退職証明書は、退職した本人から請求されたときに会社が発行する書類です。転職先から提出を求められたり、離職票が届くまでの間に国民健康保険・国民年金の手続きで使ったりするために必要になります。
ただ、決まった様式が法律で定められているわけではないので、いざ「退職証明書をください」と言われると、何をどこまで書けばいいのか迷いますよね。
しかも、この書類は書けば書くほど親切、というものではありません。本人が請求していない項目を書き足すと、それ自体が労働基準法違反になります。ここが退職証明書のいちばんのクセだと思います。
今回は、退職証明書に書ける5つの項目と項目ごとの書き方、ケース別の記入例、それから請求内容を記録に残すための「退職証明書交付申請書」までまとめました。どちらもテンプレートを用意したので、よかったらご活用ください。
【この記事でわかること】
- 退職証明書に書ける項目は「使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由」の5つだけ
- 本人が請求していない項目は書いてはいけない(労働基準法22条3項)
- 項目ごとの書き方と、自己都合・退職事由のみ・解雇の3ケースの記入例
- 退職証明書・退職証明書交付申請書のテンプレート(Excel・Word)
- 請求できるのは退職後2年が目安。交付しないと罰金の対象になる
退職証明書とは?会社に交付義務がある書類
退職証明書とは、退職した労働者から請求があったときに、在職中の契約内容や退職の事由を会社が証明する書類です。根拠は労働基準法22条1項で、請求された会社には交付する義務があります。
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
労働基準法第22条第1項(e-Gov法令検索)より
会社が発行する書類なので公的な証明書ではありませんが、労働基準法に根拠があるため、「うちは出していません」で通せる書類ではありません。
請求されたら断れるの?
断れません。条文に「遅滞なくこれを交付しなければならない」とあるとおり、交付は義務です。交付しなかった場合は30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法120条1号)。
「遅滞なく」が何日以内なのかは条文に定めがありません。とはいえ、転職先の入社日や国民健康保険の手続きに間に合わせたくて請求してくるケースがほとんどなので、請求を受けたら1週間以内をめどに出したほうがいいと思います。
なお、退職金の計算や離職票の発行を理由に「全部終わってからまとめて」と後回しにすると、本人が困るのはたいてい退職証明書のほうです。ほかの手続きと切り離して先に出してしまうのがいいと思います。
離職票・解雇理由証明書・在職証明書との違いは?
名前が似ていて混同しやすいのですが、発行するところも使い道も違います。
| 書類名 | 発行するところ | 根拠 | 主な使い道 |
|---|---|---|---|
| 退職証明書 | 会社 | 労働基準法22条1項 | 転職先への提出、国民健康保険・国民年金の手続き |
| 解雇理由証明書 | 会社 | 労働基準法22条2項 | 解雇の理由を明らかにする |
| 離職票 | ハローワーク(会社が離職証明書を提出して発行される) | 雇用保険法 | 失業給付(基本手当)の受給手続き |
| 在職証明書 | 会社 | 法律上の義務はなし(任意) | 在職中の証明(保育園の申込み、住宅ローンなど) |

いちばん問い合わせが多いのが、退職証明書と離職票の違いだと思います。失業給付をもらうために必要なのは離職票のほうで、こちらはハローワークが発行するものです。会社は雇用保険・離職証明書(離職票)の書き方のとおり離職証明書を提出する側になります。

離職票は手続きの都合で退職後2週間ほどかかることがあるので、その間のつなぎとして退職証明書を求められることがよくあります。
退職証明書に書ける項目は5つだけ
労働基準法22条1項で証明の対象とされているのは、次の5項目です。この5つ以外のことを証明する書類ではありません。
- 使用期間(いつからいつまで在籍していたか)
- 業務の種類(どんな仕事をしていたか)
- その事業における地位(役職・職位)
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)

請求されていない項目は書いてはダメ
退職証明書でいちばん間違えやすいのがここです。5項目のうち、実際に書いてよいのは本人が請求した項目だけで、請求されていない項目を書くと労働基準法22条3項違反になります。
