「今度の日曜、出勤してもらえる? 代わりに月曜を休みにするから」。繁忙期や急なトラブルで、休日に働いてもらう場面はどうしても出てきますよね。このときに関わってくるのが「振替休日」と「代休」です。
この2つは似ているようで、実は割増賃金の扱いがまったくちがいます。取り違えると、本来払うべき割増賃金を払いそびれてしまい、後で未払いを指摘されることにもなりかねません。
今回は、振替休日と代休のちがいから、割増賃金がどうなるか、運用上の注意点まで、給与計算を担当する方向けに整理しました。よかったら参考にしてください。
振替休日と代休とは?
まずは、それぞれがどういうものかをおさえましょう。ポイントは「いつ休みを決めるか」です。
振替休日って何?
振替休日とは、あらかじめ「この休日に働いてもらう代わりに、別の労働日を休みにする」と決めて、休日と労働日を入れ替えることです。事前に入れ替えるのがポイントです。
たとえば、来週の日曜に出勤してもらう代わりに、前もって翌週の水曜を休みにすると決めておく。こうすると、もともとの日曜は「労働日」、水曜が「休日」に入れ替わります。出勤した日曜は、もう休日ではなくなるわけですね。
代休って何?
代休とは、休日に働いてもらったあとで、その代わりとして別の日を休みにすることです。先に休日労働があって、後から埋め合わせの休みを与える、という順番になります。
急に日曜出勤が必要になり、事前に休みを決める余裕がなかった。とりあえず出勤してもらって、後日「先週の日曜の分、今日休んでいいよ」と休ませる。これが代休です。この場合、出勤した日曜は「休日労働」のまま残ります。
振替休日と代休の違い
2つのいちばんの違いと、それによって変わる割増賃金の扱いを見ていきます。
いちばんの違いは「事前か事後か」

振替休日は「事前」に休日と労働日を入れ替えるもの、代休は「事後」に埋め合わせの休みを与えるもの。この事前か事後かが、両者を分ける決定的なちがいです。
事前に入れ替えれば、その日はもう休日ではなくなるので「休日労働」になりません。一方、後から休みを与えても、すでに働いた日が休日だった事実は変わらないので「休日労働」が残る。ここが割増賃金の差につながります。
割増賃金の扱いが変わる
違いを表にまとめると、次のようになります。
| 項目 | 振替休日 | 代休 |
|---|---|---|
| 休みを決める時期 | 働く前(事前) | 働いた後(事後) |
| 出勤日の扱い | 労働日(休日ではない) | 休日労働 |
| 休日労働の割増 | 原則なし | 必要(35%または25%) |
| 就業規則の定め | 必要 | あると望ましい |
ざっくり言えば、きちんと事前に振り替えれば割増は原則いらない、後から代休を与えるだけでは割増が必要、ということです。
割増賃金はどうなる?

ここが実務でいちばん間違えやすいところです。それぞれのケースを順に見ていきましょう。
振替休日の場合
振替休日では、出勤した日はもう休日ではないので、休日労働の割増は原則として必要ありません。ただし、注意点が1つあります。振り替えた結果、その週の労働時間が法定の40時間を超えると、超えた分には時間外労働の割増(25%)が必要になります。
たとえば、休日を翌週に振り替えた場合、出勤した週は労働日が1日増えて40時間を超えやすくなります。すると、その超過分には割増がついてしまうわけです。割増を出したくないなら、振替先はできるだけ同じ週の中に設定するのがコツです。
代休の場合
代休では、出勤した日が休日労働のまま残るので、その日の割増賃金は必ず発生します。後から代休を与えても、いったん発生した休日労働の割増は相殺されません。ここを「代休をあげたから割増は不要」と勘違いしやすいので注意が必要です。
代休を無給にする場合の精算は、「休日労働の割増込みの賃金を払い、代休日の分を無給とする」という形になります。結果として、割増分(35%なら0.35、25%なら0.25)は会社が負担することになります。この割増の支払いを忘れないようにしましょう。
法定休日か所定休日かで割増率が変わる
代休のときの割増率は、働いた休日が「法定休日」か「所定休日」かで変わります。法定休日(週1日は必ず与えるべき休日)に働いた場合は35%、それ以外の会社が定めた所定休日なら、時間外労働として25%が目安です。
どの休みが法定休日にあたるかは、就業規則の定め方によります。割増率を正しく出すには、まず自社の法定休日がどれかをはっきりさせておくことが欠かせません。給与計算全体の中での割増の位置づけは、給与計算入門〜初心者の方にやり方・ルールなどの全体の流れを細かく解説〜でも解説しているので、あわせてご覧ください。

