変形労働時間制を入れてみよう、と決めても、「で、具体的に何から手をつければいいの?」というところで止まってしまいがちですよね。労使協定や就業規則、労働基準監督署への届出など、やることがいくつもあって、最初はとっつきにくいと思います。
とくに1か月単位と1年単位とでは、必要な手続きや決めておくべきことが少し違います。ここを混同すると、せっかく導入しても要件を満たさず無効になってしまうこともあるので、順番に整理しておきたいところです。
この記事では、1か月・1年単位の変形労働時間制の導入手順と届出の流れを、総務・人事の担当者向けにやさしくまとめてみました。制度の仕組みそのものは別記事で解説しているので、ここでは「導入の実務」に絞って進めていきますね。
変形労働時間制の導入に必要なもの(おさらい)

まず、導入に何が必要かを種類ごとに確認しておきましょう。1か月単位と1年単位で、求められるものが違います。
| 種類 | 必要なもの | 労基署への届出 |
|---|---|---|
| 1か月単位 | 労使協定 または 就業規則等 | 労使協定で定めた場合は必要 |
| 1年単位 | 労使協定(必須) | 必要 |
1か月単位は「労使協定または就業規則」
1か月単位の変形労働時間制は、労使協定を結ぶか、就業規則などにルールを定めるか、どちらかの方法で導入できます。就業規則で定める場合は、常時10人以上の事業場であれば就業規則自体の届出が必要です。労使協定で定めた場合は、その協定を労働基準監督署へ届け出ます。
1年単位は「労使協定」が必須
1年単位の変形労働時間制は、必ず労使協定を結ぶ必要があります。そして、その労使協定は労働基準監督署への届出が必須です。1か月単位より要件が厳しく、決めておくべき事項も多いので、準備には少し時間をみておきましょう。
1か月単位の変形労働時間制の導入手順
まずは比較的シンプルな1か月単位から見ていきましょう。流れは次のとおりです。
制度の対象となる従業員と、1か月以内の変形期間(起算日)を決めます。「毎月1日から末日まで」のように、期間の区切りをはっきりさせます。
変形期間を平均して週40時間以内になるように、日ごと・週ごとの所定労働時間やシフトを設定します。期間中の総労働時間の枠を超えないようにするのがポイントです。
対象者・変形期間・各日各週の労働時間・起算日などを、就業規則または労使協定に定めます。あいまいな書き方だと無効になりかねないので、具体的に記載します。
労使協定で定めた場合は、その協定を所轄の労働基準監督署へ届け出ます。就業規則で定めた場合も、常時10人以上の事業場なら就業規則の届出が必要です。
制度の内容を従業員に周知します。シフト表などで各人の労働時間を事前に知らせ、いつどれだけ働くのかが分かる状態にしておきます。
1年単位の変形労働時間制の導入手順

1年単位は、労使協定の締結と届出が必須です。決めておくことが多いので、ひとつずつ確認していきましょう。
対象者の範囲、対象期間(1か月超〜1年以内)、特定期間(とくに忙しい時期)、労働日と労働日ごとの労働時間、有効期間などを協定で定めます。
対象期間中の労働日と、その日ごとの労働時間をあらかじめ決めます。期間を区分する場合は、最初の区分の労働日・労働時間を定め、残りは各区分開始前に決める方法もあります。
1年単位には、労働日数・1日と1週の労働時間・連続労働日数などに上限があります。設定した内容が上限を超えていないかを必ず確認します。
締結した労使協定を、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。1年単位では、この届出が要件になっているので忘れないようにします。
就業規則にも制度を反映し、従業員へ周知します。年間カレンダーなどで、いつが労働日・休日になるのかを事前に分かるようにしておきます。
1年単位で決めておく上限ルール

1年単位の変形労働時間制には、働かせすぎを防ぐための上限が細かく決められています。主なものを表にまとめてみました。
| 項目 | 上限の目安 |
|---|---|
| 1日の労働時間 | 10時間まで |
| 1週の労働時間 | 52時間まで |
| 労働日数(対象期間3か月超) | 1年あたり280日まで |
| 連続して働かせる日数 | 原則6日まで(特定期間は1週1日の休日が確保できる範囲) |
細かな条件は対象期間の長さなどによっても変わるため、設定の際は最新の基準を確認しておくと安心です。
導入後の運用で気をつけたいこと
所定を超えた分の割増賃金の判定
変形労働時間制でも、あらかじめ定めた労働時間を超えて働かせれば、その分は時間外労働として割増賃金が必要です。日ごと・週ごと・期間全体の3段階で残業を判定することになり、通常より計算が複雑になります。給与計算の担当者と運用ルールをすり合わせておくとよいですね。
中途入社・退職者の賃金清算
1年単位の変形労働時間制では、期間の途中で入社・退職した人について、実際に働いた時間が平均して週40時間を超えていれば、その超過分を清算して支払う必要があります。期間の全期間を通して在籍していない人の扱いは見落としやすいので、退職時の精算ルールも決めておきましょう。
【ポイント】要件を満たさないと制度ごと無効になる
労使協定や届出、労働時間の特定などの要件を満たしていないと、変形労働時間制そのものが無効と判断され、通常どおりの残業代を請求されることがあります。手続きは省略せず、ひとつずつ確実に進めることが大切です。
変形労働時間制の届出に関するよくある質問(FAQ)
- 1か月単位でも労働基準監督署への届出は必要ですか?
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労使協定で定めた場合は、その協定を労働基準監督署へ届け出る必要があります。一方、就業規則で定めて運用する場合は、変形労働時間制としての協定の届出は不要ですが、常時10人以上の事業場であれば就業規則自体の届出が必要です。どちらの方法で導入するかによって扱いが変わります。
- 1年単位は届出をしないとどうなりますか?
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1年単位の変形労働時間制では、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が要件になっています。届出をしていないと制度が有効に成立せず、通常の労働時間制として扱われます。その結果、法定労働時間を超えた分について割増賃金の支払いを求められることがあるため、届出は必ず行いましょう。
- 導入後にシフトを変更できますか?
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原則として、あらかじめ定めた労働日・労働時間を会社の都合で自由に変更することはできません。変形労働時間制は事前に労働時間を特定しておくことが前提の制度だからです。変更の可能性がある場合は、その範囲や手続きを労使協定や就業規則であらかじめ定めておく必要があります。
- 労使協定はどれくらいの期間で結べばいいですか?
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労使協定には有効期間を定める必要があります。1年単位の変形労働時間制の場合は、対象期間に合わせて1年程度とするのが一般的です。有効期間が切れたら、改めて協定を結び直して届け出る必要があるので、更新の時期を忘れないように管理しておきましょう。
- 届出の様式はどこで入手できますか?
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変形労働時間制に関する協定届の様式は、厚生労働省や各労働局のサイトからダウンロードできます。記載例も公開されているので、あわせて参考にするとよいでしょう。様式は改定されることがあるため、提出前に最新のものかどうかを確認してから使うことをおすすめします。
変形労働時間制の導入は、「1か月単位は労使協定または就業規則」「1年単位は労使協定の締結と届出が必須」という違いを押さえ、対象者や労働時間を事前にきちんと特定しておくことがいちばんのポイントです。手続きを省くと制度ごと無効になってしまうので、ひとつずつ確実に進めていきましょう。




