人を採用しようと思ったとき、最初に決めるのが「どこで募集をかけるか」です。求人サイトに載せるのか、ハローワークを使うのか、人材紹介会社に頼むのか。この入口の選び方ひとつで、集まる人も、かかる費用も、採用までのスピードも大きく変わってきます。
私も総務で採用のサポートをするようになって、「とりあえず求人サイトに出しておけばいい」というものでもないんだな、と感じました。職種や予算によって向いているルートが違うので、知らないまま動くと費用ばかりかかって応募が来ない、ということも起きます。
今回は、人材募集の主なルート(求人広告・ハローワーク・人材紹介・リファラル採用・自社採用など)の特徴と、それぞれの費用感・向き不向きを整理しました。採用の入口を一通りつかむための記事として、参考にしてください。
なお、募集した後の選考から内定・入社までの全体の流れは求人〜採用など<入社前の手続・準備>でまとめているので、あわせてご覧ください。

人材募集のルートとは?採用の入口を整理する
人材募集のルートとは、求人情報を求職者に届けるための「経路(チャネル)」のことです。どのルートを使うかで、出会える人の層や採用コストがまったく変わってきます。
大きく分けると、お金をかけて広く募集する方法(求人広告・人材紹介など)と、お金をあまりかけずに募集する方法(ハローワーク・自社採用・社員紹介など)があります。まずはこの違いを押さえておくと、自社に合うルートが見えてきます。
募集ルートで採用の成否が変わる
同じ求人内容でも、どこに出すかで応募の数も質も変わります。たとえば若手のIT人材を採りたいのにハローワークだけに頼っても、なかなか出会えないことが多いですね。逆に、地元で長く働いてくれる事務スタッフを探すなら、ハローワークや地域の求人誌の方が向いていたりします。
つまり「採りたい人がどこで仕事を探しているか」を考えてルートを選ぶのが基本です。ここを外すと、いくら費用をかけても応募が集まらない、という事態になりがちです。
採用単価(採用コスト)の考え方
募集ルートを比べるとき、目安になるのが「1人を採用するのにいくらかかるか」という採用単価です。求人広告の費用や紹介手数料を、実際に採用できた人数で割って計算します。
各種調査では、中途採用の求人広告費は1人あたり平均30万円台、社内人件費まで含めた総合的な採用コストは1人あたり100万円前後とされています。ルートによって金額は大きく違うので、目安として頭に入れておくとよいと思います。
主な募集ルートの一覧と特徴(比較表)
まずは全体像です。主な募集ルートを、費用・スピード・対象者・向いている採用で並べてみました。細かい解説はこの後のH2で1つずつ取り上げます。

