資金繰り表・合計残高試算表の見方と作り方

資金繰り表・合計残高試算表の見方と作り方

「資金繰り表」と「合計残高試算表」。どちらも経理でよく出てくる表ですが、名前が似ていて、最初は役割の違いがつかみにくいと思います。私も担当したての頃は、正直ごちゃ混ぜになっていました。

ざっくり言うと、資金繰り表は「これからのお金」を見る表、合計残高試算表は「これまでの記録」を確かめる表です。向いている方向が反対なんですね。この違いが分かると、どちらをいつ使えばいいのかが見えてきます。

今回は、2つの表の役割から、それぞれの見方・作り方、実務での使い分けまで、経理担当者向けに整理しました。どちらも会社のお金を守るための大事な道具なので、よかったら参考にしてください。

タップできるもくじ

資金繰り表と試算表は何がちがう?

まずは2つの表の役割を整理しておきましょう。似ているようで、見ている時間軸も目的もちがいます。

資金繰り表(未来)と合計残高試算表(過去)の役割の違いを対比した図

資金繰り表=これからのお金の動きを見る道具

資金繰り表は、これから入ってくるお金と出ていくお金を予定として並べ、手元の資金が足りなくならないかを先読みするための表です。未来を見る表なので、予定や見込みの数字も入ってきます。

会社は、利益が出ていても手元のお金が尽きれば立ち行かなくなります。資金繰り表は、そうした事態を前もって防ぐための見張り役ですね。

合計残高試算表=過去の記録が合っているか確認する道具

合計残高試算表は、日々つけてきた帳簿の記録を集計して、借方と貸方の合計が一致しているか、各科目がいくらになっているかを確認するための表です。こちらは過去の記録を確かめる表なので、入る数字はすべて確定したものです。

2つの表のちがいを、表にまとめると次のようになります。

項目資金繰り表合計残高試算表
見る時間軸これから(未来)これまで(過去)
主な目的資金ショートを防ぐ・借入を検討する記帳の確認・費用の把握
入る数字予定・見込みも含む確定した実績のみ
もとになる情報入金・支払いの予定総勘定元帳の記録

合計残高試算表とは?見方と作り方

まずは過去を確かめる側、合計残高試算表から見ていきましょう。「試算表(しさんひょう)」と略して呼ばれることも多い表です。

合計試算表・残高試算表・合計残高試算表の違いと貸借一致の確認を示す図

試算表で何が分かるの?

試算表のいちばんの役割は、帳簿づけが正しくできているかの確認です。複式簿記では、借方の合計と貸方の合計が必ず一致します。試算表を作って、この左右が合っていれば、少なくとも金額の集計はおおむね正しいと判断できます。

逆に左右が合わなければ、どこかで入力ミスや転記もれがあるということです。早い段階で気づければ、決算前にあわてずに直せます。試算表は、記帳の健康診断のようなものですね。

決算前のチェックと科目ごとの費用の把握に使う

試算表は、左右が合っているかを見るだけの表ではありません。実務では、次のような使い方をします。

1つは決算前のチェックです。決算でいきなり数字を固める前に、試算表で各科目の残高を見ておくと、計上もれや科目の入れ間違いに気づけます。決算作業をぐっと楽にしてくれる、下準備の表でもあります。

もう1つは科目ごとの費用の把握です。試算表を見れば、消耗品費や旅費交通費といった費用が、今いくらかかっているのかが科目ごとに分かります。前の月や前年の同じ時期と見比べれば、「今月は通信費が急に増えている」といった使いすぎや異常にも早く気づけます。経営者への報告や、予算の管理にも役立つ表ですね。

合計試算表・残高試算表・合計残高試算表のちがい

試算表には3つの種類があります。名前が似ていますが、何を載せているかで区別します。

種類載せる金額
合計試算表各科目の借方合計・貸方合計を並べる
残高試算表各科目の差引後の残高だけを並べる
合計残高試算表合計と残高の両方を1つの表に載せる

「合計残高試算表」は、合計試算表と残高試算表を1枚にまとめた、いちばん情報量の多い形です。会計ソフトを使っていれば、ボタン1つでこの形を出せることがほとんどなので、種類のちがいは知識として知っておけば十分だと思います。

合計残高試算表の作り方

手作業で作る場合の流れは、次のとおりです。仕組みを知っておくと、ソフトが出した数字も読み解きやすくなります。

  1. 総勘定元帳から、科目ごとに借方合計・貸方合計を集計する
  2. 各科目の借方合計・貸方合計を試算表に書き写す
  3. 科目ごとに借方と貸方の差額を出し、残高欄に書く
  4. 借方合計の総計と貸方合計の総計が一致するか確認する

最後の左右一致の確認がいちばんの山場です。合わなければ、どこかの集計や転記に間違いがあるので、順にたどって探します。会計ソフトなら自動で一致するので、この手間はほぼなくなりますね。

資金繰り表とは?見方と作り方

続いて、これからのお金を読む資金繰り表です。試算表が「決算書を作るための表」だとすれば、資金繰り表は「会社を回し続けるための表」と言えます。

資金繰り表の収入・支出・過不足・翌月繰越の構成を示す図

資金繰り表で何が分かるの?

