事務所移転時の社内、行政、社外手続きについて

会社の事務所移転には、法務局・税務署・年金事務所など複数の行政手続きと、社内・取引先への通知が必要です。提出期限が5日・10日・2週間と短いものも多く、順序を誤ると二度手間になります。

本記事では、総務・経理担当者が実務で使える提出書類・期限・順序をまとめます。

(行政許認可や事業内容等によって各社若干異なる点を踏まえて読んでください)

【この記事でわかること】

  • 事務所移転で必要な行政手続き12種類の提出先・期限一覧
  • 社内決定から引越し完了までの作業順序(10ステップ)
  • 管轄内移転と管轄外移転で異なる添付書類
  • 外部委託したほうがよい手続きの判断目安
タップできるもくじ

社内・外手続き

事務所移転の全体フロー図

会社によりますが、主な移転の流れは次のとおりです。

STEP
事務所移転を社内決定する

取締役会・株主総会などにより、移転に関しての決定を行います。

STEP
新規事務所の契約

事務所とセットで、清掃や管理会社など関連サービスの契約も行います。

STEP
不動産など各種解約
  • ビル・管理会社への連絡(退去半年前など、契約で決まっているケースがほとんどなので早めに)
  • 駐車場の解約
  • 清掃などビル業者
STEP
原状回復、新設工事手配

解約が確定したら、工事業者を手配します。原状回復の範囲・納期・費用見積もりを賃貸借契約書と照らし合わせて確認し、新設事務所側は内装・電気・LAN配線・セキュリティ工事のスケジュールを並行して押さえます。

STEP
社内通知

いつ、どこへ移転するか連絡します。

就業規則や社内ルールの確認も必要です。

STEP
社内情報などの変更

ゴム印、封筒、会社案内などの変更を行います。

定期代などの社員情報も変わります。

STEP
取引先などへの連絡
  • 銀行
  • 営業先
  • レンタル・リース会社
  • 新聞・自販機など業者
STEP
引っ越しに必要な業者や備品等を手配

などで家具などを発注します。オフィスチェア・デスク・収納棚・OAタップなど、入居日までに納品が間に合うよう逆算して発注しましょう。

STEP
引越しなど

引っ越し当日は、鍵・セキュリティカード・駐車証の返却、ビル管理会社との退去立会い確認、消防設備の点検引き継ぎを行います。梱包資材は「」などで事前に数量を確保しておくと当日スムーズです。

手続きの準備

各種書類の申請の際に、必ず、必要なのが次の情報・書類です。

  • 変更(異動)日
  • 引っ越し日
  • 商業登記簿謄本

商業登記簿謄本は、ほぼすべての行政手続きで添付が求められます。法務局のネット申請(オンライン申請)を使えば窓口に行かずに取得できるので、部数を余裕をもって取得しておくと効率的です。

行政手続き

行政手続きは、官庁の管轄の内外で提出書類が異なるので注意が必要です。

年金機構など異動後5日以内など急ぐケースもあるので事前準備が必要です。

順番は、ほぼすべての行政手続きで謄本がいるので法務局が1番、その次年金事務所と続きます。

行政手続き書類一覧表

(書類名をクリックすると下の詳細ページへショートカットできます)

提出先書類名提出期限
法務局本店移転登記申請書2週間以内
労働基準監督署労働保険名称、所在地等変更届10日以内
ハローワーク雇用保険事業主事業所各種変更届10日以内
変更前の年金事務所適用事業所名称/所在地変更(訂正)届5日以内
異動前の税務署異動届出書速やかに
異動前の税務署給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出1カ月以内
異動前の税務署個人事業の開業届出・廃業届出等手続1カ月以内
市区町村/都道府県地方税関係(各自治体による)自治体による
警察署保管場所届出手続所定期限
郵便局転居届随時
消防署防火・防災管理者選任(解任)届出書多くは10日以内

法務局・本店移転 管轄内で移転

提出先・窓口本店管轄登記所
提出書類本店移転登記申請書
提出期限移転日から2週間以内
添付書類株主総会議事録
株主一覧
取締役会議事録又は取締役決定書
(一部例外あり)
リンク法務局「本店移転の登記をしたい方」

法務局・本店移転 管轄外に移転

提出先・窓口変更前の本店管轄登記所
提出書類本店移転登記申請書
提出期限移転日から2週間以内
添付書類本店移転登記申請書(移転前の法務局提出分)
本店移転登記申請書(移転後の法務局提出分)
株主総会議事録
株主一覧
取締役会議事録又は取締役決定書
印鑑届書
(一部例外あり)
リンク法務局「本店移転の登記をしたい方」

労働保険「労働保険名称、所在地等変更届」

提出先・窓口労働基準監督署又は公共職業安定所
提出書類労働保険名称、所在地等変更届
提出期限変更のあった日の翌日から10日以内
添付書類

移転する事務所が形だけなどで従業員の採用がないなど関係成立していない場合は、処理は不要です。

雇用保険関係「雇用保険事業主事業所各種変更届」

提出先・窓口ハローワーク
提出書類雇用保険事業主事業所各種変更届
提出期限変更のあった日の翌日から10日以内
添付書類・「労働保険名称、所在地等変更届」事業主控
・登記事項証明書、事業許可証、他の行政機関への提出済書類(控)等、変更の事実が確認できる書類

移転する事務所が形だけなどで従業員の採用がないなど関係成立していない場合は、処理は不要です。

年金事務所「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」

届出が必要な場合所在地・名称変更時など
提出先変更前の年金事務所
提出書類適用事業所名称/所在地変更(訂正)届
提出期限事実発生から5日以内
添付書類法人の場合・・・法人(商業)登記簿謄本
個人事業所の場合、所在地変更・・・事業主の住民票
その他の備考管轄内か外で届出用紙が異なるので注意
詳細記入例・詳細ページ

