「うちの会社、残業は15分単位でしかつかないんだけど…」「タイムカードを押したのに、端数が毎回カットされている気がする」——こんな疑問や不満を感じたことはありませんか?
勤務時間の端数処理は、総務・労務担当者にとっても、従業員にとっても身近でありながら、実は法的リスクの大きいテーマです。「昔からこうだったから」「就業規則に書いてあるから」という理由で、違法な端数処理を続けている企業は少なくありません。
実際に、大手外食チェーンが約16億円の未払い賃金を支払った事例や、大手コンビニチェーンが行政指導を受けた事例もあります。近年は厚生労働省がリーフレットで注意喚起を行うなど、労働時間の端数処理に対する行政の目はますます厳しくなっています。
この記事では、勤務時間の端数処理に関する法的ルール(合法・違法の境界線)を、通達・判例・実際の是正事例をもとに解説します。「1分単位?15分単位?」「切り捨てと切り上げで何が違うの?」「自社の設定はセーフなのか?」——そんな疑問にお答えします。
勤務時間の端数処理とは?「15分単位」「5分単位」は当たり前?
勤務時間の端数処理(いわゆる「丸め処理」)とは、出退勤の打刻時刻や労働時間を計算する際に、分単位の端数を切り捨て・切り上げ・四捨五入などで処理することを指します。
たとえば、18時が定時の会社で18時13分に退勤した場合、端数処理の方法によって以下のような違いが出ます。
| 処理方法 | 退勤時刻の扱い | 残業時間 |
|---|---|---|
| 1分単位(原則) | 18時13分 | 13分 |
| 15分単位で切り捨て | 18時00分 | 0分 |
| 15分単位で切り上げ | 18時15分 | 15分 |
| 30分単位で切り捨て | 18時00分 | 0分 |

かつては多くの企業で15分単位や30分単位の端数処理が「業界の慣行」として行われてきました。紙のタイムカードで勤怠管理をしていた時代には、1分単位の集計が事務的に困難だったという背景もあります。
しかし、勤怠管理システムが普及した現在では、1分単位での計算は技術的にまったく問題ありません。そして法律上、端数の「切り捨て」は原則として違法です。以下で詳しく見ていきましょう。
大原則:労働時間は「1分単位」で計算しなければならない
まず押さえておきたいのは、労働時間は1分単位で計算し、その時間分の賃金を全額支払うという考え方です。5分単位、15分単位、30分単位などで端数を切り捨てることは、原則として労働基準法違反となります。
根拠①:労働基準法第24条「賃金全額払いの原則」
労働基準法第24条は、賃金の支払いについて「通貨払い」「直接払い」「全額払い」「毎月1回以上払い」「一定期日払い」という5つの原則を定めています。このうち端数処理に直結するのが全額払いの原則です。5原則それぞれの中身や例外は賃金とは賃金支払いの5原則をわかりやすく解説にまとめています。

全額払いの原則は、実際に労働した時間に対する賃金を1円も欠けさせずに支払うことを求めるものです。15分単位で端数を切り捨てると、切り捨てられた時間分の賃金がそのまま未払いとなり、この原則に違反します。たとえ1分であっても例外ではありません。
根拠②:労働基準法第37条「割増賃金の支払義務」
労働基準法第37条では、時間外労働・休日労働・深夜労働に対して、所定の割増率を乗じた賃金を支払うことが義務付けられています。端数を切り捨てると、この割増賃金の計算も不正確になり、同条にも違反することになります。
5分・15分・30分単位の「切り捨て」が違法となる理由
上記の法律を踏まえると、1日単位で労働時間の端数を切り捨てることは、いかなる単位(5分・10分・15分・30分)であっても違法です。これは正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員など、すべての雇用形態に適用されます。
【違反した場合の罰則】
労働基準法第24条に違反した場合は「30万円以下の罰金」(同法第120条1号)、第37条に違反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」(同法第119条1号)が科される可能性があります。さらに、労働基準監督署から是正指導・勧告を受ける場合もあります。
例外的に認められる端数処理(昭和63年通達 基発第150号)
