減価償却資産の償却方法の届出書の書き方と記入例

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「減価償却資産の償却方法の届出書」は、機械や車、備品などの減価償却を定額法でやるか定率法でやるかを、税務署に届け出るための書類です。

会社設立の書類をそろえていると、法人設立届出書や青色申告の承認申請書と一緒にこの用紙が出てきます。名前が難しいので身構えますが、中身は「資産の種類ごとに償却方法を書く」だけの1枚ものです。

そしてこれも、出さなくても罰則はありません。出さなければ法定の償却方法が自動で適用されます。設立直後で特に定額法を選ぶ理由がなければ、出さずに法定の定率法で始めるケースも多いです。

今回は、記入例と書き方に加えて、そもそも自社に提出する意味があるのかを判断できるところまでまとめました。

【この記事でわかること】

  • 提出は任意。出さなければ法人の法定償却方法(機械・車両等は定率法)が自動適用される
  • 建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアは、鉱業用減価償却資産・鉱業権・リース資産に該当するものを除き定額法とされるので、通常は届出の出番がない
  • 一般的な新設法人で定額法・定率法の選択余地がある主な資産は、機械装置・車両運搬具・工具・器具備品・船舶・航空機など(鉱業用減価償却資産・鉱業権・リース資産は扱いが別)
  • 提出期限は設立第1期の確定申告書の提出期限まで
  • あとから変えるときは届出ではなく「変更の承認の申請」(税務署長の承認が必要)
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減価償却資産の償却方法の届出書とは

減価償却資産の償却方法の届出書とは、減価償却資産の種類ごとに償却方法を選んで、納税地の所轄税務署長に届け出るための書類です(法人税法施行令第51条第2項)。

同じ資産でも、定額法と定率法では毎年の償却費の出方が変わります。前半に多く費用化するか、毎年一定にするか。その選択を税務署に伝えるための届出ですね。減価償却そのものの考え方は勘定科目とは?仕訳や貸借対照表・損益計算書での基本ルールを初心者向けに解説もあわせてご覧ください。

出さない場合の法定償却方法

届出を出さない場合は、法人税法施行令で決まっている法定償却方法が適用されます。法人の場合は次のとおりです。

資産の種類法定償却方法(法人)届出で変えられる?
建物(平成19年4月1日以後取得)定額法変えられない
建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得)定額法変えられない
機械及び装置定率法定額法に変えられる
車両及び運搬具定率法定額法に変えられる
工具・器具及び備品定率法定額法に変えられる
船舶・航空機定率法定額法に変えられる
ソフトウェアなど無形固定資産定額法変えられない
牛・馬・果樹などの生物定額法変えられない

ここは意外と大事なところで、今から設立する会社が実際に選べるのは、表の中で「定率法」と書いてある資産だけです。

建物は平成19年4月1日以後の取得、建物附属設備と構築物は平成28年4月1日以後の取得ならすべて定額法と決まっています。これから設立する会社が取得する資産は当然その後の取得になるので、この3つは選択の余地がありません。

用紙には建物附属設備と構築物の行が印字されていますが、ただし平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物は定額法のみとなるため、新設法人がこれから取得する分については通常は記入不要です。新設法人は基本的に空欄になります(用紙に行があるので埋めなきゃと思ってしまいますが、埋めなくていいです)。

そもそも届出が不要な資産

減価償却資産の償却方法の届出書を出すべきかの判断フロー図。建物などは定額法しか選べず届出不要で、提出しない場合は法定償却方法である定率法が自動的に適用される
出す・出さないの判断フロー

上の表で「変えられない」となっている資産は、償却方法の届出をする必要そのものがありません。記載要領にも、定額法によることとされている資産は「償却方法の届出を要しません」と明記されています。

つまり、自社の資産が建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアだけなら、この届出書は出す意味がありません。オフィス系の会社だと、実はこのパターンがかなり多いです。

なお、鉱業用減価償却資産・鉱業権・リース資産に該当するものは扱いが別です。ここは中小企業ではまず出てこないので、該当する場合だけ記載要領を確認してください。

提出は義務?任意?どんなときに義務になる?

