会社のクルマまわりの管理は、総務の仕事の中でも「事故が起きたときの会社のダメージ」が突出して大きい分野です。
社用車そのものの管理に加えて、社員のマイカー通勤・マイカーの業務使用をどこまで認めるかも、規程で線を引いておかないと、いざというとき会社の責任範囲が際限なく広がります。
今回は、社用車管理の基本と、マイカー通勤規程に入れるべき条項をまとめました。アルコールチェック義務化(令和5年12月〜)にも触れています。
社用車管理の基本

車両台帳と期限管理
車両ごとに台帳を作り、期限もの(車検・自賠責・任意保険・点検)を一覧管理します。
- 車両情報:ナンバー・車台番号・購入/リース区分・使用部署
- 車検満了日・法定点検の時期
- 自賠責・任意保険の満期日と補償内容(対人無制限・対物の額)
- 運転者の範囲(誰が運転してよい車か)・鍵の保管場所
車検切れ・保険切れでの運行は一発アウトの法令違反なので、期限の60日前にアラートが出る仕組み(カレンダー登録で十分)を必ず作ってください。
安全運転管理者の選任が必要な会社

次のどちらかに当てはまる事業所は、安全運転管理者の選任と公安委員会への届出(選任から15日以内)が義務です(道路交通法第74条の3)。
- 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用
- その他の自動車を5台以上使用(自動二輪は1台を0.5台で計算)
20台以上では副安全運転管理者も必要になります。「営業車4台だから対象外」と思っていたら、役員車やトラックを足すと5台だった、というパターンがあるので台数は正確に数えてください。選任を怠ると罰則(50万円以下の罰金)もあります。
アルコールチェックは検知器で・記録1年保存
安全運転管理者の選任事業所では、運転前後の酒気帯び確認が義務化されています。
- 令和4年4月〜:目視等での確認+記録の1年保存が義務化
- 令和5年12月〜:アルコール検知器を用いた確認+検知器の常時有効保持が義務化
白ナンバー(自家用)の会社も対象です。直行直帰や出張先での運転は、携帯型検知器+電話やカメラ越しの確認でも認められています。記録は日付・運転者・確認方法・酒気帯びの有無などを残し、1年間保存します。
事故が起きたときの初動を決めておく
「負傷者の救護→警察へ通報→会社へ報告→保険会社へ連絡」の順番を運転者全員に周知し、車内に連絡先カードを置いておきます。
その場での示談の約束は絶対にしないこと、軽微な物損でも必ず警察と会社へ報告すること(報告漏れは保険が使えなくなる原因)も、規程と教育で徹底しておきたいポイントです。
マイカー通勤規程の作り方

なぜ規程が必要?(会社の責任の話)
純粋な通勤中のマイカー事故は、原則として本人の責任です。しかし、マイカーを業務に使わせていた(または黙認していた)場合、会社が使用者責任(民法第715条)や運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)を問われることがあります。
つまりマイカー通勤規程の核心は、「業務使用を認めるのか禁止するのか」をはっきりさせ、認める範囲には保険の網をかけることにあります。
規程に入れるべき条項
- 許可制:申請書+免許証・車検証・保険証券の写しで会社が許可する
- 任意保険の加入条件:対人無制限・対物○○万円以上など最低ラインを指定
- 年1回の更新確認:免許・保険の有効性を毎年確認する(更新時期の申告義務)
- 業務使用の可否:原則禁止か、許可制で認めるか(認めるなら会社の保険・手当の扱いも)
- 駐車場所・通勤経路の指定、事故時の報告義務
- 違反時の許可取消し(飲酒運転・免停・保険切れなど)
マイカー通勤者が多い地方の会社ほど、この規程が「あるかないか」で事故時の明暗が分かれます。まだない会社は、雛形からでもいいので早めに整備してください。
通勤手当(ガソリン代)の非課税限度額
マイカー通勤の通勤手当は、片道の通勤距離に応じた非課税限度額が決まっています(例:片道10km以上15km未満で月7,100円など)。限度額を超えて支給した分は給与として課税されます。
距離区分ごとの金額は国税庁のタックスアンサー(No.2585)で確認できます。ガソリン単価ベースで計算する会社も、結果がこの非課税枠に収まっているかのチェックは給与担当の仕事です。
まとめ
- 社用車は車両台帳で期限もの(車検・保険・点検)を一元管理。期限アラート必須
- 11人乗り1台または5台以上で安全運転管理者の選任・届出が義務
- アルコールチェックは検知器使用+記録1年保存(令和5年12月〜・白ナンバーも対象)
- マイカー通勤は許可制+任意保険の最低ライン+年1更新確認を規程化する
- マイカーの業務使用を認めるかどうかが会社責任の分かれ目。曖昧な黙認が一番危ない
社用車・マイカー通勤のQ&A
- 社用車の私的利用(通勤・休日利用)は認めていい?
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認めること自体は可能ですが、通勤利用は現物給与(経済的利益)の課税問題、休日利用は事故時の保険適用・会社責任の問題が出ます。認めるなら範囲と条件を規程で明確にし、保険会社にも使用実態を伝えておいてください。
- アルコールチェックの記録は紙でもいい?
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紙でも問題ありません(様式の指定もありません)。日付・確認者・運転者・確認方法・酒気帯びの有無・指示事項などを記録し1年保存します。台数が多いならクラウドの記録アプリを使うと管理が楽になります。
- レンタカーやカーシェアの利用にもアルコールチェックは必要?
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安全運転管理者の選任事業所が業務で運転させる場合は、レンタカーでも対象になります。出張時の運転(レンタカー利用)が多い会社は、携帯型検知器の貸出しや遠隔確認のルートを決めておきましょう。
- マイカー通勤の許可条件に「ゴールド免許」を求めてもいい?
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条件設定は会社の裁量なので可能ですが、厳しすぎると実態と乖離して形骸化します。任意保険の補償額・違反歴の申告・年1確認あたりを必須条件にし、免許の色は参考程度にするのが現実的だと思います。
- 通勤途中に寄り道して事故。労災や会社責任はどうなる?
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合理的な経路・方法を逸脱した間の事故は、原則として通勤災害になりません(日用品の購入など日常生活上必要な行為の中断・逸脱は例外的に保護されます)。会社責任も通常は及びませんが、業務使用中の寄り道は別問題になるので、規程で経路の考え方を示しておくと整理しやすいです。