「1分単位が原則」とはいえ、すべての端数処理が違法というわけではありません。厚生労働省(当時の労働省)は、昭和63年3月14日付の通達「基発第150号」において、事務処理の簡便化を目的とした一定の端数処理を例外的に認めています。
この通達の内容を押さえておくと、どこまでが認められる端数処理なのかを判断しやすくなります。
1か月単位の時間外労働の端数処理
通達で認められている時間の端数処理は、以下の方法のみです。
【通達の内容(基発第150号)】
1か月における時間外労働、休日労働および深夜業のおのおのの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
ここで重要なポイントは3つあります。
- 「1か月単位」の集計でのみ認められている:1日単位・1週間単位での端数処理は認められていません。日々の労働時間は1分単位で記録する必要があります。
- 「時間外・休日・深夜労働」に限定されている:通常の所定労働時間の端数処理は、月単位であっても認められていません。
- 切り捨てと切り上げはセットにする:30分未満を切り捨てる場合は、30分以上を1時間に切り上げる処理も必要です。切り捨てだけを行うのは違法です。
具体例で見てみましょう。
| 1か月の時間外労働合計 | 端数処理後 | 適法性 |
|---|---|---|
| 20時間15分 | 20時間(15分を切り捨て) | ✅ 適法 |
| 20時間37分 | 21時間(37分を切り上げ) | ✅ 適法 |
| 20時間37分 | 20時間(37分を切り捨て) | ❌ 違法(30分以上は切り上げ必須) |

割増賃金額の端数処理
同じ通達では、金額面の端数処理についても以下の方法が認められています。
| 端数処理の対象 | 認められる処理方法 |
|---|---|
| 1時間当たりの賃金額・割増賃金額に円未満の端数がある場合 | 50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げ |
| 1か月の割増賃金総額に1円未満の端数がある場合 | 同上(50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ) |
| 1か月の賃金支払額に100円未満の端数がある場合 | 50円未満を切り捨て、50円以上を100円に切り上げ(就業規則の定めが必要) |
| 1か月の賃金支払額に1,000円未満の端数がある場合 | 翌月の賃金支払日に繰り越して支払い(就業規則の定めが必要) |
(出典:福井県「職場のトラブルQ&A ~時間外労働の端数処理~」)
なお、この金額の端数処理は、時間単価をいくらで計算するかが決まって初めて使うものです。時間単価の出し方や割増賃金の基礎から除外できる手当の範囲は割増賃金の計算方法|時間単価の出し方と具体例で6ステップにまとめています。

「切り上げ」は常に適法|労働者有利の処理はOK
端数処理で重要なもう一つのポイントは、労働者に有利な方向への処理(切り上げ)は常に適法であるということです。
この点は行政もはっきり示していて、厚生労働省のリーフレットには「1日の労働時間について、一定時間に満たない時間を切り上げた上で、その分の賃金を支払うことは、問題ありません」と明記されています。1日の残業が13分だった場合に15分として計算したり、59分を1時間として計算したりすることは、労働者に多く支払うことになるため問題ありません。
労働基準法はあくまで「最低基準」を定めた法律であり、それを上回る待遇は自由に行えます。判断に迷ったときは、その処理で労働者の取り分が増えるのか減るのかを見れば、ほとんどの場合は答えが出ます。
合法・違法の境界線を具体例で整理
ここまでの内容を踏まえ、よくある端数処理のパターンについて合法・違法を一覧表で整理します。
| 端数処理のパターン | 判定 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 1日の残業時間を15分単位で切り捨て | ❌ 違法 | 1日単位の切り捨ては認められない |
| 1日の残業時間を30分単位で切り捨て | ❌ 違法 | 同上 |
| 1日の残業時間を15分単位で切り上げ | ✅ 適法 | 労働者有利の処理はOK |