| 募集ルート | 費用 | スピード | 向いている採用 |
|---|---|---|---|
| 求人広告・求人サイト | 掲載課金または成功報酬 | 早め | 幅広い職種・複数名 |
| ハローワーク | 無料 | ふつう | 地域採用・助成金活用 |
| 人材紹介(エージェント) | 成功報酬(高め) | 早め | 専門職・即戦力・急ぎ |
| 人材派遣 | 派遣料金(時給ベース) | とても早い | 一時的・繁忙期の人手 |
| リファラル採用(社員紹介) | 低め(紹介報酬程度) | ふつう | 定着重視・社風が合う人 |
| 自社採用(サイト・SNS) | 低め(運用の手間) | 遅め | 長期・ファン獲得型 |
| ダイレクトリクルーティング | 中〜高(手間も大) | ふつう | 専門職・攻めの採用 |
こうして並べると、「費用をかけてスピード重視か」「手間をかけてコストを抑えるか」で性格が分かれているのが分かります。どれか1つだけが正解というわけではなく、組み合わせて使うのが実際のところです。
求人広告・求人サイトの特徴
もっとも一般的なのが、求人サイトや求人情報誌に募集を掲載する方法です。多くの求職者の目に触れるので、まず思い浮かべるルートだと思います。
Web求人サイト・求人情報誌とは
転職サイトやアルバイト求人サイトに、自社の求人情報を載せてもらう方法です。最近は紙の求人誌よりWebの求人サイトが主流ですね。応募者は掲載された情報を見て、サイト経由で応募してきます。
料金体系は大きく2種類あります。掲載期間に応じて費用がかかる掲載課金型と、採用が決まったときだけ費用がかかる成功報酬型です。掲載課金型は応募が来ても来なくても費用が発生するので、原稿の作り込みが大事になります。
費用の目安と向いている採用
求人広告の費用は媒体やプランによってかなり幅があります。数万円から始められるものもあれば、上位プランだと数十万円かかるものもあります。前述のとおり、中途採用の求人広告費は1人あたり平均30万円台というデータもあります。
幅広い職種を募集したいときや、一度に複数名を採用したいときに向いています。一方で、応募が集まるかどうかは原稿の書き方しだいなところがあり、書き方が弱いと費用だけかかって空振り、ということもあります。応募が集まる原稿の作り方は、別記事で取り上げる予定です。
【ポイント】掲載課金型は「載せれば終わり」ではない
掲載課金型は、応募がゼロでも費用が戻ってきません。仕事内容・給与・職場の雰囲気が具体的に伝わる原稿にしないと、もったいない結果になりがちです。掲載前に原稿をしっかり詰めるのがコツだと思います。
ハローワーク(公共職業安定所)の特徴
ハローワーク(公共職業安定所)は、国が運営する無料の職業紹介機関です。求人を出す側も、仕事を探す側も無料で利用できるのが一番の特徴です。
無料で求人を出せる仕組み
事業所の所在地を管轄するハローワークで事業所登録をして、求人を申し込めば掲載してもらえます。最近は「求人者マイページ」を開設すれば、オンラインで求人の申込みや内容の修正ができるようになっています。
掲載費用がかからないので、採用予算が限られている中小企業にはありがたいルートです。地域に密着した求職者が多く集まるので、地元で働きたい人を採りたいときに向いています。
助成金との関係・向き不向き
ハローワークを使うもう一つのメリットが、雇用関係の助成金です。たとえば特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者など就職が困難な方を、ハローワークや職業紹介事業者の紹介で継続雇用した事業主に支給されます。
ここで注意したいのが、こうした助成金はハローワーク等の紹介で雇い入れることが条件になっている点です。自社で勝手に募集して採用した場合は対象外になることが多いので、助成金を使いたいなら募集の段階からハローワーク経由にしておく必要があります。
【注意】助成金は「紹介経由」が条件のことが多い
助成金の支給要件は細かく決まっていて、対象者の条件・雇用形態・継続雇用の期間などがそろって初めて支給されます。使えそうな助成金がある場合は、採用を動かす前にハローワークへ相談しておくと安心です。要件は改正されることもあるので、最新の情報を確認してください。
向き不向きでいうと、スピード感のある専門職採用にはあまり向きません。応募が来るまで待つスタイルなので、急いで即戦力を採りたいときは別のルートと併用した方がいいと思います。
人材紹介・人材派遣の特徴
専門職や即戦力を急いで採りたいときに使われるのが、人材紹介と人材派遣です。名前が似ていますが、雇用の仕組みがまったく違うので整理しておきます。
人材紹介(成功報酬型)の仕組みと相場
人材紹介は、紹介会社(エージェント)が条件に合う人を探して紹介してくれるサービスです。採用が決まって入社したときだけ手数料が発生する成功報酬型なので、紹介を受けるだけなら費用はかかりません。
手数料の相場は、採用した人の想定年収(理論年収)の30〜35%が一般的です。年収500万円の人を紹介手数料35%で採用すると、175万円(500万円×35%)かかる計算になります。なかなかの金額ですよね。最近は人手不足で40%以上という会社も出てきています。
多くの紹介会社には返還金(リファンド)の規定があり、採用した人が早期に退職した場合は手数料の一部が返ってきます。入社1か月未満で80%、3か月以内で50%といった具合に、退職時期に応じて返金割合が決まっているのが一般的です。契約前にこの規定を確認しておくと安心です。
人材派遣・紹介予定派遣との違い
人材派遣は、派遣会社に雇用されている人に、自社で働いてもらう仕組みです。雇用主はあくまで派遣会社なので、自社の社員として採用するわけではありません。繁忙期だけ人手がほしいときや、一時的な欠員を埋めたいときに向いています。

