従業員からマイナンバーを集めるとき、本人確認と並んでもう1つ義務になっているのが「利用目的の明示」です。
「何に使うかを伝えてから集める」——言葉にすると当たり前ですが、伝え方・タイミング・目的の書き方にはコツがあります。
今回は、入社時のマイナンバー取得の流れを、利用目的の明示文例つきでまとめました。
取得の基本フロー

- 利用目的を明示する(入社案内・書面・社内規程など)
- 本人確認(番号確認+身元確認)をして取得する
- 取得記録を残し、安全管理のルールに沿って保管する
- 法定書類の作成・届出に利用する
- 不要になったら(退職+保存期間経過)速やかに廃棄・削除する
タイミングは入社時が基本です。内定段階で集めることも「入社が確実」なら認められますが、急ぐ理由がなければ入社日以降で十分です。
利用目的の明示のしかた

複数の目的をまとめて明示してOK
利用目的は1件ずつ伝える必要はなく、想定される事務をまとめて(包括的に)明示して構いません。逆に、明示していなかった目的に後から使うことはできないので、最初に網羅しておくのがコツです。
【文例】マイナンバーの利用目的
当社は、従業員等のマイナンバー(個人番号)を以下の目的で利用します。
1. 給与所得・退職所得の源泉徴収票作成事務 2. 雇用保険届出事務 3. 健康保険・厚生年金保険届出事務 4. 労働者災害補償保険法に基づく請求に関する事務 5. 国民年金第3号被保険者の届出事務
扶養家族の分も集めるなら、第3号被保険者の届出事務(上記5)まで入れておきます。
明示の方法は3パターン
- 入社時の案内文書・依頼文書に記載して渡す(一番確実)
- 就業規則や「特定個人情報取扱規程」に定めて周知する
- 社内イントラ・掲示で継続的に掲示する
口頭でも法律上は可能ですが、後から「聞いていない」となるので、書面かデータで残る方法にしてください。
取得後の管理ルール(最低限の安全管理措置)

マイナンバー(特定個人情報)には、中小企業でも次のレベルの管理が求められます。
- 取扱担当者を決める(給与担当など必要最小限の人だけが触れる)
- 紙は鍵付きキャビネット、データはパスワード・アクセス制限付きで保管
- 番号を含む書類を机に出しっぱなしにしない・FAXや平文メールで送らない
- 取得・利用・廃棄の記録を残す
- 退職者の番号は、関係書類の法定保存期間が過ぎたら速やかに廃棄・削除
万一漏えいが起きた(重大な事態の)場合は、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務になっています。「鍵のかかる引き出し1段と担当者の限定」から始めれば十分なので、まずルールを文字にすることが第一歩です。
提供してもらえないとき・集まらないとき
従業員がマイナンバーの提供を拒否しても、給与や保険の手続きを止めることはできません。対応は次のとおりです。
- 法律で定められた義務であることを説明して提供を求める
- それでも拒否されたら、求めた経緯(日付・説明内容)を記録する
- 届出書類は番号欄を空欄のまま提出する(受理されます)
提供拒否を理由にした不利益取扱い(雇わない・手当を払わない等)はできません。記録さえ残せば会社の義務は果たしたことになるので、無理強いは不要です。
まとめ
- 取得の流れは「目的明示→本人確認→取得→保管→利用→廃棄」
- 利用目的は源泉徴収・雇用保険・社保・労災・第3号届出まで包括的に明示しておく
- 明示は書面・規程・掲示など記録が残る方法で
- 管理は「担当者の限定+施錠保管+記録」が最低ライン
- 提供拒否されたら経緯を記録して空欄提出。不利益取扱いはNG
マイナンバー取得のQ&A
- 利用目的を後から追加できる?
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当初の目的と相当の関連性がある範囲なら、変更して本人に通知・公表することで追加できます。関連性のない目的への流用はできないので、最初の明示で法定事務を網羅しておくのが安全です。
- 給与計算を外部委託している場合はどうする?
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委託先(給与計算代行・税理士・社労士)へのマイナンバーの提供は、本人の同意なしで可能です。ただし会社には委託先の監督義務があるので、契約書に安全管理の条項を入れ、再委託の有無を確認しておいてください。
- 「特定個人情報取扱規程」は中小企業でも必要?
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従業員100人以下の中小規模事業者には特例があり、必ずしも規程の形でなくてもよいとされています。ただし取扱いの方法を明確化する義務自体はあるので、A4で1〜2枚の簡単な取扱いルールを作っておくのが現実的です。
- 退職者のマイナンバーはいつ消せばいい?
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退職後すぐではなく、番号が載った法定書類の保存期間(扶養控除等申告書は提出期限の翌年1月10日から7年など)が終わってからです。「退職年で区分して保存し、期間経過分を年1回まとめて廃棄」という運用にすると回しやすいです。




