消費税申告書の書き方(一般課税・簡易課税)

消費税申告書の書き方(一般課税・簡易課税)

法人税申告書とならんで、決算後の経理担当者を悩ませるのが消費税の申告だと思います。「預かった消費税から支払った消費税を引く」という説明は聞いたことがあっても、いざ申告書を前にすると、一般課税と簡易課税のどっち?付表って何枚いるの?と手が止まってしまいますよね。

消費税の申告も、実際の作成は顧問税理士にお願いしている会社が多いです。ただ、計算の考え方や有利・不利の判断は担当者が理解しておいたほうが、税理士とのやり取りもスムーズですし、提出前のチェックにも役立ちます。

この記事では、消費税申告書とはどんな書類なのか、一般課税と簡易課税の違い、そしてインボイス制度との関係までを、総務・経理の担当者向けにやさしく整理してみました。一枚ずつ書けるようになる記事ではなく、全体像をつかむための入門編という位置づけです。

タップできるもくじ

消費税申告書とは?預かった消費税を納めるための書類

消費税のしくみ

消費税は、最終的に消費者が負担して、会社が代わりに納める税金です。会社は売上のときにお客さんから消費税を預かり、仕入や経費の支払いのときに消費税を支払っています。

納める消費税は、この差額が基本です。とてもざっくり書くと、次のようなイメージですね。

【ポイント】納付する消費税の基本式

預かった消費税(売上にかかる消費税) − 支払った消費税(仕入・経費にかかる消費税) = 納付する消費税

この「支払った消費税を差し引く」ことを仕入税額控除といいます。後で出てくるインボイス制度や簡易課税は、この差し引く金額の計算方法に関わってきます。

納税義務者になる会社

すべての会社が消費税を納めるわけではありません。基準期間(原則として2期前)の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務がある「課税事業者」になります。

ただし、インボイス制度に登録した会社は、売上規模にかかわらず課税事業者になります。自社が課税事業者かどうかは、判断を間違えると申告漏れにつながるので、不安なら税理士に確認しておくと安心です。

提出先と期限はいつまで?

法人の消費税申告書は、原則として課税期間終了の日の翌日から2か月以内に、所轄の税務署へ提出します。納付期限も同じ日です。法人税の申告とほぼ同じタイミングで進めることになりますね。

計算方法は2つ|一般課税と簡易課税の違い

消費税の計算には、大きく分けて「一般課税(本則課税)」と「簡易課税」の2つの方法があります。どちらで計算するかで、納める税額も申告書の書き方も変わってきます。

一般課税と簡易課税の計算方法の違いを対比した図

一般課税(本則課税)とは

一般課税は、実際に支払った消費税を一つひとつ集計して差し引く方法です。さきほどの基本式どおりの計算ですね。正確に計算できる反面、仕入や経費の消費税を税率ごとに区分して集計する手間がかかります。

簡易課税とは

簡易課税は、実際の支払った消費税を集計するかわりに、売上の消費税に業種ごとのみなし仕入率をかけて、差し引く金額を計算する方法です。仕入の集計が不要になるので、事務負担はぐっと軽くなります。

ただし、誰でも使えるわけではありません。基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、かつ事前に届出を出している必要があります。

一般課税と簡易課税の比較

一般課税(本則課税)簡易課税
計算方法実際の支払った消費税を差し引く売上の消費税×みなし仕入率
使える会社制限なし基準期間の課税売上5,000万円以下
事前の届出不要必要(適用したい課税期間の前までに)
事務負担大きい(仕入の区分集計が必要)小さい(売上の集計が中心)

【注意】簡易課税は届出のタイミングに気をつける

簡易課税を使うには、原則として適用したい課税期間が始まる前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておく必要があります。決算後に「簡易課税のほうが得だった」と気づいても、さかのぼっては選べません。どちらが有利かは早めにシミュレーションして、税理士と相談して決めるのがよいと思います。

申告書の全体構成と作成の流れ

消費税申告書の本体と付表の関係、標準10%・軽減8%の税率区分を示す図

申告書本体と付表の関係

消費税申告書も、本体の用紙だけで完結するわけではなく、計算の明細である「付表」とセットで作ります。付表で税率ごとに税額を計算し、その結果を申告書本体にまとめていく、という流れですね。一般課税と簡易課税では使う付表が違います。

税率ごとの区分(標準10%・軽減8%)

消費税には標準税率10%と、飲食料品などの軽減税率8%があります。売上も仕入も、この税率ごとに分けて集計する「区分経理」が必要です。軽減税率の取引がある会社は、ここの区分をきちんとしておかないと、申告書の計算が合わなくなります。

勘定科目ごとの区分経理に不安がある場合は、勘定科目とは?仕訳や貸借対照表・損益計算書での基本ルールを初心者向けに解説で基本を確認しておくとよいと思います。

作成の流れ

STEP
売上・仕入を税率ごとに集計する

課税売上と課税仕入を、標準10%・軽減8%などに区分して集計します。区分経理がここで効いてきます。

STEP
付表で税額を計算する

一般課税なら実際の仕入税額、簡易課税ならみなし仕入率を使って、付表で納める税額を計算します。

STEP
申告書本体にまとめて提出・納付

付表の結果を申告書本体に転記し、期限内に税務署へ提出して納付します。

インボイス制度と消費税申告のポイント

インボイスと仕入税額控除の関係・2割特例・少額特例を示す図

適格請求書(インボイス)と仕入税額控除

2023年10月から始まったインボイス制度では、一般課税で仕入税額控除を受けるために、原則として取引先が発行した適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。インボイスがない仕入は、原則として控除できなくなる、というのが基本の考え方です。