前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
労働基準法第22条第3項(e-Gov法令検索)より
たとえば本人から「使用期間と業務の種類だけ書いてほしい」と言われたのに、親切のつもりで退職の事由まで書き足す、というのが典型的なアウトです。
というのも、退職証明書は転職先に提出されることが多い書類だからです。退職の事由が書いてあるかどうかで本人の立場が変わることがあるので、何を載せるかは本人が決める、という建て付けになっています。
【実務ではここでつまずきます】
口頭で「退職証明書ください」とだけ言われると、どの項目を請求されたのかが分かりません。そのまま5項目すべて書いた証明書を出してしまうと、本人が望んでいない項目まで入ってしまいます。
これを防ぐために、後半で紹介する「退職証明書交付申請書」で請求項目にチェックを入れてもらう形にしておくと、書きすぎも書き漏れも起きにくくなります。
秘密の記号を入れるのも禁止されています
あわせて、労働基準法22条4項で次の2つが禁止されています。いわゆるブラックリストの禁止といわれる部分です。
- あらかじめ第三者と示し合わせて、本人の就業を妨げる目的で、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する情報をやりとりすること
- 証明書に秘密の記号を記入すること
こちらの違反は罰則も重く、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(労働基準法119条1号)。証明書の隅に社内用の管理記号を入れる運用をしている会社は、意味を勘ぐられないよう見直しておいたほうがいいと思います。
退職証明書の項目別の書き方
ここからは、実際に書く順番に沿って項目ごとの書き方を見ていきます。
宛名・証明文・退職年月日
宛名は退職者本人の氏名に「殿」を付けます。証明文は「以下の事由により、あなたは当社を◯年◯月◯日に退職したことを証明します。」という形が一般的で、東京労働局のモデル様式もこの言い回しです。
退職年月日は、在籍していた最後の日を書きます。月末退職なら「令和8年3月31日」で、翌日の4月1日ではありません(資格喪失日と1日ずれるので、社会保険の書類と並べると混乱しやすいところです)。
①使用期間はいつからいつまで書く?
入社日から退職日までを書きます。「令和3年4月1日から令和8年3月31日まで」のように、年月日まで入れるのが基本です。
試用期間があったり、パートから正社員に雇用形態が変わったりしても、同じ会社に継続して在籍しているなら通しの期間で書いて問題ありません。逆に、いったん退職して再雇用したような場合は期間が切れているので、そこを分けて書くか、通算年数を併記しておくと親切だと思います。
②業務の種類はどこまで細かく書くの?
担当していた職務の内容を書きます。「経理事務」「総務事務」「営業(法人向け)」くらいの粒度で十分です。
転職先に提出する目的で請求されている場合は、職務経歴書と食い違わないほうがいいので、迷ったら本人に「どういう書き方がいいですか」と確認してから書くとスムーズです。異動が多かった人は「営業事務(令和3年4月〜令和5年3月)、経理事務(令和5年4月〜令和8年3月)」のように期間を区切って並べる書き方もあります。
③その事業における地位は役職がない人でも書くの?
役職名や職位を書く欄です。「経理課長」「主任」のように書きます。
役職がない場合は「一般社員」「所属:総務部(役職なし)」といった書き方で問題ありません。空欄のままにすると、何かを隠しているように見えてしまうことがあるので、役職がないなら「なし」と書いたほうがいいと思います。
④賃金はどこまで書けばいい?
いちばん判断に迷うのがこの欄です。条文は「賃金」としか書いていないので、どこまで載せるかは会社の判断になります。
実務では、退職時点の月額の基本給と主な手当を書く形が多いです。「基本給 月額280,000円、役職手当 月額30,000円」のように内訳を分けておくと、転職先が見ても誤解が生まれにくくなります。
【賃金欄で決めておきたいこと】
・時点をそろえる:「退職時点」なのか「退職前3か月の平均」なのかを明記する
・変動するものは分ける:残業代・歩合給・賞与は月によって違うので、月額に混ぜず「賞与 年2回(前年度実績 計◯円)」のように別建てにする
・年収を書くかどうか:本人が転職先の年収交渉で使うことがあるので、書くなら「令和7年 支給総額◯円(源泉徴収票ベース)」と根拠を添える
時給者の場合は「時給1,200円(1日8時間、週5日勤務)」のように、単価と勤務条件をセットで書くと分かりやすくなります。
⑤退職の事由は何と書くの?