| 1か月の時間外労働合計で30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げ | ✅ 適法 | 基発第150号で認められた例外 |
| 1か月の時間外労働合計で30分未満のみ切り捨て(切り上げなし) | ❌ 違法 | 切り捨てと切り上げはセットで運用が必要 |
| 出勤時刻を15分単位で切り上げ(遅い時刻にする) | ❌ 違法 | 実際の始業時刻より遅くなり、労働時間が短くなる |
| 退勤時刻を15分単位で切り捨て(早い時刻にする) | ❌ 違法 | 実際の終業時刻より早くなり、労働時間が短くなる |
| 出勤時刻を15分単位で切り捨て(早い時刻にする) | ✅ 適法 | 労働者有利(始業が早くなる=労働時間が長くなる) |
| 退勤時刻を15分単位で切り上げ(遅い時刻にする) | ✅ 適法 | 労働者有利(終業が遅くなる=労働時間が長くなる) |

【判断の基本原則】
端数処理が「合法か違法か」の判断は、シンプルに言えば「その処理によって、労働者が不利になるかどうか」です。労働者の労働時間が実際より短く計算される=不利になる処理は原則として違法。労働者に有利になる処理(切り上げ)は適法です。
遅刻・早退・朝礼の端数処理
端数処理の問題は残業時間だけではありません。遅刻・早退・朝礼などの場面でも、誤った端数処理が行われがちです。
5分の遅刻を30分の遅刻として扱うのは違法
5分遅刻した従業員に対し、30分遅刻したものとして賃金をカットするケースがあります。これは、実際に労働した25分間の賃金までカットしていることになり、賃金全額払いの原則に違反する違法な処理です。
基発第150号の通達でも、このような処理について明確に以下のとおり述べています。
【通達の内容】
「5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法である。」
遅刻・早退の場合も、実際に労働しなかった時間(=遅刻した時間)のみを差し引くのが正しい処理です。1分遅刻なら1分分の賃金カット、5分遅刻なら5分分のカットが原則です。
懲戒処分としての減給なら可能?(労基法第91条の制限)
ただし、頻繁な遅刻に対する「制裁(懲戒処分)としての減給」であれば、実際の遅刻時間を超える賃金カットも一定の範囲内で可能です。労働基準法第91条により、1回の減給額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1賃金支払期の賃金総額の10分の1までに制限され、就業規則に「制裁による減給」として明記されていることが前提になります。就業規則の定めがないまま遅刻に対して過大な賃金カットを行うことは、端数処理の問題以前に許されません。
実際に何円差し引くのかという控除額の計算方法や、諸手当をどこまで控除対象にするかは欠勤・遅刻・早退の給与の控除・減額金の法律上のルールと計算方法で詳しく扱っています。

朝礼・着替え・片付けの時間も労働時間に含まれる
始業前の朝礼や制服への着替え、終業後の片付けなど、短時間で終わる業務は「勤務時間外」として扱われがちですが、使用者の指揮命令下にある時間は、すべて労働時間に該当します。
厚生労働省のリーフレットでも、「毎朝、タイムカード打刻前に作業(制服への着替え、清掃、朝礼など)を義務付けているが、当該作業を労働時間として取り扱っていない」という運用を、始業前の労働時間の切り捨てにあたる労働基準法違反の例として名指しで挙げています。
たとえば、9時始業の会社で8時55分から毎日5分間の朝礼が義務付けられている場合、この5分間も労働時間です。1日5分でも、月20日勤務なら100分、年間では20時間分の賃金が消えている計算になります。
実際にどうなった?大手企業の是正事例
端数処理の問題は理論だけでなく、実際に大手企業が多額の未払い賃金を支払う事態に発展しています。以下に代表的な事例を紹介します。
【注意事項】
以下の事例紹介は、公開されている報道・行政情報・裁判例に基づくものであり、特定の企業を非難する目的ではありません。端数処理の法的リスクを正しく理解するための参考情報としてご活用ください。
事例①:大手コンビニチェーン|15分単位の切り捨てで行政指導