運用上の注意点

最後に、振替休日・代休をトラブルなく運用するための注意点をまとめます。
就業規則に根拠を定めておく
とくに振替休日は、就業規則に「業務の都合で休日を振り替えることがある」という定めがないと、会社から一方的に命じることができません。代休についても、与える条件や賃金の扱いを定めておくと、運用がぶれません。まずは規程の整備が土台になります。
振替は事前に指定し、できれば同じ週内に
振替休日は、必ず働く前に振替日を指定することが条件です。後から「あれは振替だった」とするのは認められず、それは代休になってしまいます。また、前に説明したとおり、割増を避けるには振替先を同じ週の中にするのが理想です。週をまたぐと、時間外割増がついてしまう場合があります。
代休の取得期限を決めておく
代休は、いつまでに取るという期限を決めておかないと、取りそびれてどんどんたまっていきます。「休日労働をした月の翌月末まで」のように期限を設けておくと、未消化の代休が積み上がるのを防げます。社員の健康管理の面でも、早めに休んでもらうのが望ましいですね。
振替休日と代休のよくある質問(FAQ)
- 代休をあげれば割増賃金は払わなくていい?
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いいえ、代休を与えても、休日労働に対する割増賃金は支払う必要があります。代休はあくまで、働いた分の通常の賃金を別の休みで埋め合わせるものです。割増部分(法定休日なら35%、所定休日なら25%)は埋め合わせの対象にならず、会社が支払うことになります。「代休=割増不要」と思い込むと未払いになるので注意してください。
- 振替休日なら割増はまったくいらない?
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休日労働の割増は原則いりませんが、振り替えによってその週の労働時間が法定の40時間を超えた場合は、超えた分に時間外労働の割増(25%)が必要です。振替先を翌週など離れた日にすると起きやすいので、割増を避けたいなら、同じ週の中で振り替えるのがおすすめです。同一週内なら、割増が生じないことが多くなります。
- 振替休日を決めたのに結局取れなかったら?
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事前に振替日を決めていても、その日に休めず働いてしまうと、振替が成立しなくなり、結果的に休日労働として割増が必要になることがあります。振替日が取れなくなった場合は、あらためて別の日に振り替えるか、代休として割増を払って処理します。決めた振替日が機能しているか、運用の中で確認しておくとよいでしょう。
- 代休は必ず与えないといけない?
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代休を与えること自体は、法律上の義務ではありません。休日労働の割増賃金をきちんと払っていれば、代休を与えなくても違法ではありません。ただ、休日に働いた社員の負担を考えると、代休を用意するのが望ましい運用です。代休を与える場合は、賃金の精算方法を就業規則で明確にしておきましょう。
- 振替休日に期限はある?
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法律で明確な期限が決まっているわけではありませんが、あまり先に振り替えると、割増賃金の計算が複雑になったり、休日が確保されない状態が続いたりします。できるだけ近い日に、可能なら同じ週内や、遅くとも翌週までに振り替えるのが望ましいです。就業規則で振替の期限を定めておくと、運用がはっきりします。
振替休日と代休のちがいは、休みを「事前」に入れ替えるか「事後」に与えるか、その一点に尽きます。事前の振替なら休日労働にならず割増は原則不要、事後の代休なら休日労働の割増は必ず発生する。ここを正しく区別できれば、割増賃金の払い間違いはぐっと減らせます。就業規則に根拠を定め、振替は事前・同一週内を意識して、トラブルのない運用を目指してもらえればと思います。