税務署「異動届出書」

届出が必要な場合法人の所在地・名称変更時など
提出先異動前の税務署
提出書類異動届出書
提出期限速やかに
添付書類特にありません
その他の備考税務署へは「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も提出要
詳細記入例・詳細ページ

税務署「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」

届出が必要な場合開設、移転又は廃止した時など
提出先異動前の税務署
提出書類給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
提出期限移転の日から1カ月以内
添付書類特にありません
その他の備考税務署へは「異動届出書」も提出要
詳細記入例・詳細ページ

税務署「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

届出が必要な場合個人事業主が開設、移転又は廃止した時など
提出先移転前の税務署
提出書類個人事業の開業届出・廃業届出等手続
提出期限移転の日から1カ月以内
添付書類本人確認書類の提示又は写し

市区町村・都道府県(地方税関係)

市区町村(市税事務所)・都道府県(県税事務所)の届出は、全国共通のフォーマットがなく自治体ごとに様式・ルールが異なります。

主に次のような税目の事業所所在地変更申請が必要です。

  • 市区町村:法人市民税、固定資産税、特別徴収など
  • 都道府県:法人税(法人都道府県民税)、法人事業税など

書類の名称は「法人、事務所の異動届」「特別徴収義務者所在地変更届」など様々です。課税課ごとに書類が別々のケースが多いので、事前に自治体HPを確認してください。

【地方税関係の共通ポイント】

  • 税務署と違い、転居元と転居先の両方で申請が必要
  • 添付書類は自治体により異なる(謄本のみ/定款も必要など)
  • 提出期限も自治体ごとに異なるため、移転決定後すぐに各自治体に確認する

警察署「保管場所届出手続」

届出が必要な場合車の保管場所、所有者の住所を変更した場合
(一部例外あり)
提出先警察署
提出書類自動車保管場所届出書
提出期限所定期限
添付書類申請様式による
リンク警視庁「保管場所届出手続」

法人で車両を保有している場合は、保管場所届出とあわせて自動車保険の契約住所変更も忘れないようにしましょう。法人向け自動車保険を比較するなら「」のような一括見積サービスも便利です。

郵便局「転居届」

届出が必要な場合会社等が移転する場合
提出先郵便局
提出書類転居届
提出期限随時
添付書類会社との関係が分かるもの(例:社員証、各種健康保険証など)
リンク郵便局「会社、団体等が転居する場合の手続

消防署「防火・防災管理者選任(解任)届出書」

届出が必要な場合事務所移転(防火管理者が必要な場合)
提出先消防署
提出書類防火・防災管理者選任(解任)届出書
提出期限多くが移転後10日以内
添付書類多くが防火・防災管理 講習修了証
詳細記入例・詳細ページ

消防署関係は、各市区町村の条例等で決まっているケースが多いため、詳細は各市区町村・消防署へお尋ねください。

事務所移転まとめ

事務所移転手続きで担当者が押さえるべきポイントは次の3つです。

【担当者が押さえる3ポイント】

  • 期限:年金5日/労保・雇保10日/登記2週間/給与事務所1カ月の順で厳しい
  • 順序:商業登記(法務局)を最優先し、取得した登記簿謄本で他の申請を進める
  • 外部委託:登記は司法書士、税務申告関連は税理士への委託が効率的。社内で抱え込みすぎない

総務などの社内担当者だけで、全て処理するのはしんどいので、取引のある司法書士や税理士などに一部手続きを外部委託するのも手です。

また、移転年には他の法改正対応と重なることも多いため、2026年総務・経理・労務の法改正スケジュールもあわせて確認しておくと、年間の業務計画を立てやすくなります。

よくある質問

事務所移転の手続きは何から始めればよいですか?

社内決定(取締役会・株主総会)を済ませてから、新事務所の契約と旧事務所の解約予告を並行で進めます。行政手続きは登記完了後にまとめて処理すると謄本取得の手間が減ります。

管轄外へ移転する場合、追加で必要な書類はありますか?

法務局の本店移転登記申請書を、移転前と移転後の2通分作成し、変更前の本店管轄登記所に合わせて提出します。あわせて印鑑届書の提出も必要になるケースが多いため、事前に管轄登記所に確認してください。

登記変更前に他の届出を済ませてもよいですか?

年金事務所(5日以内)など期限が短いものは、登記完了を待てないケースもあります。その場合は「登記申請中」である旨を添えて先行提出し、登記完了後に登記簿謄本を追加提出する扱いとなる自治体・役所もあります。必ず事前に担当窓口に確認してください。

市区町村・都道府県の地方税手続きで注意することは?

税務署と違い、転居元と転居先の両方に届出が必要です。様式も自治体ごとに異なるので、各自治体のホームページから最新の様式をダウンロードして使いましょう。

外部委託を検討すべき手続きはどれですか?

登記関連は司法書士、税務申告関連は税理士に委託するケースが一般的です。社内工数と外注費を比較して、期限が厳しい手続きや社内に知見がない領域を優先的に委託すると効率的です。

届出を1つ忘れてしまった場合はどうなりますか?

気づいた時点ですぐに提出しましょう。登記懈怠は過料の対象となる可能性があります。労働保険・雇用保険・年金関係は期限後でも受け付けてもらえることが多いですが、行政処分や調査の対象になるケースもあるため、遅延理由を添えて早めに窓口に相談してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
タップできるもくじ