昇進・昇格・降格の違いと運用上の注意

「課長に昇進」「等級が一つ上がって昇格」「役職を外れて降格」——人事の場面では、昇進・昇格・降格という言葉がよく出てきます。なんとなく使っていますが、いざ制度として運用しようとすると、それぞれの違いやルールを整理しておかないと混乱しがちです。

私も総務で人事の手続きに関わるなかで、「昇進と昇格って同じじゃないの?」と聞かれて、うまく説明できなかったことがあります。とくに降格は、賃金の引き下げを伴うとトラブルになりやすく、慎重な運用が必要です。

今回は、昇進・昇格・降格の違いと、運用するうえでの注意点を整理しました。人事制度を考える総務・人事の方の参考になればうれしいです。

タップできるもくじ

昇進・昇格・降格とは?

まずは、3つの言葉の意味と違いを整理しておきましょう。似ているようで、指しているものが違います。

昇進(役職が上がる)・昇格(等級が上がる)の違い

昇進とは、係長から課長へ、課長から部長へといったように、役職(ポスト)が上がることをいいます。一方、昇格とは、社内の等級制度における等級や資格が上がることをいいます。会社によっては、役職とは別に「1等級・2等級」といった等級を設けており、その等級が上がるのが昇格です。役職が上がるのが昇進、等級が上がるのが昇格、と整理すると分かりやすいです。

降格(役職・等級が下がる)とは

降格とは、昇進・昇格の逆で、役職や等級が下がることをいいます。課長から係長へ役職が下がる場合や、等級が下がる場合などがあります。降格は社員にとって不利益が大きく、賃金の引き下げを伴うこともあるため、運用にはとくに注意が必要です。

3つの違い一覧比較表

区分変わるもの
昇進役職(ポスト)が上がる係長→課長
昇格等級・資格が上がる2等級→3等級
降格役職・等級が下がる課長→係長、3等級→2等級

昇進・昇格の運用

昇進・昇格は、社員のやる気を高める大切な仕組みです。納得感のある運用がポイントです。

人事評価・昇格基準にもとづいて決める

昇進・昇格は、人事評価や昇格基準にもとづいて決めるのが基本です。「上司の好き嫌い」や「なんとなく長く勤めているから」といった決め方では、社員の納得は得られません。どんな成果や能力があれば昇進・昇格できるのか、基準を定めて運用しましょう。

基準を明確にして納得感を持たせる

昇進・昇格の基準は、できるだけ社員に分かるようにしておくと効果的です。「何を目指せば上がれるのか」が見えると、社員は目標を持って働けます。基準があいまいだと、上がれなかった社員の不満につながります。透明性のある運用が、社員のやる気を引き出します。

昇進・昇格と賃金(手当・等級給)の関係

昇進すると役職手当が付き、昇格すると等級に応じた基本給が上がる、というように、昇進・昇格は賃金と結びついていることが多いです。制度を作るときは、役職・等級と賃金の関係を整理しておきましょう。賃金との結びつきが明確だと、昇進・昇格の意味が社員にも伝わりやすくなります。

降格の運用と注意点

降格は、社員に大きな不利益を与えるため、もっとも慎重さが求められる場面です。タイプと注意点を押さえておきましょう。

降格の2タイプ(人事上の降格/懲戒としての降格)

降格の2タイプ(人事上・懲戒)の分類図

降格には、大きく2つのタイプがあります。一つは、人事評価の結果や能力・適性にもとづく「人事上の降格」。もう一つは、規律違反などに対する処分として行う「懲戒としての降格」です。どちらのタイプかによって、必要な根拠や手続きが変わります。懲戒としての降格は、懲戒処分のルールに従う必要があります。

降格には根拠と合理性が必要

降格を行うには、就業規則や人事制度に根拠があり、その判断に合理性があることが必要です。理由もなく一方的に降格したり、嫌がらせ目的で降格したりすると、権利の濫用として無効になることがあります。なぜ降格するのか、客観的な理由を説明できるようにしておきましょう。

賃金の引き下げを伴う降格は、とくに慎重に行う必要があります。下げ幅が大きすぎたり、根拠が不十分だったりすると、無効と判断されやすくなります。減給を伴う場合は、就業規則の定めを確認し、判断に迷うときは社会保険労務士や弁護士に相談しましょう。なお、懲戒による減給には労働基準法上の限度があります。

昇進・昇格・降格を運用するときの基本

これらを公平に運用するには、土台となる制度づくりが欠かせません。基本の流れを押さえておきましょう。

STEP
人事制度・等級制度を整える

役職・等級と、それに対応する賃金や評価基準を整理します。土台となる制度がないと、昇進・昇格・降格の判断がぶれてしまいます。

STEP
評価基準と運用ルールを周知する

どうすれば昇進・昇格できるのか、どんなときに降格があるのかを社員に伝えます。ルールが共有されていると、納得感が高まります。

STEP
基準に沿って公平に運用する

定めた基準に沿って、公平に判断します。とくに降格は理由を記録し、本人に丁寧に説明することが大切です。

もっとも避けたいのは、その場の判断による恣意的な運用です。基準なく上げたり下げたりすると、社員の不信を招き、トラブルのもとになります。制度とルールにもとづいた公平な運用を心がけましょう。

まとめ

昇進は役職が上がること、昇格は等級・資格が上がること、降格はそれらが下がることです。昇進・昇格は人事評価や基準にもとづいて行い、基準を明確にして納得感を持たせることが大切です。

降格は社員の不利益が大きいため、根拠と合理性が必要です。とくに賃金の引き下げを伴う場合は慎重に進めましょう。土台となる人事制度・等級制度を整え、ルールを周知して公平に運用することが、トラブルを防ぎ、社員のやる気を引き出す鍵になります。

よくある質問

昇進と昇格はどう違うのですか?

昇進は役職(ポスト)が上がることで、係長から課長へといった変化を指します。昇格は社内の等級制度における等級・資格が上がることです。会社によっては役職とは別に等級を設けており、その等級が上がるのが昇格です。「役職が上がるのが昇進、等級が上がるのが昇格」と覚えるとよいでしょう。

降格にあわせて賃金を下げられますか?

降格に伴う賃金の引き下げは、就業規則や人事制度に根拠があり、判断に合理性があれば可能な場合があります。ただし、下げ幅が大きすぎたり根拠が不十分だったりすると、無効と判断されやすくなります。とくに慎重に行うべき場面なので、就業規則を確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。なお、懲戒による減給には労働基準法上の限度があります。

降格に本人の同意は必要ですか?

就業規則や人事制度に根拠があり、合理的な理由があれば、本人の個別同意がなくても降格できる場合があります。ただし、理由もなく一方的に行ったり、不利益が大きすぎたりすると、権利の濫用として無効になることがあります。トラブルを防ぐためにも、理由を記録し、本人に丁寧に説明することが大切です。

評価が低い社員を降格させてもいいですか?

人事評価の結果にもとづく降格は、制度に根拠があり、評価が公平で合理的であれば可能な場合があります。ただし、一度の低い評価ですぐに降格するのではなく、改善の機会を与えるなどの配慮があると、より納得感が高まります。評価の客観性と、降格の判断の合理性を説明できるようにしておきましょう。

昇格基準はどう作ればいいですか?

まず等級ごとに「求められる能力・役割・成果」を定め、それを満たしたら昇格できる、という形にすると分かりやすいです。評価制度と連動させ、基準を社員に公開すると、目標を持って働いてもらえます。中小企業ではシンプルな等級から始め、運用しながら見直していくのもよい方法です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
タップできるもくじ