東京労働局のモデル様式では、退職の事由が次の7区分に整理されていて、該当する番号に丸を付ける形になっています。自社で様式を作るときも、この区分をそのまま使うのが確実です。
| 区分 | 内容 | あてはまる例 |
|---|---|---|
| ① | あなたの自己都合による退職(②を除く) | 転職、家庭の事情 |
| ② | 当社の勧奨による退職 | 退職勧奨に応じた退職 |
| ③ | 定年による退職 | 就業規則の定年到達 |
| ④ | 契約期間の満了による退職 | 有期契約が更新されず満了 |
| ⑤ | 移籍出向による退職 | グループ会社への転籍 |
| ⑥ | その他(具体的に記載)による退職 | 役員就任、死亡退職など |
| ⑦ | 解雇(別紙の理由による) | 普通解雇、懲戒解雇 |

気を付けたいのが、②の退職勧奨を①の自己都合にまとめてしまうケースです。最終的に本人が退職届を出していても、きっかけが会社からの勧奨なら②になります。ここは失業給付の扱いにも関わるところなので、事実どおりに書くのが安全です。
解雇の場合は⑦を選び、理由を別紙に書きます。ただし、本人が解雇の理由まで請求していないときは「(別紙の理由による)」の部分を二重線で消して、別紙は付けずに交付します(東京労働局のモデル様式にもその注意書きがあります)。
事業主氏名・使用者職氏名・押印
会社名(事業主の氏名または名称)と、証明する人の役職・氏名を書きます。代表取締役名で出す会社と、人事部長名で出す会社の両方があります。
押印は法律上の要件ではありませんが、提出先が受け取る書類なので、社印か代表者印を押しておくのが一般的です。押していないと転職先から「押印のあるものを」と差し戻されることがあります。
退職証明書の記入例
ここからは、実際にどう書くのかを3つのケースで見ていきます。

上の例の様に書いてもらえれば、問題ないと思います。
記入例1:自己都合退職で5項目すべてを請求されたケース
転職先への提出用として、全項目を請求されたパターンです。いちばん多い形だと思います。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 宛名 | 総務 花子 殿 |
| 退職年月日 | 令和8年3月31日 |
| ①使用期間 | 令和3年4月1日から令和8年3月31日まで(5年0か月) |
| ②業務の種類 | 経理事務(売掛金管理、月次決算補助) |
| ③その事業における地位 | 経理課 主任 |
| ④賃金 | 退職時点 基本給 月額280,000円、役職手当 月額20,000円 |
| ⑤退職の事由 | ①あなたの自己都合による退職 |
| 証明日 | 令和8年4月6日 |
| 事業主氏名又は名称 | 株式会社そうむけいり |
| 使用者職氏名 | 代表取締役 総務 太郎 ㊞ |
証明日は、請求を受けて実際に書類を作った日を書きます。退職日をそのまま入れてしまいがちですが、退職後に請求されて作るものなので、退職日より後の日付になるのが自然です。
記入例2:退職の事由だけを請求されたケース
国民健康保険や国民年金の手続きで、退職した事実と日付だけ分かればいい、という場合です。東京労働局のモデル様式は、まさにこの形になっています。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 宛名 | 総務 花子 殿 |
| 退職年月日 | 令和8年3月31日 |
| ①使用期間 | 記載しない(請求がないため) |
| ②業務の種類 | 記載しない(請求がないため) |
| ③その事業における地位 | 記載しない(請求がないため) |
| ④賃金 | 記載しない(請求がないため) |
| ⑤退職の事由 | ①あなたの自己都合による退職 |
空欄になっている項目に、あとから念のためと思って書き足さないようにしてください。ここが22条3項に触れる部分です。様式に欄がある場合は、斜線を引くか「請求なし」と書いておくと、書き忘れと区別できます。
記入例3:解雇のケース(退職証明書の別紙)
解雇した人から、退職の事由として解雇の理由まで請求された場合は、⑦を選んだうえで別紙に理由を書きます。別紙の理由は、東京労働局の退職証明書のモデル様式では次の6区分です。
- ア 天災その他やむを得ない理由(具体的な内容を記入)による解雇
- イ 事業縮小等当社の都合(具体的な内容を記入)による解雇