ある大手コンビニチェーンでは、独自の勤務管理システムにおいて、出退勤の際にバーコードをかざすと1分単位の正確な時刻が表示されるにもかかわらず、記録される始業時刻は15分単位で切り上げ、終業時刻は15分単位で切り捨てられる仕組みになっていました。どちらも労働時間が短くなる方向に丸められていた点が問題視されました。
この問題は国会で取り上げられ、当時の厚生労働大臣は、始業・終業時刻に不合理な端数処理があり賃金や割増賃金の不払いが生じている場合は労働基準法違反になり得るという趣旨の答弁を行いました。その後、同社は勤務管理システムを改修し、1分単位で勤務時間を登録できるようにしたと報じられています。
注目したいのは、システムが1分単位の時刻を「表示できていた」にもかかわらず、記録側で丸めていた点です。技術的にできないから丸めているのではなく、設定でそうなっているだけ、という場合もあります。
事例②:大手外食チェーン|5分未満切り捨て→約16億円の未払い賃金支払い
大手ファミリーレストランチェーンでは、パートやアルバイトなどの勤務時間を5分単位で管理し、5分未満の端数を切り捨てていました。
この問題は、アルバイト従業員が労働組合に加入し、切り捨てていた分の賃金支払いを団体交渉で求めたことがきっかけで是正に至りました。同社は2022年7月から1分単位の勤怠管理方式に変更し、過去2年分の未払い賃金を遡って支払うことを発表。支払い対象は約9万人、総額は約16〜17億円に上りました。
1件あたりで見れば数分の切り捨てでも、人数と月数を掛け合わせると桁が変わります。「1回5分だから大した額にならない」という感覚が通用しないことを示す事例です。
事例③:桑名市事件(名古屋地裁)|15分未満の切り捨ては労基法24条違反
名古屋地裁 平成31年(2019年)2月14日判決の桑名市事件では、市が運営する診療所で当番医として応急診療業務にあたっていた医師が、15分未満の超過勤務時間を切り捨てられていたとして、未払いの超過勤務手当などを請求しました。
裁判所は「使用者は、法定内の所定労働時間を超える労働であっても、労働をした以上、労働者に対してその対価である賃金を全額支払わなければならない」として、15分未満を切り捨てる取扱いは労働基準法24条1項に違反すると判断し、未払いの超過勤務手当2,133円と年14.6%の遅延利息の支払いを命じました(不法行為の成立までは認められませんでした)。
認容額は2,133円です。金額だけ見れば小さいのですが、「端数の切り捨ては24条違反」という判断が裁判所から示されたことに意味があります。1人あたりの額が小さくても、同じ処理を全従業員に何年も続けていれば、会社が抱える債務は事例②の規模になります。
【これらの事例から学ぶべきこと】
端数処理の問題は、企業の規模に関係なく発生し得ます。「うちは小さい会社だから大丈夫」ということはありません。特に2020年4月の法改正で、賃金請求権の消滅時効が2年から当分の間3年(将来的には5年)に延長されました。切り捨てが常態化している会社ほど、遡及支払いの総額は大きくなります。
労働基準監督署への相談と是正指導の流れ
厚生労働省リーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」の内容
厚生労働省は、事業主向けのリーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」を公開し、端数処理に関する注意喚起を行っています。冒頭で「1日ごとに、一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことは、労働基準法違反となります」と明記したうえで、次の3つを違反例として挙げています。
- 勤怠管理システムの端数処理機能を設定し、1日の時間外労働時間のうち15分に満たない時間を一律に切り捨て(丸め処理)、その分の残業代を支払っていない
- 残業申請は30分単位で行うよう指示しており、30分に満たない時間外労働時間については残業として申請することを認めておらず、切り捨てた分の残業代を支払っていない
- 毎朝、タイムカード打刻前に作業(制服への着替え、清掃、朝礼など)を義務付けているが、当該作業を労働時間として取り扱っていない
(参考:厚生労働省リーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」)