電子帳簿保存法ともからむ部分なので、請求書の保存ルールがあやふやな場合は電子帳簿保存法、ほぼ義務化!2022年1月から中小企業の対応方法などを徹底解説!もあわせて確認しておくと安心です。

2割特例・少額特例

インボイス制度をきっかけに、免税事業者からあえて課税事業者になった会社向けに、負担をやわらげる経過措置があります。代表的なものが、納付税額を売上の消費税の2割にできる2割特例です。

また、一定規模以下の会社では、少額の取引について帳簿の保存だけで控除を認める少額特例もあります。こうした特例は適用できる期間や条件が決まっているので、自社が使えるかどうかは最新の情報を確認してください。

【参考】特例は期間限定のものが多い

2割特例などの経過措置は、適用できる期間が区切られています。年度によって使える・使えないが変わるので、申告のたびに国税庁の最新情報を確認するか、顧問税理士に確認するのが確実です。この記事では細かい年度の区切りまでは断定せず、「こういう特例がある」という全体像にとどめています。

提出方法と納付・中間申告

電子申告(e-Tax)と書面提出

消費税申告書も、e-Tax(電子申告)と書面提出から選べます。資本金1億円超の大法人は電子申告が義務です。中小企業はどちらでも構いませんが、会計ソフトと連携させて電子申告するほうが、区分経理の集計から申告まで一気に進められて楽だと思います。

クラウド会計を使えば、日々の仕訳から消費税の集計・申告書作成までつなげられます。たとえば「」や「」のようなサービスですね。

中間申告

前年の消費税額が一定額を超えると、年の途中で前払い的に納める「中間申告」が必要になります。前年の税額に応じて、年1回・3回・11回と回数が変わります。中間で納めた分は、確定申告のときに精算されるしくみです。回数が多いと納付を忘れやすいので、スケジュール管理に気をつけたいところですね。

税理士に依頼すべきか|社内対応の線引き

消費税申告は、一般課税か簡易課税かの判断、インボイスや特例の適用、税率の区分など、間違えやすいポイントが多いです。そのため、顧問税理士に依頼している会社が多いと思います。

経理担当者がやること

税理士に依頼している場合でも、もとになるデータをそろえるのは経理担当者の役割です。ここがきちんとできていれば、申告も正確でスムーズになります。

  • 売上・仕入を税率ごとに区分して記帳する(区分経理)
  • インボイス(適格請求書)を保存・整理する
  • 一般課税・簡易課税のどちらか、自社の状況を税理士に共有する

区分経理やインボイスの保存は日々の積み重ねなので、決算前に慌てないよう、期中からきちんと運用しておくことが何より大事だと思います。

消費税申告書のよくある質問(FAQ)

一般課税と簡易課税はどちらが得ですか?

一概には言えません。仕入や経費にかかる消費税が多い会社は一般課税が有利になりやすく、人件費中心で仕入が少ない会社は簡易課税が有利になりやすい傾向があります。設備投資の予定なども影響するので、両方で試算して比べるのが確実です。判断に迷うときは税理士に相談してください。

簡易課税はいつ届出すればよいですか?

原則として、簡易課税を適用したい課税期間が始まる前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。決算後にさかのぼって選ぶことはできないので、有利・不利の判断は早めにおこなうことが大切です。一度選ぶと原則2年間は継続適用になる点にも注意してください。

赤字でも消費税は納めるのですか?

はい、納めることがあります。消費税は利益ではなく、預かった消費税と支払った消費税の差額で計算されます。そのため、会社が赤字でも、預かった消費税のほうが多ければ納付が発生します。利益が出ていないのに納税がある、というのが消費税の特徴ですね。

インボイス登録をしていないと損をしますか?

立場によります。課税事業者として一般課税で申告する側は、取引先のインボイスがないと仕入税額控除が原則できなくなります。一方、自社が売り手で取引先が課税事業者の場合、インボイスを発行できないと取引先が控除できず、選ばれにくくなることがあります。自社の取引相手や規模を踏まえて、税理士と相談して判断するのがよいと思います。

中間申告は必ず必要ですか?

すべての会社で必要なわけではありません。前年の消費税額が一定額を超えた場合に必要になり、税額に応じて年1回〜11回と回数が変わります。前年の税額が小さい会社は、中間申告がないこともあります。対象になる場合は税務署から通知が届くことが多いです。

消費税申告書は、「預かった消費税から支払った消費税を引く」という基本と、一般課税・簡易課税の違い、そしてインボイスとの関係さえ押さえれば、全体像はぐっとつかみやすくなります。細かい計算は税務ソフトや税理士に任せつつ、担当者としては区分経理とインボイスの保存を日々ていねいに、というのが申告をラクにする近道だと思います。

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