産休・育休の社会保険料免除はいつからいつまで?給与計算の注意点

産休・育休の社会保険料免除はどの月が対象かを示すアイキャッチ

産休・育休中は、手続きをすれば健康保険・厚生年金の保険料が本人分・会社分まるごと免除になります。

ただし迷いやすいのは「いつの分から、いつの分まで免除なのか」です。育休の免除ルールは令和4年10月の改正で「月末ルール+14日ルール」の二本立てになり、月をまたぐ短期の育休では判定が直感と食い違います。

しかも免除は自動では始まりません。会社が申出書を出して初めて適用されるうえ、住民税は免除の対象外、翌月徴収の会社では控除を止める給与月が1か月ずれる、という落とし穴もあります。

今回は、産休・育休中の社会保険料がどこまで免除されるのかという期間の判定と、給与計算で間違えやすいポイントをまとめました。

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産休・育休中の保険料免除とは(全体像)

産休・育休中の社会保険料免除の全体像を示す図
産休・育休中の社会保険料免除の全体像

何がいくら免除される?

免除されるのは、健康保険料・厚生年金保険料(+介護保険料)の本人負担分と会社負担分の両方です。月々の保険料だけでなく、条件を満たせば賞与の保険料も免除されます。

金額感をつかむために、ざっくり計算してみます。

【参考】標準報酬月額30万円の社員(40歳未満・協会けんぽ)の場合

① 健康保険料(本人負担分):月1.5万円前後(都道府県の料率による)

② 厚生年金保険料(本人負担分):300,000円×18.3%÷2=27,450円

③ 本人負担は月約4.3万円。産休+育休1年で約14か月免除されると、本人だけで約60万円。会社負担分も同額が免除される

これだけの金額が、申出書1〜2枚で決まります。絶対に漏らせない手続きですね。

免除されても将来の年金は減らない

免除期間中も被保険者資格はそのまま続き、健康保険証も使えます。

年金の計算上は「保険料を納めた期間」として扱われ、休業直前の標準報酬月額で年金額に反映されます。つまり、免除を受けても本人に不利益は一切ありません。ここは安心して案内して大丈夫です。

様式は「産休用」と「育休用」の2種類

休業様式提出タイミング
産前産後休業産前産後休業取得者申出書産休期間中(出産前でも後でも可)
育児休業(産後パパ育休含む)育児休業等取得者申出書育休期間中

提出先はどちらも日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)です。電子申請(e-Gov)にも対応しています。

産休から続けて育休に入る場合は、2枚を別々のタイミングで出すことになります。1枚出して安心しがちなので、要注意です。

それぞれの様式の記入例と1項目ずつの書き方は、「産前産後休業取得者申出書」の記入例、書き方、注意点「育児休業等取得者申出書」の記入例、書き方、注意点で解説しています。この記事では、その手前にある「どの月が免除になるか」の判定に絞って整理します。

免除期間のルール

産休・育休の社会保険料免除期間のルールを示すタイムライン
免除期間のルール(産休・育休)

産前産後休業の免除期間

産前産後休業(産前42日・多胎98日+産後56日のうち休んだ期間)については、休業開始月から、終了日の翌日が属する月の前月までが免除されます。

たとえば6月10日に産休開始、10月15日に産休終了(翌日から育休)なら、6月分から9月分までが産休による免除です(10月分からは育休の免除に引き継がれます)。

出産日がずれて休業期間が変わったら「変更届」で期間を直します。ここを放置すると免除期間がずれたままになるので、出産報告とセットで処理しましょう。

なお、産後56日の翌日(産後57日目)からは育児休業に切り替わるので、免除のバトンも「産休の免除→育休の免除」へ引き継がれます。申出書を2枚きちんと出していれば、免除は切れ目なく続きます。

給付金と免除では「ものさし」が違う点も整理しておきます。

期間お金の給付保険料の免除
産休中出産手当金(健康保険・日単位で計算)健保・厚年とも免除(月単位で判定)
育休中育児休業給付金(雇用保険・支給単位期間ごと)健保・厚年とも免除(月末・14日ルールで判定)

