会社設立時の税務書類の中で、いちばん期限がシビアで、いちばん出し忘れの実害が大きいのが「青色申告の承認申請書」です。
法人設立届出書は遅れてもペナルティなしですが、こちらは期限を1日でも過ぎると設立1期目が白色申告で確定します。1期目の赤字を翌期以降に繰り越せなくなるので、数十万円〜数百万円単位で損をすることもあります。
今回は、法人の青色申告の承認申請書について、期限の数え方と書き方を、実際の様式(国税庁)に記入した記入例つきでまとめました。
設立したばかりの会社は、この記事の期限の章だけでも先に確認してください。
青色申告の承認申請書とは
法人税の申告には白色と青色があり、青色で申告するには事前に税務署長の承認を受ける必要があります。その申請書がこの書類です(法人税法第122条)。
青色申告の主なメリットは次のとおりです。
- 欠損金の繰越控除:赤字を最大10年間繰り越して将来の黒字と相殺できる
- 欠損金の繰戻し還付:中小企業は赤字を前期の黒字とぶつけて法人税の還付を受けられる
- 少額減価償却資産の特例:中小企業者等は30万円未満の資産を一括費用化できる(年300万円まで)
- 特別償却・税額控除:設備投資や賃上げ関係の優遇税制の多くが青色限定

とくに設立1期目は赤字になりやすいので、欠損金の繰越だけでも申請する価値は十分です。実務上は「全法人が出すもの」と思って差し支えありません。
【参考】欠損金繰越の金額インパクト
① 設立1期目:赤字300万円 / 2期目:黒字500万円 と仮定
② 青色なら:2期目の課税所得は500万円−300万円=200万円に圧縮
③ 白色なら:1期目の赤字は切り捨てられ、2期目は500万円まるごと課税。実効税率を仮に25%とすると約75万円の差になる
提出期限(ここだけは絶対に守る)
新設法人の期限は、次の2つのうち早い方の前日です。
- 設立の日(登記の日)以後3か月を経過した日
- 設立第1期の事業年度終了の日

【例】期限の計算
① 4月10日設立・3月決算 → 3か月経過日(7月10日)の方が先 → 期限は7月9日
② 12月20日設立・1月決算 → 第1期の終了日(1月31日)の方が先 → 期限は1月30日。設立から1か月ちょっとしかない
②のように、設立日と決算月が近い会社は期限が極端に短くなります。「3か月あるから大丈夫」と思い込まず、必ず自社の第1期終了日と比べてください。
なお、既存の法人が白色から青色に切り替える場合は、適用したい事業年度開始の日の前日までに提出します。
青色申告の承認申請書の記入例・書き方
令和8年6月1日設立・3月決算の会社が、第1期から青色申告をしたいケースで記入例を作りました。国税庁が配布している現行様式(様式ID NTA1HOZ280010050)にそのまま記入しています。

上半分の法人名・所在地・代表者などは法人設立届出書と同じ内容を書くだけなので、迷うところはありません。新設法人が実際に考えて書くのは、次の3か所だけです。

適用開始の事業年度(自・至)
「(自)元号 年 月 日」「(至)元号 年 月 日」の欄(N01・N02)には、青色申告を始めたい事業年度を書きます。新設法人なら設立日から第1期の決算日までです(記入例では 自 令和8年6月1日 / 至 令和9年3月31日)。
1期目の開始日は定款上の期首(例:4月1日)ではなく設立日になる点に注意してください。ここを期首で書いてしまうと、設立日から期首までの期間が申請の対象から外れてしまいます。
該当する項番に「1」を記載する欄
様式の中段に「1 該当する項番に「1」を記載の上、該当の年月日等を記載してください。」という表があり、項番1〜6の長い条文が並んでいます。ここで手が止まる人が多いのですが、新設法人が使うのは項番2だけです。
項番2は「この申請後、青色申告書を最初に提出しようとする事業年度が設立第一期等に該当する場合には…その設立の日」という内容です。右側の「該当の場合に「1」を記載」の列に「1」と書き、その右の元号・年・月・日に設立登記の日を記入します。
項番1・3〜6は、過去に青色申告を取り消された場合や連結納税(令和2年旧法人税法)がらみのケースです。新設法人には関係がないので、すべて空欄のままで問題ありません。
参考事項(帳簿組織の状況)
下段の「2 参考事項」は3つの小欄に分かれています。順に見ていきます。
「(1) 帳簿組織の状況」は、伝票又は帳簿名/左の帳簿の形態/記帳の時期の3列です。帳簿名には実際に使う帳簿を書きます。会計ソフトを使う前提なら、仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳あたりを並べておけば十分です。
「左の帳簿の形態」は、記載要領上は「3枚複写伝票」「大学ノート」「ルーズリーフ」「装丁帳簿」といった物理的な形態を書く欄です。紙の帳簿を前提にした古い書きぶりですが、会計ソフトで記帳するなら「会計ソフト」と書けば通ります。「記帳の時期」は「毎日」「1週間ごと」「10日ごと」のように書きます。
「(2) 特別な記帳方法の採用の有無」は、有無を◯×で答える欄ではありません。該当する番号を書く欄で、欄の右に「1:伝票会計採用 2:電子計算機利用」と印字されています。会計ソフトで記帳するなら「2」と書きます(どちらにも当たらなければ空欄)。
「(3) 税理士が関与している場合におけるその関与度合」は、顧問税理士がいる場合に「総勘定元帳の記帳から一切の事務」のように具体的に書きます。自社で記帳するなら空欄です。いちばん下の「税理士署名」欄は、申請書を税理士が作成したときにその税理士が署名する欄なので、自分で作るなら空欄のままにします。
参考事項の欄は審査で厳しく見られる部分ではないので、神経質になる必要はありません。「ちゃんと帳簿を付ける体制があります」と伝われば十分です。
様式のダウンロードと提出方法
様式は国税庁の「C1-19 青色申告書の承認の申請」ページからダウンロードできます。同じページに記載要領のPDFも置いてあるので、迷ったらそちらも合わせて開いてください。添付書類はありません。
提出は税務署窓口・郵送・e-Taxのいずれでも可能です。令和7年1月から控えへの収受日付印は廃止されているので、提出記録は控えのコピー+提出日メモ(またはe-Taxの受信通知)で残してください。期限ギリギリの郵送は、通信日付印(消印)が期限内であればセーフです。
承認の通知は来ない(みなし承認)
申請後、税務署から「承認しました」という通知は基本的に届きません。青色申告書で申告しようとする事業年度終了の日までに承認も却下もされなければ、その日に承認があったものとみなされます(中間申告書を提出すべき法人は、その事業年度開始の日以後6か月を経過する日)。

