事務所の家賃、コピー機のリース料、火災保険、固定資産税。会社を続けていれば、毎月・毎年きまって出ていく経費がいくつもあります。金額が大きいものも多く、どの勘定科目で処理するか、いつの費用にするかで、決算の数字が変わってきます。
これらは似ているようで、科目の使い分けや税務上の扱いに、それぞれクセがあります。なんとなくで処理していると、「これは経費にできない」「この年の費用ではない」と後で指摘されることもあります。
今回は、地代家賃・賃借料・支払保険料・租税公課という4つの固定費系の経費について、それぞれの処理のポイントを経理担当者向けに整理しました。よかったら参考にしてください。
固定費系の経費とは?
まずは全体像から。今回扱う4つの経費に共通する性格をおさえておきましょう。

地代家賃・賃借料・支払保険料・租税公課は、いずれも毎月や毎年、きまって発生する固定費です。売上の増減に関係なく出ていくぶん、金額の見通しは立てやすいのですが、その代わり、契約や納付のタイミングと「いつの費用にするか」がずれやすいという特徴があります。
勘定科目を正しく分けておくと、何にいくらかかっているかがはっきりし、コストの見直しもしやすくなります。似た経費だからとひとまとめにせず、性質ごとに科目を分けるのが基本です。それでは一つずつ見ていきましょう。
地代家賃の処理
まずは地代家賃です。多くの会社で、経費の中でも大きな割合を占める科目です。
地代家賃の対象
地代家賃は、土地や建物を借りるために支払う賃借料を処理する科目です。事務所や店舗の家賃、月ぎめ駐車場の地代、倉庫の賃料などが該当します。「土地・建物の賃料」と覚えておくと、次に説明する賃借料との区別がしやすくなります。
礼金・敷金・保証金の扱い
契約時に払う礼金・敷金・保証金は、家賃と扱いがちがうので注意が必要です。礼金は、20万円未満なら支払った年の費用にできますが、20万円以上だと「繰延資産」として、契約期間(または5年)にわたって少しずつ費用にしていきます。

一方、敷金や保証金は、原則として退去時に返ってくるお金なので、支払った時点では「差入保証金」などの資産として扱い、費用にはしません。ただし、契約上、返還されない部分(敷引きなど)があれば、その部分は礼金と同じように処理します。
前家賃と短期前払費用の特例
家賃は「翌月分を当月末に払う」など、前払いになっていることがよくあります。本来、翌期分の家賃は「前払費用」として資産にし、その期が来てから費用にするのが原則です。ただし、1年以内に役務の提供を受ける前払いについては、支払った時に全額を費用にしてよい「短期前払費用の特例」があります。毎期継続して同じ処理をすることが条件なので、適用するなら使い続けましょう。
賃借料(リース料)の処理
次は賃借料です。地代家賃と混同しやすいので、対象のちがいをはっきりさせておきます。
賃借料の対象
賃借料は、土地・建物以外のものを借りるときの費用を処理する科目です。社用車のレンタル料、コピー機やサーバーのリース料、機械のレンタル料などが該当します。同じ「借りる」でも、土地・建物は地代家賃、それ以外は賃借料、と分けるのが基本です(賃借料の代わりに「リース料」という科目を使う会社もあります)。
リース取引には種類がある
リース取引は、大きく「オペレーティング・リース」と「ファイナンス・リース」に分かれます。前者は通常のレンタルに近く、支払ったリース料を費用にします。後者は、実質的に資産を買ったのと同じとみなされる取引で、資産に計上して減価償却するなど、扱いが変わることがあります。高額なリース契約を結ぶときは、どちらにあたるかを確認しておくと安心です。
支払保険料の処理
続いて支払保険料です。掛捨てか積立かで、処理が分かれるのがポイントです。
掛捨ては費用、積立は資産
支払保険料は、火災保険・自動車保険・賠償責任保険などの保険料を処理する科目です。掛捨ての保険料は、その期間の費用として「支払保険料」で処理します。一方、満期や解約で戻ってくる積立部分がある保険は、その積立部分を「保険積立金」という資産として扱い、費用にはしません。掛捨て部分は費用、積立部分は資産と分けるのが基本です。
期間対応(前払保険料)
保険料は、1年分や数年分をまとめて前払いすることがよくあります。この場合も、翌期以降に対応する分は「前払保険料」として資産にし、期が来てから費用にするのが原則です。なお、家賃と同じく、1年以内のものについては短期前払費用の特例を使える場合があります。長期分の前払いは、きちんと期間で按分しましょう。
租税公課の処理
最後は租税公課です。税金なら何でも経費になる、と思い込みやすいので、ここはとくに注意が必要です。
租税公課の対象
租税公課は、国や地方に納める税金や公的な負担金を処理する科目です。固定資産税・自動車税・印紙税・事業税・不動産取得税などが該当します。「租税」が税金、「公課」が会費や手数料などの公的な負担、というイメージです。
損金にできる税・できない税
注意したいのは、税金の中には経費(損金)にできないものがある点です。代表的なものを表で整理します。

