育児休業から復帰した社員や、家族の介護をしながら働く社員にとって、フルタイム勤務や残業はなかなか負担が大きいものです。そうした社員を支えるのが、「短時間勤務」や「残業(所定外労働)の免除」といった両立支援の制度です。
これらは会社が任意で行う福利厚生ではなく、育児・介護休業法で定められた義務です。しかも令和7年(2025年)の改正で内容が広がったので、総務・人事としては最新のルールを正しく知っておく必要があります。
今回は、育児・介護中の短時間勤務と残業免除について、それぞれのルール、令和7年の改正点、会社の対応まで、担当者向けに整理しました。よかったら参考にしてください。
育児・介護中の短時間勤務・残業免除とは?
まずは制度の全体像をつかみましょう。両立支援の制度は、働く時間を「短くする」ものと、「制限する」ものに分かれます。

短時間勤務制度(所定労働時間の短縮)って何?
短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を短くして働ける制度です。育児の場合は、原則として1日6時間に短縮できる措置を、会社は用意しなければなりません。「時短勤務」と呼ばれることも多い制度ですね。
フルタイムだと保育園の送り迎えが間に合わない、介護で日中に時間が必要、といった社員が、働く時間そのものを短くして両立できるようにするものです。
残業免除(所定外労働の制限)って何?
残業免除は、正式には「所定外労働の制限」といいます。対象の社員から請求があれば、会社は所定労働時間を超える残業をさせてはならないという制度です。働く時間は短くせず、決められた時間できっちり終われるようにするものですね。
短時間勤務までは必要ないけれど、残業があると子どものお迎えや介護に支障が出る、という社員に向いた制度です。
時間外労働の制限・深夜業の制限との違い
両立支援には、ほかにも働く時間を制限する制度があります。混同しやすいので、表で整理しておきます。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 短時間勤務 | 1日の所定労働時間を短くする(育児は原則6時間) |
| 所定外労働の制限(残業免除) | 請求があれば残業をさせない |
| 時間外労働の制限 | 残業を月24時間・年150時間までに制限する |
| 深夜業の制限 | 深夜(22時〜翌5時)に働かせない |
残業を「ゼロにする」のが所定外労働の制限、「一定の上限まで認める」のが時間外労働の制限、という違いです。この記事では、よく使われる短時間勤務と残業免除を中心に見ていきます。
育児中のルール
まずは育児中のルールです。子どもの年齢によって、使える制度が変わります。

短時間勤務(3歳未満は義務・原則6時間)
3歳未満の子を育てる社員が希望した場合、会社は1日原則6時間の短時間勤務ができる措置を用意する義務があります。これは会社の任意ではなく、必ず設けなければならない制度です。
ただし、1日の所定労働時間が6時間以下の社員や、労使協定で対象外と定めた一部の社員(入社1年未満など)は、対象から外すことができます。短縮した時間分の給与を無給とするかどうかは、就業規則で定めます。
所定外労働の免除(残業免除)
残業免除は、これまで3歳未満の子を育てる社員が対象でしたが、令和7年4月の改正で、対象が「小学校就学前まで」に広がりました。請求があれば、会社は対象の社員に所定外労働をさせることができません。
子どもが3歳を過ぎても、小学校に上がるまでは残業免除を請求できるようになったわけです。子育て期間が長い社員にとって、使える期間が延びた重要な改正ですね。
令和7年改正で広がった柔軟な働き方
令和7年の改正では、ほかにも両立支援が広がりました。主な内容は次のとおりです。
- 3歳未満の子を育てる社員向けに、テレワークを選べるようにすることが努力義務になった(令和7年4月)
- 3歳から小学校就学前の子を育てる社員向けに、「柔軟な働き方を実現するための措置」を会社が用意することが義務になった(令和7年10月)
- 子の養育について、社員の意向を個別に聴き、配慮することが義務になった
とくに令和7年10月からの「柔軟な働き方の措置」は、始業時刻の変更・テレワーク・短時間勤務・新たな休暇の付与などの選択肢から、会社が2つ以上を用意し、社員がその中から1つを選んで使える、という仕組みです。自社がどの措置を用意するか、検討しておく必要があります。
介護中のルール
続いて、家族を介護する社員のルールです。育児とは枠組みが少しちがいます。
短時間勤務等の措置
介護の場合は、短時間勤務に限らず、フレックスタイム・時差出勤・介護費用の助成などの中から、会社が選んで措置を用意します。対象家族1人につき、利用を始めた日から3年以上の期間で、2回以上利用できるようにする必要があります。
介護は育児とちがって、いつ終わるか見通しが立ちにくいため、ある程度の期間にわたって繰り返し使えるようになっているのが特徴です。
所定外労働の免除(残業免除)
介護についても、令和7年4月の改正で、所定外労働の免除(残業免除)が新たに設けられました。対象家族を介護する社員が請求すれば、介護が終わるまでの間、会社は残業をさせることができません。
これまで介護には残業免除の制度がありませんでしたが、改正で育児と同じように請求できるようになりました。介護をしながら働く社員にとって、心強い制度の追加です。
会社の対応・就業規則での定め方
最後に、会社としてどう対応すればよいかを見ておきます。

