今回は、勤務中に怪我をしたとか、通勤中に事故にあったなど、労災(労災保険)についての手続きをまとめていきたいと思います。
必要になってからでもいいですが、労災が必要な時は、従業員がけがや入院をして大変な時なので、ざっと目を通して頭の片隅に入れておくと、何かあった時の対応が早いと思います。
今回の記事を読むと
- 労災とは何か?
- 会社担当者にとっての必要性
- 労災の種類
- 申請方法と手続き方法
などが分かりますので是非参考にしてください。
労災(労災保険)とは何か?
公的には次の定義となります。
労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。
東京労働局HPより
わかりやすく言えば、仕事中・通勤中のケガ・病気・死亡のことです。
会社担当者にとっての必要性
一人でも雇っていれば加入義務がある
会社の義務である労働保険は、「労働保険=労災保険 + 雇用保険 」となっています。
義務があるのに加入していない場合
政府が職権で加入手続きを行い、さかのぼって労働保険料を徴収し、追徴金も徴収されます。
また、加入してない間に労働災害が発生したら、労働保険料の徴収のほかに、労働給付の費用100%または40%を負担させられます。
(過去のケースでは遺族補償の場合などでは、数億、数千万円の会社負担になるケースもあります)
会社の義務の範囲
では具体的に、会社は何をしないといけないのかは、主なものは以下の通りです。
- 労働保険成立届
- 労働保険料の申告・支払い
- 労災発生時の届け出
今回は、労災発生時の届け出について主にまとめています。
その他については、下記のリンク先の記事をご覧ください。
会社設立時、初めて採用した際の「労働保険保険関係成立届」の書き方、記入例、注意事項など
労働保険の年度更新のやり方~「労働保険概算・確定保険料/一般拠出金申告書」の記入例、書き方など~
労災保険の給付ってどんなのがあるの?
労災保険の給付の種類と内容の主なものをまとめると次の通りです。
- 療養(補償)給付:業務、通勤が原因となった傷病の療養を受けるときの給付
- 休業(補償)給付:業務、通勤が原因となった傷病の療養のため、働けない時、賃金を受けられないときの給付
- 傷病(補償)年金:業務、通勤が原因となった傷病の療養開始後、1年6か月たっても傷病が治ゆしないで障害の程度が傷病等級に該当するときの給付
- 障害(補償)給付:業務、通勤が原因となった傷病が治ゆして障害等級に該当する身体障害が残ったときの給付
- 遺族(補償)給付:労働者が死亡したときの給付
- 葬祭料・葬祭給付:労働者が死亡し、葬祭を行ったときの給付
- 介護(補償)給付:障害(補償)年金または傷病(補償)年金の一定の障害により、現に介護を受けているときの給付
提出・申請期限について
療養補償給付、休業補償給付、葬祭給付、介護補償給付、二次健康診断等給付・・・2年
障害補償給付、遺族補償給付・・・5年
療養給付について、時効は2年ですが労災指定病院で手続きして病院に立て替えてもらう場合は、病院の会計担当者から入院したり治療が発生して少なくとも一か月以内ぐらいに処理をしないと催促の連絡が来ます。
早めに行った方がいいでしょう。
療養給付について
療養給付とは労災で怪我や入院をした時の治療費や入院費用などを労働局が負担をしてくれる仕組みになります。(自己負担なし)
元はと言えば、会社が納めている労働保険料がその原資となります。
対象となる範囲
治療費、入院の費用、看護料、移送費等通常療養のために必要なものは全部含まれます。(一般に治療効果の認められていない特殊な治療や傷病の程度から必要がないと認められる場合等は支給されません。)
労災でいう療養とはどこまで?
労災で言う療養とは 医者が言うところの治ったというのとは、少し違います。
給付は、症状が固定されるまで、つまり傷病が治るまで行われます。症状固定後は障害の程度に応じて「障害補償給付」が行われます。
手続きの流れ
手続きの流れはその病院や医療機関が労災指定病院かどうかによって異なります。
労災指定病院であれば、その用紙を病院の受付窓口などに提出することで手続きは終わり、無料で治療を受けることができます。(給付の請求と呼ばれます)
労災指定病院でない場合は一度患者が費用を払った後で、申請書を労働基準監督署に提出し、 後日、労働局から患者本人に費用が振り込まれ、補償してもらうという形になります。(費用の請求とよばれます)
書類の流れとしては、労災指定病院なら、本人が記入し、それを会社が認めて署名と押印をし、本人が病院に提出するという流れになると思います。(全て、会社ではなく本人が提出します)
本人が書く欄を書けば、会社の担当者が病院や労働基準監督署に出向いても問題はないと思います。
休業補償給付について
休業補償給付とは
厚労省の下の説明が分かりやすいです。
休業補償給付とは、労働者が、業務または通勤が原因となった負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのたに賃金を受けていないとき、その第4日目から休業補償給付、または休業給付(通勤災害の場合)が支給されます。
厚労省HPより
ポイントは上の個所で
- ①理由が業務・通勤上で
- ②労働できず
- ③賃金がない
この3つの条件を満たす必要があります。
そして、4日目から支給も気をつけたい所です。
支給額
休業1日につき、給付基礎日額の80%(休業(補償)給付=60%+休業特別支給金=20%)が支給されます。
厚労省HPより
なお、所定労働時間の一部について労働した場合には、その日の給付基礎日額から実働に対して支払われる賃金の額を控除した額の80%(60%+20%)に当たる額が支給されます。
この給付基礎日額は申請書作成時に計算する「平均賃金算定内訳」で計算する「平均賃金」の事です。
つまり、給料の約80%が支給されるということです(4日目以降、働いた日を除く)
会社負担(3日目までの負担について)
休業の1日目から第 3 日目までを待期期間といい、この間は業務災害の場合、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1 日につき平均賃金の 60%)を行う義務があります
申請書の記入例、書き方、注意点等
用紙の名称と種類
また、通勤時の労災とそれ以外の業務上の労災で用紙が異なります。
申請内容と様式の関係(青字の箇所はクリックすると記入例・詳細ページへ)
通勤時の労災(労災指定病院)
通勤時の労災については下の記事を参考ください。記入例などまとめてます。
通勤以外のものに比べて裏面もあるのが特徴で、裏面にその労災の発生状況の説明や通勤経路などの地図を書く場所があるのが特徴です。
労災「療養給付たる療養の給付請求書 」(様式第16号の3)の記入例、書き方、注意点
通勤以外の労災(労災指定病院)
通勤以外の労災については下の記事を参考ください。記入例などまとめてます。
通勤労災と異なり両面でなく1枚片面だけで終わりになります。
労災「療養補償給付たる療養の給付請求書」( 様式第5号)の記入例、書き方
通勤労災での転院(労災指定病院)
病院から病院に転院した時は下の記事を参考ください。記入例などまとめてます。
用紙が異なるだけで通勤労災と通勤の災害の書く内容はほとんど一緒になります。
労災「療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」(様式第16号の4)の記入例、書き方、注意点
通勤労災以外の転院(労災指定病院)
病院から病院に転院した時は下の記事を参考ください。記入例などまとめてます。
用紙が異なるだけで通勤労災と通勤の災害の書く内容はほとんど一緒になります。
労災「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」(様式第6号)の記入例、書き方、注意点