「金庫の現金を数えたら、帳簿と数百円ずれていた」。経理を担当していると、一度はこんな場面に出くわすと思います。金額は小さくても、どう処理すればいいのか分からず手が止まってしまいますよね。
現金は、会社のお金の中でいちばん身近で、いちばん事故が起きやすいものです。だからこそ、日々の数え方と、ずれが出たときの仕訳のルールを知っておくと、あわてずに対応できます。
今回は、現金過不足が出たときの仕訳を中心に、現金管理の基本と現金実査の進め方まで、経理担当者向けに整理しました。不足したとき・多かったとき・原因が分かったとき・決算まで分からなかったときの4パターンを、仕訳例で確認できます。
現金管理とは?経理が現金を管理する目的
現金管理とは、会社が持っている現金を、帳簿と一致した状態に保ちながら、安全に出し入れする仕事です。レジや小口の金庫にあるお金を、いつ・いくら・何のために動かしたのかを、もれなく記録していきます。
地味な作業に見えますが、お金そのものを扱う以上、ここがあいまいだと会社の数字全体が信用できなくなります。現金管理は、経理の土台になる仕事ですね。
なぜ現金の管理が重要なの?
現金は、ほかの資産とちがって、持ち主の名前が書いてありません。誰の手に渡っても見分けがつかないので、紛失や使い込みが起きやすく、いったん無くなると追いかけるのが難しいという特徴があります。
また、現金のずれを放っておくと、月末の締めや決算のときに帳簿が合わなくなり、原因探しに時間を取られます。毎日きちんと管理しておくことが、結局はいちばんの近道だと思います。
現金管理の基本ルール
現金管理でおさえておきたい基本ルールは、次の3つです。むずかしいことではなく、毎日続けられる仕組みにしておくのがコツです。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 担当を分ける | お金を出し入れする人と、帳簿をつける人・確認する人を分ける(一人で完結させない) |
| その日のうちに締める | 1日の終わりに現金を数え、帳簿残高と合っているか確認する |
| 金庫は施錠して管理 | 現金は鍵のかかる金庫に保管し、鍵の管理者を決めておく |
とくに大事なのが、最初の「担当を分ける」ところです。出し入れと確認を同じ人がやっていると、ミスや不正があっても気づけません。人数の少ない会社では難しいこともありますが、できる範囲で誰かの目を入れておくと安心ですね。

現金実査とは?やり方と頻度
現金管理の中心になるのが「現金実査」です。むずかしそうな言葉ですが、要は手元の現金を実際に数えて、帳簿と突き合わせる作業のことです。
現金実査って何をするの?
現金実査とは、金庫やレジにある現金を実際に数えた金額(実際有高)と、帳簿の上での残高(帳簿残高)が一致しているかを確認する作業です。帳簿だけを見ていても、本当にそのお金が手元にあるかどうかは分かりません。だから、実物を数えて確かめるわけですね。
2つの金額が一致していれば問題ありません。もし合っていなければ、後で説明する「現金過不足」として処理していきます。
現金実査のやり方と頻度
実査の手順は、次の3ステップです。
- 金庫やレジの現金を、1万円札・千円札……と金種ごとに数える(金種表に書き出す)
- 金種ごとの金額を合計して、実際有高を出す
- 現金出納帳の帳簿残高と突き合わせ、一致しているか確認する

頻度は、基本的に毎日、1日の終わりに行うのが理想です。毎日数えていれば、ずれが出てもその日の取引の中から原因を探せます。毎日が難しい場合でも、最低でも月末には必ず実査して帳簿と合わせておきましょう。
金種表の書式や現金出納帳との突き合わせ方は、小口現金管理方法~現金出納帳との整合管理、金種表作成例~で作成例つきで解説しています。実査の様式をこれから用意する方は、そちらをご覧ください。
現金過不足が出たときの処理と仕訳
実査をすると、帳簿と実際の金額がずれることがあります。このずれを処理するのが「現金過不足」という勘定科目です。仕訳のパターンはいくつかありますが、順番に見ていけば難しくありません。