- ウ 職務命令に対する重大な違反行為(具体的な内容を記入)による解雇
- エ 業務について不正な行為(具体的な内容を記入)による解雇
- オ 相当長期間にわたる無断欠勤をしたこと等勤務不良であること(具体的な内容を記入)による解雇
- カ その他(具体的な内容を記入)による解雇
区分に丸を付けるだけで終わらせず、括弧の中に具体的な事実を書きます。「イ 事業縮小等当社の都合(具体的には、当社が、令和8年2月末をもって◯◯事業部を廃止することとなったこと。)による解雇」という書き方です。
ここに書いた理由は、後から争いになったときに会社側の主張として扱われます。就業規則の条文番号まで添えておくと、根拠がはっきりします。
【解雇予告から退職日までの間なら「解雇理由証明書」】
労働基準法22条2項では、解雇の予告をした日から退職日までの間に請求されたときは、解雇理由証明書を交付することになっています。つまり、まだ在籍している段階での請求です。
退職日を過ぎてから、退職の事由として解雇理由まで請求された場合は、22条1項の退職証明書で対応し、解雇理由を別紙に示します。
なお、解雇理由証明書は退職証明書とは別の様式で、解雇理由の区分も「1 天災その他やむを得ない理由」「5 勤務態度又は勤務成績が不良であること」のように番号と文言が少し違います。どちらも東京労働局が様式を公開しているので、場面に合うほうをそのまま使うのが確実です。

退職証明書・交付申請書のテンプレート(無料ダウンロード)
この記事で説明した項目にそろえたテンプレートを用意しました。Excel・Wordのどちらでも使えます。社名や項目名は自由に書き換えてご活用ください。
退職証明書テンプレート
5項目すべての欄があり、請求がない項目には「請求なし」と入れて使う形にしています。退職の事由は東京労働局のモデル様式と同じ7区分です。
退職証明書交付申請書テンプレート
退職者に、どの項目を証明してほしいのかチェックしてもらうための様式です。これがあると、書きすぎ・書き漏れの両方を防げます。
公式のモデル様式(東京労働局)
公的なモデル様式を使いたい場合は、東京労働局が退職証明書と解雇理由証明書の様式を公開しています。退職の事由に特化した様式で、解雇理由の別紙も付いています。
退職証明書交付申請書の書き方と記入例
退職証明書交付申請書は、退職者が会社に対して「この項目を証明してください」と請求するための社内様式です。法律で決まっている書類ではないので、作るかどうかは会社の判断になります。

質問に答える形で記入すれば、大丈夫です。
なぜ申請書まで作るの?
請求された項目を記録に残すためです。
退職証明書は「請求された項目だけ書く」書類なので、何を請求されたのかが後から分からなくなると困ります。メールや電話だけでやりとりしていると、あとで「賃金は書かないでほしいと言ったのに」といった食い違いが起きたときに、確認しようがありません。
チェック欄のある申請書を1枚もらっておけば、その紙が請求内容の記録になります。作成する側も、チェックの付いた項目だけ埋めればいいので迷いません。
申請書に入れる項目
- 申請日
- 申請者の氏名・生年月日・退職時の所属
- 退職年月日
- 証明を希望する項目のチェック欄(使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由の5つ)
- 解雇の場合に、解雇の理由まで記載を希望するかどうか
- 必要部数
- 受取方法(窓口で受け取る・郵送)と送付先住所
- 連絡先(電話番号・メールアドレス)
使用目的の欄を入れるかどうかは迷うところですが、書いてもらうと賃金欄の粒度を判断しやすくなります。ただ、答える義務があるものではないので「任意」と添えておくのがいいと思います。
申請書の記入例
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 申請日 | 令和8年4月3日 |
| 氏名 | 総務 花子 |
| 退職時の所属 | 経理課 |
| 退職年月日 | 令和8年3月31日 |
| 証明を希望する項目 | ☑使用期間 ☑業務の種類 ☑地位 ☑賃金 ☑退職の事由 |
| 解雇理由の記載 | 該当なし |
| 必要部数 | 1部 |
| 受取方法 | 郵送(〒000-0000 ◯◯市◯◯町1-2-3) |
| 使用目的(任意) | 転職先への提出 |