この届出書も任意です。出さなくても罰則はありませんし、税務署から督促が来ることもありません。

整理すると、こういう判断になります。

自社の状況提出理由
機械・車両・備品を定率法で償却したい不要法定が定率法なので、出さなくてもそうなる
機械・車両・備品を定額法で償却したい実質必須出さないと定率法になる
資産の種類ごとに定額法と定率法を使い分けたい実質必須届出をしない区分は、その区分ごとの法定償却方法になる
事業所ごとに違う償却方法を使いたい実質必須(事業所ごとに別葉で提出)出さないと使い分けできない
建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアしか持っていない不要定額法しか選べないので届出の出番がない
法令にない特別な償却方法を使いたい別途「承認申請」が必要届出だけでは足りない

要するに「定率法のままでいいなら出さない、定額法にしたいなら出す」というだけの話です。設立時に迷ったら、出さずに法定の定率法でスタートしても大きな問題にはなりません。

【参考】義務の届出書と混ざらないように

設立時に税務署へ出す書類のうち、法人設立届出書は提出義務があります(法人税法第148条)。給与を払うなら給与支払事務所等の開設届出書も義務です。一方で償却方法・評価方法の2つの届出書は任意。設立時のチェックリストは、この「義務」と「任意」を分けて作っておくと抜け漏れの判断がしやすくなります。

給与支払事務所等の開設届出書の方は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」の記載例、書き方、提出方法などにまとめています。

減価償却資産の償却方法の届出書の記入例、書き方

減価償却資産の償却方法の届出書の記入例。資産、設備の種類と償却方法欄の書き方を示す
記入例

上の記入例のように、上部の法人情報と、選択する資産区分の償却方法欄を記入します。実際に埋めるのは、上部の会社情報と、選びたい資産の行だけです。

上部の法人情報欄

棚卸資産の評価方法の届出書とまったく同じ構成です。設立時にまとめて書くなら、片方をコピーする感覚で埋められます。

書く内容
年月日提出実際に提出する日
提出先納税地を所轄する税務署名
法人番号13桁の法人番号
納税地(郵便番号・所在地・電話番号)本店所在地。登記簿どおり
フリガナ(法人名)・法人名登記簿どおりの表記
事業種目実際に行う主な事業
代表者(郵便番号・住所・フリガナ・氏名)代表取締役の自宅住所と氏名

法人番号がまだ分からないときは、国税庁の法人番号公表サイトで検索できます。詳しくは法人番号とはなに?確認方法、検索方法などをまとめましたをご覧ください。

「資産、設備の種類」欄

用紙の下半分は、左から「資産、設備の種類」「償却方法」の2列が、左右2セット並んだ形になっています。左のセットには次の種類があらかじめ印字されています。

  • 建物附属設備
  • 構築物
  • 船舶
  • 航空機
  • 車両及び運搬具
  • 工具
  • 器具及び備品
  • 機械及び装置

この並びは耐用年数省令の別表第一の区分に対応しています。自社が持っている資産の行だけ、右の「償却方法」欄を埋めれば大丈夫です。持っていない資産の行は空欄のままで問題ありません。

建物の行が無いことに気付いた方もいると思いますが、これは前述のとおり建物が定額法しか選べないためです。用紙に無いのが正常です。

機械及び装置は別表第二の番号を書く

機械及び装置だけは扱いが違います。「機械及び装置」の行の下に、括弧付きの「(   )設備」という行が2つ用意されています。

ここには、耐用年数省令別表第二の番号を括弧内に書き、設備の種類を明示します。機械装置は業種ごとに設備の種類が細かく分かれていて、その単位で償却方法を選ぶ決まりだからです。

たとえば食料品製造業の設備なら別表第二の1番なので「(1)設備」といった書き方になります。自社の設備がどの番号に当たるかは、耐用年数省令の別表第二で確認してください。

「償却方法」欄

採用する償却方法を書きます。書けるのは次の6つのうちのどれかです。

  • 定額法/定率法/生産高比例法
  • 旧定額法/旧定率法/旧生産高比例法

「旧」が付く方は、平成19年3月31日以前に取得した資産に使う古い方法です。これから設立する会社には関係ないので、新設法人は「定額法」または「定率法」のどちらかを書くことになります。

生産高比例法は鉱業用資産などに使う方法なので、通常の会社では出てきません。

「参考事項」欄・「税理士署名」欄

参考事項欄は2つです。

  • 1 新設法人等の場合には、設立等年月日:設立登記の日を元号から記入する。新設法人は必ず埋める
  • 2 その他:特に書くことがなければ空欄でよい

税理士署名欄は、税理士が作成した場合だけ署名します。自分で作ったなら空欄で大丈夫です。税務署整理欄も触らないでください。

減価償却資産の償却方法の届出書のダウンロード(国税庁の様式)

様式は国税庁のサイトから入手できます。

e-Taxソフトでも作成・提出できます。書面の場合は1部を持参または郵送します。

定額法と定率法どちらを選ぶ?

