人事異動の種類(配置転換・転勤・出向・転籍)と違い

会社で働いていると、「来月から別の部署へ」「他県の支店へ転勤」「グループ会社へ出向」といった話が出てきます。こうした人事異動には、配置転換・転勤・出向・転籍といった種類があり、それぞれ意味やルールが違います。

私も総務で異動の手続きを担当しますが、「出向と転籍ってどう違うんだっけ?」と最初は混乱しました。言葉が似ているので、違いを整理しておかないと、手続きや本人への説明でつまずいてしまいます。

今回は、人事異動の種類と、それぞれの違いをわかりやすく整理しました。異動の基本を押さえたい総務・人事の方の参考になればうれしいです。

タップできるもくじ

人事異動とは?目的と種類

まずは、人事異動がどういうもので、何のために行うのかを整理しておきましょう。

人事異動の意味と目的

人事異動とは、従業員の職務・役職・勤務地などを変えることをいいます。目的はさまざまで、適材適所による人材の活用、社員の育成、組織の活性化、欠員の補充などがあります。同じ人がずっと同じ仕事をするのではなく、異動を通じて経験を広げ、組織全体の力を高めるねらいがあります。

社内の異動と社外への異動がある

人事異動は、大きく「社内での異動」と「社外への異動」に分けられます。社内での異動には配置転換と転勤があり、社外への異動には出向と転籍があります。同じ会社の中で変わるのか、別の会社へ移るのかが、両者の大きな違いです。

税務署の「異動届」とは別物

なお、「異動」という言葉は、税務署に提出する「異動届出書」でも使われますが、こちらは会社の所在地や名称などが変わったときに出す届出のことで、人事異動とは別物です。同じ言葉でも意味がまったく違うので、混同しないようにしましょう。本記事で扱うのは、人の異動である人事異動です。

社内での異動(配置転換・転勤)

まずは、同じ会社の中で行われる異動です。籍は今の会社にあるまま、仕事や勤務地が変わります。

配置転換(職務・部署の変更)

配置転換とは、同じ会社の中で職務や部署が変わることをいいます。たとえば「営業部から総務部へ」「経理の担当から人事の担当へ」といった変更です。勤務地は変わらず、担当する仕事の内容が変わるのが特徴です。社員の育成や、適材適所のために行われます。

転勤(勤務地の変更)

転勤とは、勤務する場所が変わることをいいます。「東京本社から大阪支店へ」といったように、働く場所が変わるのが転勤です。引っ越しを伴うことも多く、本人や家族の生活に大きく影響します。そのため、住宅の手配や転勤手当など、会社側のフォローも必要になります。

職務や勤務地の「変更の範囲」は明示が必要

2024年4月から、労働条件を明示する際に、就業場所や業務の「変更の範囲」も示すことが必要になりました。入社後に配置転換や転勤の可能性がある場合は、その範囲をあらかじめ伝えておく必要があります。後のトラブルを防ぐためにも、採用時の労働条件通知書などで明確にしておきましょう。

社外への異動(出向・転籍)

次は、別の会社へ移る異動です。出向と転籍があり、籍がどうなるかが大きな違いになります。

出向(在籍出向)=元の会社に籍を残す

出向(在籍出向)とは、元の会社に籍を残したまま、別の会社で働くことをいいます。元の会社との労働契約は続いたまま、出向先の指揮命令を受けて仕事をします。グループ会社への応援や、経営支援、社員の育成などの目的で行われます。出向中も元の会社の社員である点がポイントです。

転籍(移籍出向)=元の会社との労働契約を終了

転籍(移籍出向)とは、元の会社との労働契約を終了し、移籍先の会社の社員になることをいいます。籍そのものが移るため、元の会社の社員ではなくなります。労働契約の相手が変わる重大な変更なので、原則として本人の同意が必要です。

出向と転籍の違い比較表

項目出向(在籍出向)転籍(移籍出向)
元の会社の籍残るなくなる
労働契約元の会社と継続移籍先に移る
本人の同意就業規則等の根拠があれば命令可能な場合も原則として必要
元の会社に戻る戻ることが前提のことが多い戻らないのが基本

