絞るのが現実的だと思います。
精算の締め日・支払日を決める
精算は、申請の締め日と支払日をあらかじめ決めておくと回しやすくなります。「毎月20日締め・当月25日の給与と一緒に支払い」というように決めておけば、申請する側も経理も予定が立てられます。
締め日を決めずに随時受け付けていると、支払いがバラバラになり、経理の手間が増えます。月の流れに組み込んでしまうのが、続けやすいコツですね。
精算期限を設けて古い立替を残さない
立て替えた経費は、できるだけ早く精算してもらうルールにしておきましょう。何か月も前の領収書が後から出てくると、確認に手間がかかりますし、年度をまたぐと決算の処理も面倒になります。
「立て替えた月の翌月末まで」といった期限を決めておくと、古い立替がたまるのを防げます。社員にとっても、早く払い戻されるほうが負担が軽くなるので、お互いにメリットがありますね。
経費にできるもの・できないもの
精算で迷いやすいのが、これは経費になるのかという線引きです。基本は「業務に必要な支出かどうか」で判断します。私的な飲食や、業務と関係のない買い物は経費にできません。
判断が分かれやすいもの(接待か個人的な飲食か、私用と業務が混じる支出など)は、あらかじめ社内でルールを決めておくと、その都度もめずにすみます。基準があいまいだと、担当者によって扱いが変わってしまうので、文書にしておくのが安心です。
経費精算をスムーズにする工夫
最後に、精算の手間そのものを減らす工夫を紹介します。仕組みを整えるほど、毎月の負担が軽くなります。
社内ルール・経費精算規程を整える
ここまで見てきた締め日・期限・添付書類・相見積もり・経費の範囲といったルールは、口頭ではなく「経費精算規程」として文書にまとめておくのがおすすめです。ルールが明文化されていれば、新しく入った社員にも案内しやすく、判断のばらつきもなくなります。
立替払の具体的な申請書の書き方は、立替払申請書の書き方と記入例、フォーマット〜無料テンプレート付き〜にまとめています。あわせて整えておくと、申請から精算までの一式がそろいます。

キャッシュレス化・精算システムで立替を減らす
そもそも社員に立て替えさせない、という方向の工夫もあります。法人カードを渡して直接払ってもらえば、立替も精算もなくなります。交通系ICカードの利用履歴を使えば、交通費精算も楽になります。
経費精算システムを導入すれば、スマホで領収書を撮って申請、承認、仕訳までを自動でつなげることもできます。件数が多くて手作業がつらいと感じてきたら、こうしたツールの導入を検討してみるのもいいと思います。
経費精算のよくある質問(FAQ)
- 領収書をなくしたら経費精算できない?
-
原則は領収書が必要ですが、電車代のように領収書が出ない支払いや、なくしてしまった場合は、出金伝票や支払証明書で代用することがあります。日付・金額・内容・相手先を記録し、上長の承認を得ておけば経費として扱えることが多いです。ただし、消費税を差し引くにはインボイスが必要なので、代用の場合はその点に注意します。常態化しないよう、原則は領収書をそろえてもらいましょう。
- 相見積もりは必ず取らないといけない?
-
法律上の義務ではありません。ただ、高額な購入では価格が適正かを確かめる手段として有効なので、社内ルールとして取り入れている会社が多いです。少額のものまですべて相見積もりを取るのは現実的でないので、「○万円以上の購入は2社以上」のように金額の基準を決めて運用するのがおすすめです。補助金を使う購入では、相見積もりが条件になっていることもあります。
- 経費精算はいつ支払えばいい?
-
法律で支払日が決まっているわけではないので、会社で締め日と支払日を決めておきます。給与と一緒に振り込む方法が、手間が少なく一般的です。社員が立て替えている以上、あまり先延ばしにせず、申請からなるべく早く払い戻すのが望ましいです。締め日・支払日をルール化しておくと、社員も見通しが立って安心できます。
- 経費精算と仮払いはどちらを使えばいい?
-
少額で日常的な支払いは立替経費の精算、出張など金額が大きく社員の負担が重くなる支払いは仮払いが向いています。立替は社員がいったん自分で負担するので、高額だと負担が重くなります。金額の目安を決めて、それを超えるものは仮払いにする、といった使い分けをルール化しておくと運用しやすいです。
- 申請内容に不備があったらどうする?
-
金額と領収書が合わない、添付書類が足りない、経費にできない支出が混じっている、といった場合は、その場で差し戻して修正してもらいます。あいまいなまま支払ってしまうと、後で問題になったり、税務調査で指摘されたりするおそれがあります。チェックの基準を社内で共有しておくと、差し戻しの判断もぶれずにすみます。
経費精算は、申請・承認・チェック・支払いという流れと、締め日や精算期限、添付書類、相見積もりといった基本ルールがそろえば、ぐっと回しやすくなります。決めたルールは経費精算規程として文書にしておくと、判断のばらつきもなくなります。まずは流れとルールを固めるところから、毎月の精算を楽にしていってもらえればと思います。