減価償却の定額法と定率法の違いを示す比較図。定額法は毎年同じ金額を償却し、定率法は初期に多く償却するため、会社の利益の出方に応じて選ぶ
定額法と定率法の違い

どちらを選んでも、耐用年数の全期間を通した償却費の合計額は変わりません。変わるのは「どの年に多く費用が乗るか」だけです。

 定率法(法定)定額法(届出で選択)
償却費の出方償却初期ほど大きく、年々減っていく(取得初年度は月割りのため必ず最大になるとは限らない)毎年ほぼ一定
初年度の節税効果大きい小さい
利益の見通し年によって変動して読みにくい読みやすい
届出不要必要

定率法が向く会社

設立当初から利益が出る見込みの会社です。早い時期に大きく費用化できるので、その分だけ税金の支払いを後ろにずらせます。

そして何より、届出を出さなくていいのが定率法です。特に理由がないなら、これがいちばんラクな選択だと思います。

定額法が向く会社

設立当初は赤字が見込まれる会社です。赤字の年に大きな償却費を計上しても、そもそも減らす税金がありません。定額法で平準化しておけば、黒字になった年にも償却費が残ります。ただし青色申告なら赤字は繰越欠損金として繰り越せるため、赤字見込みというだけで定額法が有利とは限りません。黒字化の時期や設備投資額もあわせて試算してください。

もう1つは、銀行融資を受ける予定があって利益を安定して見せたい会社です。初年度に償却費が集中すると決算書が悪く見えるので、そこを避けたいという理由で定額法を選ぶケースがあります。

ちなみに、繰越欠損金は青色申告なら10年間繰り越せるので、赤字を理由にした定額法選択は思ったほど効かない場合もあります。大きな設備投資を予定しているなら、届出の期限が来る前に税理士と試算しておいた方が確実です。

提出先・提出期限・提出方法

提出期限

普通法人・協同組合等を設立した場合は、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。仮決算による中間申告書を出すときは、その中間申告書の提出期限までになります。

設立時以外にも、次のタイミングで提出できます。

  • すでに償却方法を選定している資産以外の減価償却資産を取得した場合 → その資産を取得した事業年度の確定申告書の提出期限まで
  • 新たに事業所を設けて、その事業所で別の償却方法を選びたい場合 → その事業所を設けた事業年度の確定申告書の提出期限まで
  • 新たに船舶を取得して、既存の船舶と別の償却方法を選びたい場合 → その船舶を取得した事業年度の確定申告書の提出期限まで

設立時に機械を持っていなくても、あとから機械を買ったタイミングで届け出られるということですね。設立時に無理に決めなくていいのは、地味にありがたい仕組みだと思います。

事業所別に選ぶときは別葉で出す

減価償却資産の償却方法の届出書の提出期限と事業所別の出し方を示す図。設立第1期の確定申告書の提出期限までが期限で、事業所ごとに違う方法を選ぶ場合は別葉で提出する
提出期限と事業所別の出し方

事業所ごとに違う償却方法を選ぶ場合は、事業所別に届出書を別葉で作成して提出することになっています。1枚にまとめて書くのではありません。

ただ、事業所ごとに償却方法を分けると固定資産台帳の管理が確実に複雑になります。分ける実務上の理由がないなら、全社で揃えておいた方がいいと思います。

提出先と控えの扱い

提出先は納税地の所轄税務署長です。e-Taxソフトで送信するか、書面なら1部を持参・郵送します。

書面で郵送するなら、提出用の1部だけを送ります。令和7年1月から、税務署は申告書等の控えに収受日付印を押さない運用に変わりました。提出した事実を残したいときは、簡易書留など記録の残る方法にするか、e-Taxの受信通知を保存しておくと安心です。土日祝でも時間外収受箱に投函すれば提出したことになります。