4つの異動の違いを整理

ここまで見てきた4つの異動を、一覧で整理しておきましょう。違いがひと目で分かります。

種類変わるもの籍・労働契約本人同意
配置転換職務・部署今の会社のまま原則不要(根拠が必要)
転勤勤務地今の会社のまま原則不要(根拠が必要)
出向働く会社元の会社に残る場合により必要
転籍所属会社移籍先に移る原則必要

配置転換と転勤は同じ会社の中での変更、出向は籍を残して別会社で働く、転籍は籍ごと移る、と整理すると覚えやすいです。

異動を行うときの基本的な注意点

異動はトラブルになりやすい場面でもあります。基本的な注意点を押さえておきましょう。

就業規則や雇用契約の根拠が必要

会社が異動を命じるには、就業規則や雇用契約に根拠があることが前提です。「業務の都合により配置転換や転勤を命じることがある」といった定めがあって、はじめて異動を命じられます。根拠がないまま一方的に命じると、無効とされることもあるので注意が必要です。

本人への配慮・事前の説明

異動は、本人の仕事や生活に大きく影響します。とくに転勤や出向は、引っ越しや家庭の事情に関わることもあります。命令するだけでなく、なぜ異動してもらうのかを丁寧に説明し、本人の事情にも耳を傾けることが大切です。納得感を持って異動してもらうことが、その後の活躍につながります。

異動命令がどこまで有効なのか、本人に拒否されたときどう対応するかは、判断に迷う場面が多い部分です。配転命令・出向命令の有効要件と拒否されたときの対応は、別記事で詳しくまとめる予定なので、あわせて確認すると安心です。

まとめ

人事異動には、配置転換・転勤・出向・転籍の4種類があります。配置転換と転勤は同じ会社の中での変更、出向は籍を残して別の会社で働くこと、転籍は籍ごと別の会社へ移ることです。とくに転籍は労働契約の相手が変わるため、原則として本人の同意が必要です。

異動を命じるには、就業規則や雇用契約に根拠があることが前提です。そのうえで、本人への事前の説明と配慮を忘れずに行いましょう。種類ごとの違いを正しく理解しておくことが、スムーズな手続きとトラブル防止の第一歩になります。

よくある質問

配置転換と転勤はどう違うのですか?

どちらも同じ会社の中での異動ですが、変わるものが違います。配置転換は職務や部署が変わるもので、勤務地は変わりません。転勤は勤務する場所が変わるもので、引っ越しを伴うこともあります。「仕事内容が変わるのが配置転換、働く場所が変わるのが転勤」と覚えるとよいでしょう。

出向と転籍の違いは何ですか?

大きな違いは、元の会社に籍が残るかどうかです。出向(在籍出向)は元の会社に籍を残したまま別の会社で働くもので、労働契約は元の会社と続きます。転籍(移籍出向)は元の会社との労働契約を終了し、移籍先の社員になるものです。転籍は労働契約の相手が変わるため、原則として本人の同意が必要です。

出向中の給与や指揮命令はどうなりますか?

出向中は、出向先の指揮命令を受けて仕事をします。給与をどちらの会社が負担するかは、出向元と出向先の取り決めによって異なり、出向元が払う場合、出向先が払う場合、両者で分担する場合などがあります。出向のときは、給与・指揮命令・労働条件などの取り扱いを、出向契約であらかじめ決めておくことが大切です。

異動に本人の同意は必要ですか?

異動の種類によります。配置転換や転勤は、就業規則などに根拠があれば、原則として本人の個別同意がなくても命じられる場合があります。一方、転籍は労働契約の相手が変わるため、原則として本人の同意が必要です。出向は内容によって扱いが分かれます。いずれの場合も、本人への説明と配慮は欠かせません。

社員に異動を断られたらどうすればいいですか?

まずは、断る理由をよく聞くことが大切です。家庭の事情など、配慮すべき事情があるかもしれません。異動命令が有効かどうかは、就業規則の根拠や、本人が受ける不利益の程度などによって判断されます。一方的に押し通すとトラブルになりやすいので、命令の有効要件や拒否されたときの対応は、別記事もあわせて確認し、慎重に進めましょう。

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