チェックが付いていない項目は書かない、というルールを社内で共有しておくと、担当者が代わっても運用が崩れません。
請求を受けてから交付するまでの流れ
実際に請求が来たときの進め方です。
電話やメールで請求が来たら、交付申請書に記入して提出してもらいます。急ぎの場合は、メールの本文にチェック項目を書き出して返信してもらう形でもかまいません。
本人以外からの請求には応じられないので、退職者本人かどうかの確認も忘れないようにします。郵送で受け取る場合は、本人確認書類の写しを添えてもらうと安心です。
申請書のチェック欄を見て、書く項目と書かない項目を仕分けます。ここで請求されていない項目まで拾ってしまうと法律違反になるので、いちばん慎重にやるところです。
チェックが1つも付いていない、書き方があいまいといった場合は、埋める前に本人に確認します。推測で埋めないほうがいいと思います。
使用期間は雇用契約書と入退社の記録、賃金は給与台帳や源泉徴収票、退職の事由は退職届や解雇通知書と突き合わせます。
特に退職の事由は、離職証明書に書いた離職理由と食い違うと本人の失業給付に影響します。雇用保険被保険者資格喪失届の記入例で書いた内容と並べて確認しておくと安全です。
テンプレートに記入し、会社名・証明者の役職氏名を入れて押印します。証明日は作成した日を書きます。
作成者以外の人にひと通り読んでもらうと、請求されていない項目が混ざっていないかを客観的に確認できます。給与や退職の事由を扱うので、社内でも見る人を限定しておいたほうがいいと思います。
窓口で渡すか、郵送します。郵送の場合は、退職者の現住所が退職時から変わっていることがあるので、申請書に書かれた送付先を使います。
交付した証明書の控えと申請書は、セットで保管しておきます。再発行を頼まれたときに同じ内容で出せますし、何を請求されて何を書いたかの記録にもなります。

退職時は退職証明書だけでなく、社会保険の資格喪失や源泉徴収票の発行も同時に動きます。全体の順番は退職手続きの流れ(辞表提出から退職日までにやるべきこと)にまとめてあるので、あわせてご覧ください。

退職者への案内文を用意しておくと、そもそも「退職証明書は請求できます」と先に伝えられるので、問い合わせが減ります。文面は退職時の会社から説明文テンプレートを参考にしてください。

給与や社会保険の情報を1か所で管理していると、この突き合わせが楽になります。「マネーフォワード クラウド給与」のようなクラウド給与ソフトを入れている会社だと、退職者の賃金データもそのまま確認できます。
よくある記入ミス・NG例
実務でやりがちなものを挙げておきます。
| やりがちなミス | 何が問題か | どうする |
|---|---|---|
| 請求されていない退職の事由まで書く | 労働基準法22条3項違反 | 申請書のチェック欄どおりに書く |
| 退職の事由を全部「一身上の都合」でそろえる | 退職勧奨や契約期間満了が自己都合になり、本人の不利益になる | 7区分から事実にあてはまるものを選ぶ |
| 賃金欄に何を含めたか書いていない | 転職先が年収と誤解する | 「退職時点の基本給」など時点と範囲を明記する |
| 退職年月日を資格喪失日で書く | 実際の在籍最終日と1日ずれる | 在籍していた最後の日を書く |
| 解雇理由まで請求されているのに、区分に丸を付けただけで理由を書かない | 証明として意味をなさない | 括弧の中に具体的な事実と就業規則の条文番号を書く。逆に解雇理由を請求されていないときは、⑦の「(別紙の理由による)」を二重線で消して別紙を付けない |
| 控えを残さない | 再発行時に内容がそろわない | 申請書とセットで保管する |
もうひとつ気を付けたいのが、在職証明書との取り違えです。「在職していたことの証明がほしい」と言われて在職証明書の様式で出してしまうと、退職の事実が書かれていないので提出先で受け取ってもらえないことがあります。退職した人向けなら退職証明書です。
期限・再発行・電子交付の考え方
いつまで請求できるの?
退職後2年が目安です。
労働基準法115条で、賃金以外の請求権の時効は2年と決められています。退職証明書の請求権もこれに含まれると考えられているので、退職から2年を過ぎた請求には応じる義務がなくなります。
とはいえ、記録が残っていれば出してあげてもかまいません。義務がないだけで、出してはいけないわけではないので。
何度でも請求できるの?