なお、鉱業権(試掘権を除く)と坑道については、この届出書とは別に耐用年数の認定申請書も必要になります。

ありがちな記入ミス

  • 建物附属設備・構築物の行に定率法と書く → 平成28年4月1日以後取得はすべて定額法。新設法人は空欄でよい
  • 機械及び装置の行に直接償却方法を書く → 下の「( )設備」の行に別表第二の番号を書いて使う
  • 「旧定額法」と書いてしまう → 平成19年3月31日以前取得の資産用。新設法人は「定額法」
  • 参考事項の「設立等年月日」が空欄 → 新設法人は必ず記入する
  • 事業所別に選びたいのに1枚にまとめて書く → 事業所ごとに別葉で作成する
  • ソフトウェアの償却方法を書こうとする → 無形固定資産は定額法のみ。この用紙に行がない

あとから償却方法を変えたくなったら

すでに選定した償却方法を変えるときは、届出ではなく「減価償却資産の償却方法の変更の承認の申請」になります。

項目内容
手続名減価償却資産の償却方法の変更の承認の申請(C1-38)
提出期限新たに償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日まで
根拠法人税法施行令第52条第2項
要件現在の方法を採用してから相当期間が経過していること

「相当期間」の目安は3年程度とされています。それより早く変更しようとすると、合理的な理由がない限り承認されないことがあります。

期限が事業年度開始の日の前日までなので、決算をやりながら「今期から変えたい」と思っても間に合いません。変えるなら期首前に動く必要があります。

また、すでに保有している資産の償却方法が変わるだけで、過去の償却費をさかのぼって計算し直すわけではありません。変更後の帳簿価額を基礎に、新しい方法で償却していく形になります。

まとめ

  • 提出は任意。出さなければ法人の法定償却方法(機械・車両・工具・器具備品等は定率法)になる
  • 建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアは定額法しか選べず、届出の出番がない
  • 提出期限は設立第1期の確定申告書の提出期限まで。あとから資産を取得したときにも出せる
  • 機械及び装置は「( )設備」の行に耐用年数省令別表第二の番号を書く
  • 初年度から利益が出るなら定率法(=届出不要)、赤字見込みや利益を平準化したいなら定額法
  • 変更は事業年度開始の日の前日までに「変更の承認の申請」。承認が必要なので最初の選択は慎重に

設立時にセットで検討する棚卸資産の評価方法の届出書についても別記事にまとめています。

あわせて「棚卸資産の評価方法の届出書の書き方と記入例」も参考にしてください。

減価償却資産の償却方法の届出書のQ&A

期限を過ぎて出したらどうなる?

受け付けてはもらえますが、その事業年度からは適用されません。第1期は法定の定率法で申告することになります。罰則はありませんが、狙った年から定額法にできない点だけ注意してください。

個人事業でも同じ届出がある?

あります。所得税版の「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」です。ただし個人の法定償却方法は定額法で、法人(機械等は定率法)とは逆になっています。法人化したときに「今までどおり」と思って放置すると、意図せず定率法に変わるので注意が必要です。

30万円未満のパソコンも届出の対象?

少額減価償却資産の特例で全額を経費にする場合は、そもそも償却の話にならないので届出は関係ありません。10万円以上20万円未満を一括償却資産として3年で均等償却する場合も、この届出書とは別の制度です。

リース資産はどう扱う?

所有権移転外ファイナンスリース取引で取得した資産は「リース期間定額法」と決まっているので、この届出書で選ぶものではありません。届出の対象外と考えて大丈夫です。

車両と備品で違う償却方法を選べる?

選べます。資産の種類ごとに選定できるので、「車両運搬具は定額法、器具備品は定率法」といった組み合わせも可能です。ただし管理が煩雑になるので、分ける理由がなければ揃えた方がラクだと思います。

提出したか分からなくなったら?

税務署の「申告書等閲覧サービス」で過去の提出書類を確認できます。e-Taxならメッセージボックスの送信履歴で分かります。決算のたびに毎年悩まないよう、設立時の書類の控えはまとめて保管しておくのがおすすめです。

参考リンク

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