現金過不足とは?
現金過不足とは、帳簿残高と実際有高が合わないときに、その差額を一時的に入れておくための勘定科目です。あくまで「原因が分かるまでの仮の置き場所」で、原因が判明したら正しい科目に振り替えます。
現金が足りないときも、多すぎるときも、どちらもこの現金過不足を使います。以下、それぞれの仕訳を見ていきましょう。金額はすべて例として書いています。
現金が不足していたときの仕訳
帳簿残高が50,000円なのに、実際には49,800円しかなかった、という場合です。200円足りないので、帳簿の現金を実際の金額まで減らし、差額を現金過不足にします。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金過不足 200円 | 現金 200円 |
これで帳簿上の現金が、実際の手元の金額と一致します。原因はこのあと探していくことになりますね。
現金が多かったときの仕訳
反対に、帳簿残高が50,000円なのに、実際には50,300円あった、という場合です。300円多いので、帳簿の現金を増やし、差額を現金過不足にします。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 現金 300円 | 現金過不足 300円 |
不足のときと借方・貸方が逆になります。お金が多いと一見うれしいですが、これも立派な「ずれ」なので、きちんと原因を確かめる必要があります。
あとから原因が判明したときの仕訳
後日、不足していた200円が「切手代の記帳もれ」だったと分かったとします。この場合、現金過不足を消して、正しい科目(通信費)に振り替えます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 通信費 200円 | 現金過不足 200円 |
このように、現金過不足はあくまで仮の科目なので、原因が分かれば本来の科目に置き換えます。多かった場合に原因が分かったときも、同じように現金過不足を反対側に動かして、受取利息や雑収入などの正しい科目へ振り替えます。
決算まで原因が分からないときの仕訳
いろいろ調べても、決算日まで原因が分からないこともあります。その場合は、現金過不足を残したままにはできないので、決算で雑損失または雑収入に振り替えて精算します。
| ケース | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 不足のまま不明(200円) | 雑損失 200円 | 現金過不足 200円 |
| 過剰のまま不明(300円) | 現金過不足 300円 | 雑収入 300円 |
不足のまま分からなければ費用(雑損失)、多いまま分からなければ収益(雑収入)として処理する、と覚えておくと迷いません。現金過不足は決算をまたいで残してはいけない科目なので、ここで必ずゼロにしておきましょう。
現金過不足を防ぐ管理の工夫
仕訳のしかたを覚えるのも大事ですが、そもそも現金過不足が起きにくい仕組みを作っておくのが一番です。最後に、ずれを防ぐための工夫を2つ紹介します。
小口現金で現金の動きを切り分ける
日々の細かな支払いは、用途と上限を決めた「小口現金」にまとめると管理が楽になります。担当者を決めて、出納帳をつけながら運用すれば、ずれが出てもどこで起きたのかをたどりやすくなります。
小口現金の具体的な管理方法や現金出納帳のつけ方は、小口現金管理方法~現金出納帳との整合管理、金種表作成例~でくわしく解説しています。出納帳や金種表の実例も載せているので、あわせてご覧ください。

キャッシュレス化で現金そのものを減らす
もっと根本的な対策として、現金の出番そのものを減らすという考え方もあります。法人カードや法人デビットで支払えば、現金を数える手間も、ずれが出る心配もなくなります。
小口現金そのものをやめる方法については、小口現金を廃止する方法|法人デビットカードで経費管理を効率化で紹介しています。現金管理の負担が大きいと感じている方は、こちらも検討してみてください。

現金管理のよくある質問(FAQ)
- 現金過不足はどの勘定科目のグループに入る?
-
現金過不足は、資産でも負債でもない一時的な科目で、原因が分かるまでの仮の置き場所です。決算までに必ず正しい科目へ振り替えるか、雑損失・雑収入に精算するので、決算書には「現金過不足」という科目は残りません。あくまで途中経過で使う科目、と考えておくと分かりやすいです。
- 数円のずれでも毎回仕訳が必要?
-
金額が小さくても、帳簿と実際が合っていない以上は処理が必要です。少額なら原因を深追いせず、雑損失や雑収入で精算してしまうことも実務ではよくあります。ただ、毎回のように数円ずれているなら、レジの打ち間違いやおつりのミスなど、どこかに原因があるサインかもしれません。金額より「いつも出る」かどうかに注目するといいと思います。
- 現金実査は誰がやるべき?
-
理想は、ふだん現金を出し入れしている人とは別の人が確認することです。出し入れする人が自分で数えて自分で記録すると、ミスや不正に気づけません。人数が少なくて分けられない場合は、責任者がときどき立ち会う、月末だけは別の人が数える、といった形でも効果があります。
- どうしても原因が分からないときはどうする?
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調べても分からない場合は、現金過不足のまま残さず、決算のときに雑損失(不足の場合)か雑収入(過剰の場合)に振り替えて精算します。大切なのは、原因不明のずれを放置しないことです。ずれた経緯をメモに残しておくと、後で似たことが起きたときの手がかりになります。
- 現金を扱わない会社でも現金管理は必要?
-
すべての支払いをカードや振込で行っていて、社内に現金がまったくない会社なら、現金実査の手間はほぼなくなります。ただ、多くの会社では切手や慶弔費など、少額の現金が残っているものです。少しでも現金があるなら、金庫の管理と定期的な確認はしておいたほうが安心です。
現金管理は、毎日の実査でずれを早く見つけ、現金過不足の仕訳で正しく処理する、という地道な積み重ねです。ずれが出ても、不足なら現金過不足を借方に、過剰なら貸方に、と覚えておけば落ち着いて対応できます。まずは1日の終わりに数える習慣から始めて、少しずつ現金まわりを自分のものにしてもらえればと思います。