「給付は日割り、免除は月単位」と覚えておくと、本人への説明で混乱しません。

育児休業の免除ルール【令和4年10月改正】

育休の月々の保険料は、次のどちらかに当てはまる月が免除されます。

  • 月末ルール:その月の末日に育休中である
  • 14日ルール:同じ月の中で開始・終了した育休が14日以上ある(令和4年10月以降に開始した育休)

【例1】6月10日〜6月25日の育休(16日間・月内で完結)

月末(6月30日)時点では復帰しているが、同月内に14日以上取得しているので6月分は免除(14日ルール)。改正前はこのパターンが免除されず、不公平と言われていました。

【例2】6月25日〜7月3日の育休(9日間・月またぎ)

6月は末日(6月30日)に育休中なので6月分は免除(月末ルール)。7月は月末時点で復帰しており、7月内の取得も3日だけなので7月分は免除されない。9日間の育休でも1か月分免除される一方、例1より長く休んでも免除は同じ1か月分、という逆転も起きます。

判定は「開始日と終了日がいつか」で機械的に決まります。給与計算ソフトの設定や手計算の際は、この2つのルールをセットで確認してください。

賞与の保険料は「1か月超」の育休だけ免除

賞与にかかる保険料は、賞与を支給した月の末日を含む、連続した1か月超の育休を取得した場合だけ免除されます(令和4年10月〜)。

たとえば6月賞与の会社で、6月20日〜7月25日の育休(1か月超・6月末を含む)なら賞与分も免除。6月25日〜7月10日(16日間)だと、月々の保険料は免除されても賞与分は免除されません。

改正前にあった「賞与月の月末に1日だけ育休を取って賞与の保険料を浮かせる」という取り方ができなくなった、ということです(実際そういう取得が流行ってしまったための改正だと聞いています)。

分割取得・産後パパ育休の場合の申出書は?

令和4年10月から育休は2回に分割でき、産後パパ育休(出生時育児休業)も2回に分割できます。免除の申出書は、休業のまとまりごとにその都度提出します。

14日ルールの日数は、同じ月内なら複数回の育休を合算して数えます(例:6月に7日+8日の2回取得→合算15日で6月分免除)。男性育休の短期取得が増えているので、月内合算の考え方は給与担当として押さえておきたいところです。

免除が切れないための提出タイミング【5つの節目】

社会保険料免除の申出書を提出する5つの節目を示すフローチャート
免除の申出を出す5つの節目

免除が途切れる原因のほとんどは、書き方のミスではなく出すべき節目で出していないことです。添付書類は原則不要で申出書1枚で完結するぶん、「いつ出すか」だけが勝負になります。

育児休業給付金(ハローワーク)の手続きと節目が重なるので、「年金機構とハローワークに同時に出す」とセット運用すると漏れません。

STEP
産休開始:産前産後休業取得者申出書を提出

産休に入ったら、産前産後休業取得者申出書を日本年金機構へ提出します。出産予定日ベースで産休期間を記入すればよく、出産前に提出して構いません。

提出は産休期間中に行うのが原則です。給与計算側では、免除開始月から保険料控除を止める設定も忘れずに行います。記入方法は「産前産後休業取得者申出書」の記入例、書き方、注意点を参照してください。

STEP
出産日確定:必要なら変更届を提出

予定日と実際の出産日がずれた場合は、産前産後休業取得者変更(終了)届で期間を訂正します。予定どおりなら不要です。

出産の報告を受けたら「出産手当金の期間」「保険料免除の期間」「育休の開始日」の3点をまとめて見直す、と覚えておくと漏れません。

STEP
育休開始:育児休業等取得者申出書を提出

産後57日目から育休に入ったら、今度は育児休業等取得者申出書を提出します。産休用とは別の様式なので、必ず2枚目として出してください。

具体的な書き方は「育児休業等取得者申出書」の記入例、書き方、注意点で解説しています。男性の育休(産後パパ育休=出生時育児休業)もこの様式で同様に申出できます。

STEP
育休を延長したら:申出書を再提出

保育園に入れず育休を1歳6か月・2歳まで延長する場合は、延長後の期間で育児休業等取得者申出書をあらためて提出します。

当初の申出書に書いた終了予定日のままだと、延長分の免除が適用されません。育児休業給付金の延長手続き(ハローワーク)とセットで処理しましょう。

STEP
復帰:終了届と復帰後の2つの特例手続き

予定どおりの復帰なら終了届は不要ですが、予定より早く復帰した場合は終了届を提出します。給与計算側では保険料控除の再開を忘れずに。

復帰後は、時短勤務などで給与が下がる人向けに「育児休業等終了時報酬月額変更届」(通常の月変より緩い条件で標準報酬を下げられる)と、「養育期間標準報酬月額特例申出書」(3歳未満の子を育てる間、標準報酬が下がっても年金額は従前の額で計算される特例)の2つを案内します。後者は本人にデメリットがないので、対象者には全員勧めていい手続きです。