資金繰り表を見れば、近い将来に手元のお金が足りなくなりそうかどうかが分かります。売上の入金より先に、仕入や給料、税金の支払いがやってくると、利益は出ていても一時的に資金が足りなくなることがあります。これを前もって読むのが資金繰り表の役目です。

資金がショートしそうだと早めに分かれば、入金を急いでもらう、支払いを待ってもらう、借入を検討する、といった手を打つ時間ができます。直前に気づくのと、数か月前に気づくのとでは、取れる対策の幅がまるで違いますね。

借入をするか・返せるかの判断材料になる

資金繰り表は、とくに借入が関係しているときに力を発揮します。すでに借入の返済が毎月発生している会社なら、その返済を続けながら資金が回るのかを資金繰り表で確かめられます。

たとえば、数か月先に資金が足りなくなりそうだと表で見えれば、「今のうちに追加で借りておくか」を前もって検討できます。反対に、資金に余裕が続く見込みなら、「繰り上げて返済しても大丈夫か」の判断材料にもなります。金融機関に追加融資を相談するときも、資金繰り表があると話が早く、説得力も出ます。

資金繰り表の構成(収入・支出・過不足・翌月繰越)

資金繰り表は、月ごとに区切って、お金の出入りを上から順に並べる形が基本です。大まかな構成は次のようになります。

区分内容
前月繰越その月の最初に手元にある資金
収入売上の入金、借入による入金など
支出仕入・給料・経費・税金・借入の返済など
過不足収入から支出を引いた、その月の増減
翌月繰越前月繰越+過不足=次の月へ持ち越す資金

ポイントは、いちばん下の「翌月繰越」です。ここがマイナスになる月があれば、その時点で資金が足りなくなるという警告サインです。何か月か先までこの流れを並べておくと、危ない月が一目で分かります。

資金繰り表の作り方の手順

作り方の流れは次のとおりです。最初はざっくりでかまわないので、まず形を作ってみるのがいいと思います。

  1. 今いくら手元にあるか(前月繰越)を確認する
  2. これから入ってくるお金(入金予定)を月ごとに書き出す
  3. これから出ていくお金(支払い・返済予定)を月ごとに書き出す
  4. 収入から支出を引いて、その月の過不足を出す
  5. 前月繰越に過不足を足して、翌月繰越を出す

入金や支払いの予定は、請求書や支払予定、借入の返済予定表などをもとに拾っていきます。一度ひな形を作ってしまえば、毎月数字を入れ替えるだけで使い回せます。表計算ソフトで作っておくと、更新が楽ですね。

2つを実務でどう使い分ける?

最後に、2つの表をどう使い分けるかを整理しておきます。役割がはっきりすると、毎月の見方が定まります。

月次でセットにして見ると会社のお金が読める

おすすめは、毎月の締めのタイミングで、両方をセットにして見ることです。合計残高試算表で過去の記録と費用の状況を確認し、資金繰り表でこの先の資金の見通しを立てる。過去と未来を両方おさえることで、会社のお金の流れが立体的に見えてきます

試算表で「費用が増えている」と気づいたら、その分は資金繰りにも効いてきます。2つは別々の表ですが、つなげて見ると、原因と結果のようにかみ合うんですね。最初は完璧でなくても、毎月続けるうちに数字の見方が自然と身についていくと思います。

資金繰り表・試算表のよくある質問(FAQ)

資金繰り表と試算表、どちらを先に作るべき?

役割がちがうので、どちらが先ということはなく、両方を毎月作るのが理想です。記帳が固まらないと試算表は作れないので、流れとしては、日々の記帳→試算表で確認→その数字も参考に資金繰り表を更新、という順になります。ただ資金繰り表は予定の表なので、試算表を待たずに先に見込みで作り始めても問題ありません。

小さな会社でも資金繰り表は必要?

規模が小さい会社こそ、資金繰り表があると安心です。手元資金に余裕が少ないと、ひと月の入金の遅れが資金ショートに直結しやすいからです。とくに借入の返済がある場合は、返しながら回るかを確かめる意味でも作っておくと役立ちます。最初は数か月先までの簡単なものでかまいません。

試算表の借方と貸方が合わないときは?

どこかに集計ミスや転記もれがあります。まずは差額がいくらかを確認し、その金額に心当たりのある取引がないか探します。差額が9で割り切れる場合は数字の桁の入れ違い、差額がちょうどある取引の金額と一致する場合は二重計上や計上もれ、といった見当のつけ方もあります。会計ソフトなら自動で一致するので、手作業のときに起きやすいトラブルです。

資金繰り表と損益計算書はどう違う?

損益計算書は「もうかっているか(利益)」を見る表、資金繰り表は「お金が回っているか(資金)」を見る表です。利益とお金は一致しません。たとえば売上を計上しても入金は翌月、ということがあるので、利益が出ていても資金は足りない、という状況が起こります。だから損益とは別に、資金繰り表でお金の動きを見る必要があるんですね。

会計ソフトがあれば試算表は手で作らなくていい?

はい、会計ソフトを使っていれば、日々の仕訳から合計残高試算表は自動で出せます。手で集計する必要はほぼありません。ただ、表の意味や見方を知らないと、出てきた数字を活かせません。作り方の仕組みを一度理解しておくと、ソフトが出した試算表もぐっと読みやすくなると思います。

合計残高試算表は過去の記録を確かめ費用をつかむ表、資金繰り表はこれからの資金を読み借入を判断する表です。向いている方向は反対ですが、月次でセットにして見れば、会社のお金の流れが過去から未来までひとつながりで見えてきます。まずはそれぞれの役割をおさえて、毎月の習慣にしていってもらえればと思います。

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