| 損金にできる税 | 損金にできない税 |
|---|---|
| 固定資産税・自動車税・印紙税・事業税・不動産取得税・登録免許税 など | 法人税・住民税(法人税等で処理)・延滞税・加算税・罰金・科料 など |
法人税や住民税は、租税公課ではなく「法人税、住民税及び事業税(法人税等)」という別の科目で処理し、損金にはなりません。また、延滞税や加算税、交通反則金などのペナルティ系も損金にできません。これらを租税公課に混ぜてしまうと、税額計算をまちがえる原因になります。同じ「払った税金」でも扱いが分かれることを、おさえておきましょう。
なお、勘定科目そのものの基本については、勘定科目とは?仕訳や貸借対照表・損益計算書での基本ルールを初心者向けに解説でまとめています。

固定費系の経費のよくある質問(FAQ)
- 家賃を1年分まとめて払ったら全額経費にできる?
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原則は、翌期分にあたる家賃は「前払費用」として資産にし、その期になってから費用にします。ただし、支払日から1年以内に提供を受けるサービスの前払いであれば、「短期前払費用の特例」により、支払った年に全額を費用にできます。この特例は、毎期継続して同じ処理をすることが条件です。今年だけ全額費用、来年は按分、といった使い方は認められないので注意しましょう。
- 敷金は経費になる?
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敷金は、原則として退去時に返ってくるお金なので、支払った時点では経費にならず、「差入保証金」などの資産として処理します。ただし、契約で返還されないことが決まっている部分(敷引きや償却など)があれば、その部分は経費(または繰延資産として償却)になります。契約書で、返ってくる分と返ってこない分を確認したうえで処理しましょう。
- 自宅兼事務所の家賃はどう処理する?
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自宅の一部を事務所として使っている場合は、事業で使っている割合だけを経費にできます(家事按分)。床面積の比率や使用時間など、合理的な基準で按分するのが基本です。たとえば自宅の3割を事務所に使っているなら、家賃の3割を地代家賃として計上する、という考え方です。按分の根拠(面積図など)は、後で説明できるように残しておくと安心です。
- 法人税は租税公課で処理していい?
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法人税や法人住民税は、租税公課では処理しません。これらは「法人税、住民税及び事業税(法人税等)」という専用の科目で処理し、税務上は損金になりません。租税公課に含めてしまうと、利益や税額の計算がずれてしまいます。租税公課に入れてよいのは、固定資産税・自動車税・印紙税・事業税など、損金にできる税金だと整理しておきましょう。
- 延滞税や交通反則金は経費になる?
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なりません。延滞税・加算税といった税金のペナルティや、交通反則金・罰金などは、損金に算入できないと法律で定められています。これらを経費にしてしまうと、税務調査で否認される原因になります。帳簿上は「租税公課」で記録しても問題ありませんが、税金を計算する際には損金から除く必要があります。罰則的な性質のものは経費にできない、と覚えておきましょう。
地代家賃は土地・建物の賃料、賃借料はそれ以外のレンタル・リース、支払保険料は掛捨てと積立で分け、租税公課は損金にできる税とできない税を見分ける。固定費系の経費は、こうした科目ごとのクセをおさえておくと、決算で迷いません。とくに前払いの期間対応と、租税公課の損金算入の可否は、まちがえやすいポイントです。日ごろから科目を正しく分けて、すっきりした帳簿を目指してもらえればと思います。