給与計算で事故が起きやすい3つのポイント

産休・育休の保険料免除で給与計算の事故が起きやすい3つのポイントを示す図
給与計算で事故が起きやすい3つのポイント

申出書を出して免除が決まったあと、実際に本人の手取りを間違えるのはこの3か所です。免除の判定そのものより、こちらのほうが問い合わせにつながります。

住民税は免除されない

免除されるのは社会保険料だけで、住民税(特別徴収)は前年所得にかかるため休業中も発生し続けます。

無給期間の徴収方法(毎月振込・復帰後精算・普通徴収への切替)を休業前に本人と決めておいてください。ここは産休・育休の定番トラブルポイントです。

健康保険組合の会社は提出先が2か所

協会けんぽの会社は日本年金機構への提出だけで健保・厚年の両方が処理されますが、健康保険組合に加入している会社は、厚生年金分を年金機構へ、健康保険分を組合へそれぞれ提出する必要があります。

組合様式が別にあることも多いので、組合健保の会社は自社の組合の手続き案内を確認してください。

給与計算の控除停止・再開のタイミングずれ

保険料を翌月の給与から控除している会社(翌月徴収)では、「6月分の保険料を7月給与から引く」というズレがあるため、免除開始・終了時に1か月ずれて引いてしまう事故が起きがちです。

「何月分の保険料が免除なのか」を基準に、控除を止める給与月・再開する給与月を逆算して確認してください。間違って控除してしまったら、すみやかに本人へ返金します。

まとめ

  • 産休・育休中の社会保険料は、取得者申出書の提出で本人分・会社分とも免除(自動適用ではない)
  • 産休用と育休用は別様式。産休→育休と続く場合は2回提出する
  • 育休の免除判定は「月末に育休中」または「同月内14日以上」(令和4年10月改正)
  • 賞与の保険料免除は「月末を含む連続1か月超」の育休のみ
  • 免除されても年金は減らない。住民税は免除されない

出産・育児関連の手続き全体の流れは育児、出産、子育て手続き~会社事務担当者向け概要編~も参考にしてください。

産休・育休の保険料免除Q&A

男性の産後パパ育休(出生時育児休業)も免除される?

免除されます。出生時育児休業も「育児休業等」に含まれ、月末ルール・14日ルールで同じように判定します。分割取得した場合は、同月内の日数を合算して14日以上かどうかを見ます。

申出書を出し忘れていた。さかのぼって免除できる?

原則は休業期間中の提出ですが、出し忘れに気づいたらまず年金事務所に相談してください。事情によっては遡及して処理してもらえる場合があります。放置が一番よくないので、気づいた時点ですぐ動きましょう。

育休中にそのまま退職したら免除はどうなる?

退職日の翌日に被保険者資格を失うので、免除もそこで終わります。資格喪失届の提出と、本人の国民健康保険・国民年金への切り替え案内が必要になります。

パート社員でも免除される?

健康保険・厚生年金の被保険者であれば、雇用形態に関係なく対象です。そもそも社会保険に加入していないパートの方には、免除すべき保険料がないので手続き自体が不要です。

休業中の社員の算定基礎届(定時決定)はどうする?

休業中でも被保険者なので、算定基礎届は提出します。支払基礎日数が足りない場合は従前の標準報酬月額で決定される扱いです。免除中だからといって届出の対象から外さないよう注意してください。

自営業(国民年金・国保)の妻にも同じ制度はある?

国民年金には産前産後期間の保険料免除制度(出産予定日の前月から4か月間)があり、市区町村への届出で適用されます。国民健康保険も産前産後期間の保険料軽減が導入されています。会社の制度とは別物なので、聞かれたら市区町村の窓口を案内してください。

参考リンク

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