この3つに当てはまる運用がないか、自社でも一度確認しておくとよいと思います。
労基署への相談・通報の方法
端数処理によって賃金が正しく支払われていないと感じた場合、従業員は以下の方法で対処できます。
タイムカードのコピー、給与明細、就業規則、勤怠管理システムの画面キャプチャなど、実際の労働時間と給与計算の根拠となる資料を収集します。
まずは会社の総務・人事部門や上司に対し、端数処理の是正と未払い賃金の支払いを求めます。書面やメールなど記録が残る方法で行うとよいでしょう。
会社が改善に応じない場合は、管轄の労働基準監督署に相談・申告します。申告は匿名でも可能です。労基署は必要に応じて事業所への調査・是正指導を行います。
未払い賃金の金額が大きい場合や、会社が是正に応じない場合は、労働問題に詳しい弁護士や社会保険労務士に相談することも検討しましょう。労働審判や訴訟による解決も選択肢に入ります。
是正勧告を受けた場合のリスク
是正勧告を受けると、消滅時効の範囲で未払い賃金を遡って支払うことになります。従業員から民事上の請求を受けた場合は、これに遅延損害金が上乗せされます。
遅延損害金の利率は、在職中の分が民法の法定利率(2026年8月現在で年3%)です。退職者については、賃金の支払の確保等に関する法律第6条により、退職日の翌日以降の分に年14.6%が適用され得ます。裁判になれば、未払い額と同額までの付加金の支払いを裁判所が命じることもあります(労働基準法第114条)。悪質なケースでは、送検や企業名の公表につながることもあります。
金額がどこまで膨らむのか、労基署の調査は実際どう進むのか、固定残業代を払っていれば大丈夫なのかといった点は残業代不払い(未払い残業)のリスクと会社の対策でQ&A形式に整理しています。

自社の端数処理を見直すための実務チェックリスト
ここまでの内容を踏まえ、自社の端数処理が適法かどうかを確認するためのチェックリストを用意しました。一つでも当てはまる場合は、早急に見直しが必要です。
就業規則・勤怠管理システムの設定を確認
- □ 就業規則に「労働時間は〇分単位で切り捨てる」という記載がないか
- □ 勤怠管理システムの丸め設定で、1日単位の切り捨てが設定されていないか
- □ 残業申請が30分単位・15分単位など、一定時間以上でしか認められていないルールがないか
- □ 月単位の端数処理を行う場合、切り捨てだけでなく切り上げもセットで運用しているか
- □ 月単位の端数処理が「時間外・休日・深夜労働」にのみ適用されているか(所定労働時間に適用していないか)
- □ 遅刻・早退の処理で、実際の遅刻時間を超える賃金カットを行っていないか
- □ 朝礼・終礼・着替え・片付けなどの時間を労働時間として計上しているか
1分単位管理への移行手順
現在15分単位や5分単位で勤怠管理を行っている場合、1分単位への移行は以下の手順で進めましょう。
就業規則、給与計算ソフト、勤怠管理システムの設定を確認し、現在どのような端数処理が行われているかを把握します。
丸め設定を「1分単位」に変更します。多くの勤怠管理システムでは管理画面から変更できます。月単位の端数処理(30分での切り捨て・切り上げ)を活用する場合は、その設定も確認しましょう。
就業規則に違法な端数処理の記載がある場合は、改定した方がよいと思います。「労働時間は1分単位で計算する」旨を入れ、改定後は労働基準監督署への届出と従業員への周知もしておきましょう。
過去に端数を切り捨てていた期間の未払い賃金がないか精査します。未払いが判明した場合は、消滅時効の範囲内で遡及支払いを検討しましょう。自主的に是正することで、労基署からの指導や訴訟のリスクを軽減できます。
管理職や現場責任者に対して、正しい端数処理のルールを周知します。「残業は15分単位でつける」といった現場レベルの誤ったルールが残っていないか確認しましょう。
勤怠管理システムの「丸め機能」の正しい設定方法
多くの勤怠管理システムには「丸め機能」(端数処理機能)が搭載されていますが、この機能の使い方を誤ると法律違反になります。正しい設定のポイントは以下のとおりです。
| 設定項目 | 推奨設定 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1日単位の丸め(出勤) | 切り捨て(早い時刻にする)または丸めなし | 出勤時刻の切り上げ(遅い時刻にする)は違法 |