「何も連絡が来ないけど大丈夫?」と不安になりますが、それが正常です(最初は私も税務署に電話で確認してしまいました)。設立1期目は前期がないので中間申告の義務もなく、判定日は第1期の決算日そのものになります。
期限を逃してしまったら
残念ながら、新設法人の期限の救済は原則ありません。1期目は白色申告になります。
その場合は、第2期の開始日の前日までに申請して2期目から青色にします。1期目の決算日を過ぎてから気づいたケースでは、2期目の期限も同時に過ぎていないか、すぐに確認してください。
1期目が黒字見込みで影響が小さいこともありますが、繰戻し還付や少額減価償却の特例も使えないので、いずれにせよ2期目からの切り替えは早めに動きましょう。
まとめ
- 青色申告は実質全法人必須。欠損金10年繰越・繰戻し還付・30万円未満の即時償却などメリット大
- 新設法人の期限は「設立3か月経過日」と「第1期終了日」の早い方の前日。決算月が近い会社は特に注意
- 新設法人が考えて書くのは、適用開始事業年度(自=設立日)・項番2への「1」と設立の日・参考事項の3か所だけ。添付書類なし
- 「特別な記帳方法の採用の有無」は有無ではなく番号を書く欄。会計ソフトなら「2」
- 承認通知は来ない(みなし承認)。提出記録は自分で残す
- 期限を逃したら1期目は白色確定。すぐ2期目分を申請する
青色申告の承認申請Q&A
- 個人事業の「青色申告承認申請書」とは別物?
-
別物です。個人(所得税)には65万円控除などの個人版青色申告があり、様式も期限も異なります。法人成りした場合、個人時代の青色承認は法人に引き継がれないので、法人として改めて申請が必要です。
- 青色申告だと帳簿付けが大変になる?
-
法人はもともと複式簿記での記帳が前提なので、白色でも青色でも実務の負担はほぼ変わりません。会計ソフトで普通に記帳していれば青色の要件は満たせます。「大変になるから白色で」という判断は法人では損なだけです。
- 法人名は「株式会社」まで書く?
-
この様式には組織区分のコード欄がないので、「総務経理マスター株式会社」のように法人格を含めたフルネームで書きます。法人設立届出書のようにコード欄がある様式では法人格を除いて書くので、書類ごとに扱いが違う点に注意してください。
- 一度承認されたら、ずっと青色のまま?
-
原則はそのまま続きますが、取り消されることがあります。代表的なのは2事業年度連続で期限内に申告しなかった場合や、帳簿の備付け・保存に重大な不備がある場合です。取り消されると欠損金の繰越などが使えなくなるので、期限内申告は死守してください。
- 設立1期目が黒字見込みでも出すべき?
-
出すべきです。黒字でも少額減価償却資産の特例や各種税額控除は青色限定ですし、将来赤字が出たときの繰越・繰戻しの保険にもなります。出さない理由が見当たらない書類です。
- 電子帳簿保存やe-Taxとの関係はある?
-
青色申告の承認自体に電子帳簿保存は不要です(個人の65万円控除の要件と混同されがちですが、あれは所得税の話です)。法人は普通に会計ソフトで記帳し、申告をe-Taxで行えば問題ありません。




