フレックスタイム制の導入手順と労使協定の届出

フレックスタイム制を導入しよう、と方針が決まっても、「就業規則と労使協定、どっちで何を決めればいいの?」というところでつまずきがちですよね。手続きが2段階になっているので、最初は整理がつきにくいと思います。

とくに清算期間を1か月より長くする場合は、労働基準監督署への届出が必要になるなど、要件が少し変わってきます。ここを取りこぼすと、せっかく導入しても要件を満たさず無効になってしまうこともあります。

この記事では、フレックスタイム制の導入手順と労使協定の届出の流れを、総務・人事の担当者向けにやさしくまとめてみました。制度の仕組みそのものは別記事で解説しているので、ここでは「導入の実務」に絞って進めていきますね。

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フレックス導入に必要な2つの手続き

フレックスタイム制の導入に必要な2つの手続きの図

フレックスタイム制の導入は、大きく分けて「就業規則等での定め」と「労使協定での定め」の2つがセットになっています。どちらか一方では足りないので、まずこの全体像を押さえましょう。

就業規則等で「始業終業を委ねる」旨を定める

まず、就業規則などに「始業・終業の時刻を従業員の決定に委ねる」という旨を定める必要があります。フレックスタイム制は、本人が出退勤の時刻を決められるのが大前提なので、この点を会社のルールとしてはっきりさせておくわけですね。

労使協定で具体的な内容を定める

そのうえで、対象者や清算期間などの具体的な内容を、労使協定で定めます。就業規則が「フレックスを導入する」という枠組みだとすれば、労使協定は「どう運用するか」の中身を決めるもの、とイメージするとわかりやすいです。

労使協定で定める項目

労使協定では、フレックスタイム制の運用に必要な項目を定めます。主なものを整理してみました。

項目内容
対象となる労働者の範囲誰に適用するか(部署・職種など)
清算期間労働時間を通算する期間(最長3か月)と起算日
清算期間中の総労働時間その期間で働くべき所定の合計労働時間
標準となる1日の労働時間有給休暇取得時などに使う基準の時間
コアタイム・フレキシブルタイム設ける場合はその開始・終了の時刻

コアタイムやフレキシブルタイムは、設ける場合に定める項目です。コアタイムを置かない「スーパーフレックス」なら、その旨を整理しておきます。

フレックス導入の手順

フレックスタイム制の導入手順5ステップの図

では、実際の導入の流れを順番に見ていきましょう。

STEP
制度を設計する

対象者・清算期間・総労働時間・コアタイムの有無などを決めます。自社の働き方に合った形を、まずは設計段階でしっかり固めておきます。

STEP
就業規則を改定する

始業・終業の時刻を従業員の決定に委ねる旨を就業規則に定めます。常時10人以上の事業場では、就業規則の変更届を労働基準監督署へ提出します。

STEP
労使協定を締結する

労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結びます。対象者や清算期間など、決めた内容を協定にまとめます。

STEP
必要なら労基署へ届け出る

清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署へ届け出ます。清算期間が1か月以内なら、この協定自体の届出は不要です。

STEP
従業員へ周知する

制度の内容とルールを従業員に周知します。出退勤の記録方法や、コアタイムの扱いなど、運用の決まりも合わせて説明しておくとスムーズです。

清算期間が1か月を超える場合の注意点

フレックスタイム制の清算期間1か月超の注意点の図

清算期間を1か月より長く(最長3か月まで)する場合は、いくつか追加のルールがあります。ここは見落としやすいので、しっかり押さえておきましょう。

労使協定の届出が必須になる

清算期間が1か月以内なら労使協定の届出は不要ですが、1か月を超える場合は労働基準監督署への届出が必須になります。届出をしないと要件を満たさないことになるので、忘れないようにしましょう。

【ポイント】特定の月に偏りすぎないようにする上限がある

清算期間が1か月を超える場合は、1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないようにする、という上限ルールがあります。これを超えた分は、その月の時間外労働として割増賃金が必要になります。特定の月に働きすぎが偏らないようにするための決まりですね。

導入後の運用ポイント

労働時間の集計と過不足の精算

フレックスでは、清算期間ごとに実際の労働時間を集計し、総労働時間との過不足を精算します。超過分は割増賃金として支払い、不足分は翌期間に繰り越すか賃金から控除する形で調整します。日単位ではなく清算期間で通算して残業を判定する点を、給与計算の担当者と共有しておきましょう。

勤怠管理の方法を整える

出退勤がばらばらになるため、勤怠管理の仕組みを整えておくことが大切です。打刻のルールや、コアタイムに勤務しなかった場合の扱いなどを決めておくと、運用が安定します。勤怠管理システムを使うと、清算期間での集計がしやすくなりますよ。

フレックスの届出に関するよくある質問(FAQ)

就業規則と労使協定はどちらも必要ですか?

どちらも必要です。就業規則などで「始業・終業の時刻を従業員の決定に委ねる」旨を定めたうえで、労使協定で対象者・清算期間・総労働時間などの具体的な内容を定めます。就業規則が枠組み、労使協定が運用の中身、という役割分担になっています。一方だけでは要件を満たしません。

労使協定は必ず労働基準監督署へ届け出ますか?

清算期間によって変わります。清算期間が1か月以内の場合は、フレックスの労使協定自体の届出は不要です。一方、清算期間が1か月を超える場合は、労働基準監督署への届出が必須になります。なお、就業規則の変更届は、常時10人以上の事業場であれば別途必要です。

過半数代表者はどう選べばいいですか?

労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、過半数代表者と労使協定を結びます。代表者は、管理監督者でないことと、投票や挙手など民主的な方法で選ばれることが必要です。会社が一方的に指名することはできないので、選出の手続きにも注意してください。

清算期間を1か月超にするメリットは何ですか?

複数の月をまたいで労働時間をならせるため、月による繁閑に合わせた柔軟な働き方がしやすくなります。たとえば忙しい月に多めに働き、落ち着いた月に少なめにする、といった調整が可能です。ただし、月ごとの上限(週平均50時間)や届出といった追加の要件がある点には注意が必要です。

届出の様式はどこで入手できますか?

フレックスタイム制に関する労使協定の届出様式は、厚生労働省や各労働局のサイトからダウンロードできます。記載例も公開されているので、あわせて参考にするとよいでしょう。様式は改定されることがあるため、提出前に最新のものかどうかを確認してから使うことをおすすめします。

フレックスタイム制の導入は、「就業規則で始業終業を委ねる旨を定め、労使協定で中身を決める」という2段階が基本です。とくに清算期間を1か月より長くする場合は、届出と月ごとの上限ルールを忘れないことがポイントになります。手続きをひとつずつ確実に進めて、柔軟な働き方を安心して運用できるようにしていきましょう。

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