会社は拒否できる?不利益な取り扱いの禁止
短時間勤務も残業免除も、法律で定められた社員の権利です。対象の社員から請求があれば、会社は原則として拒否できません。「人手が足りないから」といった理由で断ることはできません。
また、これらの制度を使ったことを理由に、解雇・減給・不利な評価・降格などの不利益な取り扱いをすることは、法律で禁止されています。安心して使える職場づくりが、会社に求められています。
就業規則・労使協定の整え方
これらの制度は、就業規則(育児・介護休業規程)に定めておく必要があります。対象者・利用できる期間・申請方法・給与の扱いを明記しておきましょう。一部の社員を対象外にする場合は、労使協定の締結が必要です。
令和7年の改正に対応できているか、この機会に規程を点検しておくと安心です。育児・出産にまつわる手続き全体の流れや2025年の改正点は、育児、出産、子育て手続き〜会社事務担当者向け概要編〜2025年育児・介護休業法の改正点も合わせて解説〜でまとめて解説しています。

短時間勤務・残業免除のよくある質問(FAQ)
- 短時間勤務中の給与は減らしていい?
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短くした時間分の給与を支払わない(控除する)ことは認められています。働いていない時間に対しては、ノーワーク・ノーペイの原則で無給とできます。ただし、制度を使ったことを理由に、必要以上に給与や評価を下げると不利益な取り扱いにあたり違法です。あくまで短縮した時間に応じた、合理的な範囲での控除にとどめましょう。扱いは就業規則で明確にしておきます。
- 残業免除と短時間勤務は両方使える?
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はい、別々の制度なので、両方を同時に使うことができます。短時間勤務で1日6時間に短縮したうえで、さらに残業免除を請求して、その6時間を超える残業はしない、という使い方も可能です。社員の事情に合わせて、必要な制度を組み合わせて利用できます。会社はそれぞれの請求に応じる必要があります。
- 残業免除はいつまで請求できる?
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育児の場合、令和7年4月の改正で、小学校就学前の子を育てる社員まで対象が広がりました。それまでは3歳未満が対象だったので、使える期間が延びています。介護の場合は、対象家族を介護している間、請求できます。いずれも1回の請求で1か月以上1年以内の期間を指定し、繰り返し請求することができます。
- パートやアルバイトも対象になる?
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雇用形態にかかわらず対象になります。ただし、1日の所定労働時間が6時間以下の社員は短時間勤務の対象外になるなど、制度ごとに細かい条件があります。また、労使協定で入社1年未満の社員などを対象外と定めている場合もあります。自社の就業規則と労使協定の内容を確認したうえで、対象かどうかを判断しましょう。
- 介護でも残業免除を請求できるようになったの?
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はい、令和7年4月の改正で、介護のための所定外労働の免除(残業免除)が新たに設けられました。これまで介護には残業免除の制度がありませんでしたが、改正により、対象家族を介護する社員が請求すれば、介護が終わるまで残業を免除できるようになりました。就業規則がこの改正に対応しているか、確認しておくとよいでしょう。
育児・介護中の短時間勤務や残業免除は、法律で定められた社員の権利であり、会社は原則として断れません。令和7年の改正で、残業免除の対象が小学校就学前まで広がり、介護にも残業免除が新設され、柔軟な働き方の措置も義務化されました。就業規則が最新の内容になっているかを点検し、社員が育児・介護と仕事を両立できる職場づくりを進めてもらえればと思います。