| 1日単位の丸め(退勤) | 切り上げ(遅い時刻にする)または丸めなし | 退勤時刻の切り捨て(早い時刻にする)は違法 |
| 月単位の時間外労働集計 | 30分未満は切り捨て・30分以上は切り上げ | 切り捨てのみは違法。切り上げとセットで運用 |
| 所定労働時間の丸め | 丸めなし(1分単位) | 所定労働時間に対する月単位の端数処理も不可 |

勤怠管理システムに丸め機能があるからといって、安易に使ってはいけません。その設定が法律に適合しているかを必ず確認しましょう。不安な場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。
まとめ
勤務時間の端数処理について、この記事のポイントを整理します。
- 大原則:労働時間は1分単位で計算し、全額支払いが必要(労基法第24条)
- 1日単位の切り捨ては違法:5分・10分・15分・30分、いかなる単位でも1日単位の切り捨ては認められない
- 月単位の端数処理は例外的にOK:1か月の時間外・休日・深夜労働の合計で、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は認められる(基発第150号)
- 切り上げは常に適法:労働者に有利な方向への処理は問題なし
- 遅刻の端数処理も注意:5分の遅刻を30分として扱うのは違法。ただし懲戒処分としての減給は、法の範囲内で就業規則に基づき可能
- 賃金請求権の時効延長:2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金は、消滅時効が当分の間3年(将来的に5年)。未払いリスクが拡大
- 厚生労働省も注意喚起中:リーフレットで丸め処理・残業申請の下限設定・始業前作業の切り捨てを違反例として明示
「昔からこうだったから」は、端数処理の問題では通用しません。勤怠管理システムの設定と就業規則を今一度確認し、1分単位での適正な労働時間管理を実現しましょう。
よくある質問(FAQ)
- パート・アルバイトも1分単位で計算が必要ですか?
-
はい、必要です。賃金全額払いの原則は、雇用形態に関係なくパート・アルバイトにも適用されます。短時間勤務者であっても、出退勤の時刻は1分単位で記録し、賃金に反映する必要があります。
- 就業規則に「15分単位で計算する」と書いてあれば合法ですか?
-
いいえ、就業規則に記載があっても違法です。労働基準法は「強行法規」であり、就業規則や労使協定で法律の基準を下回る定めをしても無効となります。就業規則に「15分単位で切り捨てる」と記載していても、その条項は法的効力を持ちません。該当する記載がある場合は、速やかに就業規則を改定する必要があります。
- 未払い賃金の請求はいつまで遡れますか?
-
2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金については、消滅時効は当分の間3年です(将来的には5年に延長される予定です)。それより前に支払期日が到来した賃金は、従前どおり2年が消滅時効となります。時効は各賃金の支払期日を起算点として進行します。端数切り捨てによる未払いが長期間続いている場合、従業員数×月数で算出すると相当な金額になる可能性があります。
- 従業員がダラダラ残業している場合、端数をカットしてよいですか?
-
端数をカットすることはできません。ただし、不必要な残業を抑制するための対策として、「残業は事前申請制とする」「上司の残業命令がない場合は速やかに退勤すること」といったルールを就業規則に定め、適切に運用することは可能です。重要なのは、実際に労働した時間に対しては1分単位で賃金を支払いつつ、不要な残業をさせない仕組みを整えることです。
- フレックスタイム制や裁量労働制でも1分単位管理は必要ですか?
-
フレックスタイム制の場合、清算期間における総労働時間を基に過不足を精算しますが、日々の実労働時間は1分単位で記録する必要があります。裁量労働制の場合は、所定のみなし労働時間が適用されますが、深夜労働や休日労働が発生した場合は実際の労働時間に基づく割増賃金の支払いが必要であり、その計算のためにも1分単位の記録が求められます。また、労働安全衛生法に基づく健康管理の観点からも、正確な労働時間の把握は不可欠です。