2年の間であれば、その都度請求できると考えておくのが安全です。条文に回数の制限は書かれていません。
1回目は退職の事由だけ、2回目は転職先に出すので全項目、というように、目的が変われば必要な項目も変わります。前回の控えが残っていれば作成の手間はほとんどかからないので、断らずに出したほうがトラブルになりません。
メールのPDFで渡してもいいの?
労働基準法22条には交付方法の定めがないので、電子データでの交付を禁止する規定はありません。ただ、書面での交付が原則だと考えて運用したほうがいいと思います。
というのも、提出先が押印のある原本を求めることが多いからです。PDFで送っても結局「原本を郵送してください」となると二度手間になります。
急ぎで必要と言われたときは、先にPDFをメールで送って、原本を郵送する形にすると両方の希望を満たせます。どの方法で渡したかは、申請書の余白にでも記録しておくといいと思います。
交付しないとどうなるの?
労働基準法22条1項から3項に違反した場合は、30万円以下の罰金の対象です(120条1号)。22条4項の秘密の記号やブラックリストの禁止に違反した場合はさらに重く、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金になります(119条1号)。
また、違反行為をしたのが担当者であっても、会社にも罰金刑が科される両罰規定があります(121条)。「担当者が知らなかった」で会社が免れるわけではないので、社内のルールとして整理しておいたほうがいいと思います。
現実には、いきなり罰金の話になる前に、退職者が労働基準監督署へ相談し、会社に確認や指導が入ることもあります。断る理由もない書類なので、粛々と出すのがいちばんです。
まとめ
退職証明書のポイントを整理しておきます。
- 請求されたら交付する義務がある(労働基準法22条1項)
- 書けるのは使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由の5項目だけ
- 請求されていない項目は書いてはいけない(22条3項)
- 退職の事由は7区分から事実どおりに選ぶ。解雇なら理由を別紙に具体的に書く
- 請求内容は交付申請書で記録に残すと、書きすぎ・書き漏れを防げる
- 請求できるのは退職後2年が目安。交付しないと罰金の対象になる
様式が決まっていない書類なので身構えてしまいますが、やることは「請求された項目を、記録どおりに書く」だけです。テンプレートと申請書をセットで用意しておけば、担当者が代わっても同じ品質で出せると思います。
退職証明書のQ&A
- パート・アルバイトから請求されても出さないとダメ?
-
出す必要があります。労働基準法22条は労働者であれば雇用形態を問わないので、パート・アルバイト・契約社員でも同じです。日雇いや短期の人でも、請求されたら交付します。
- 発行手数料を取ってもいいの?
-
法律上の義務として交付するものなので、手数料を取るのは避けたほうがいいと思います。郵送を希望された場合の送料についても、会社負担にしている会社が多いですね。
- 退職前に「今のうちにほしい」と言われたら?
-
退職証明書は退職したことを証明する書類なので、退職日を過ぎてから交付するのが基本です。在籍中に必要と言われた場合は、在職証明書で対応できないか本人に確認してみてください。
- 転職先の会社から直接請求されたら出していいの?
-
交付する相手は退職した本人です。転職先から直接問い合わせが来ても、本人の同意なしに在籍情報や賃金を答えるのは個人情報の扱いとして問題になります。本人から請求してもらってください。
- 英文の退職証明書を求められたのですが?
-
労働基準法22条は証明する事項と交付義務を定めているだけで、英文で作ることまでは求めていません。海外のビザ申請などで必要になるケースがあるので、対応するかどうかは会社の判断になります。作る場合は、日本語版と内容をそろえておいてください。
- 会社が解散して存在しない場合はどうなるの?
-
交付する主体がなくなるので、退職証明書は出せません。この場合は、年金事務所で発行してもらえる被保険者記録照会や、当時の源泉徴収票、雇用保険の被保険者証などで在籍を示すことになります。
- 記載内容が違うと言われたら書き直すの?
-
原資料と突き合わせて、こちらの誤記だった場合は訂正して出し直します。事実の認識が食い違っている場合(自己都合か会社都合かなど)は、退職届や解雇通知書といった記録に基づいて説明することになります。感情的なやりとりになりやすいところなので、記録で話すのが大事だと思います。