その中間にあたるのが紹介予定派遣です。最初の一定期間(最長6か月)は派遣として働いてもらい、お互いに合意すれば自社の社員として直接雇用に切り替えます。いきなり採用するのは不安だけど、働きぶりを見てから決めたい、というときに使われます。
| 項目 | 人材紹介 | 人材派遣 | 紹介予定派遣 |
|---|---|---|---|
| 雇用主 | 自社 | 派遣会社 | 派遣期間は派遣会社→その後自社 |
| 費用 | 成功報酬(年収の30〜35%) | 派遣料金(時給ベース) | 派遣料金+紹介手数料 |
| 向く場面 | 即戦力を直接採用したい | 一時的な人手 | 見極めてから直接雇用したい |
リファラル採用・自社採用(SNS・ダイレクトリクルーティング)
費用を抑えながら、ミスマッチの少ない採用をしたいときに注目されているのが、社員紹介や自社からの直接アプローチです。手間はかかりますが、うまく回ると採用単価をぐっと下げられます。
社員紹介(リファラル・縁故)
リファラル採用は、自社の社員に知人や友人を紹介してもらう方法です。社員が「この会社に合いそう」と思った人を紹介してくれるので、社風になじみやすく、定着率が高い傾向があります。求人広告費もかからないので、コスト面でも優秀ですね。
ただし、紹介してくれた社員への報酬の扱いや、不採用になったときの人間関係への配慮など、注意点もあります。仕組みや縁故採用との違いはリファラル採用とは?社員紹介制度、縁故採用との違いや支払時の注意点でくわしく解説しているので、導入を考えているならあわせてご覧ください。

自社サイト・SNS採用
自社の採用ページやSNSで募集する方法です。採用サイトを整えたり、会社の雰囲気をSNSで発信したりして、興味を持った人から応募してもらいます。広告費がかからない反面、情報を見てもらうまでに時間がかかるので、すぐに成果が出るルートではありません。
とはいえ、自社のファンになってくれた人が応募してくるので、入社後の定着が良いことが多いです。長い目でコツコツ育てるルート、という感じですね。
ダイレクトリクルーティング(スカウト型)
応募を待つのではなく、企業側から候補者に直接アプローチする方法です。スカウト型の人材データベースに登録されている求職者に、会社からメッセージを送って応募を促します。攻めの採用ともいわれます。
欲しい人材にピンポイントで声をかけられるのが強みですが、1通ずつメッセージを送る手間がかかります。採用担当に時間の余裕がないと続けにくいので、リソースと相談しながら使うルートだと思います。
自社に合った募集ルートの選び方
ここまで見てきたように、募集ルートにはそれぞれ得意・不得意があります。最後に、自社に合うルートをどう選ぶかを整理します。

採用人数・職種・予算で選ぶ
選ぶときの軸は、おおまかに次の3つです。この3つを整理すると、候補のルートがしぼれてきます。
- 採用人数:複数名なら求人広告、1名のピンポイントなら人材紹介やスカウト
- 職種・採りたい層:専門職・即戦力は人材紹介、地域の事務職はハローワークや求人誌
- 予算:費用を抑えたいならハローワーク・リファラル・自社採用、急ぎで予算が出せるなら人材紹介
複数ルートの併用とミスマッチ防止
実際には、1つのルートに絞らず複数を組み合わせるのが現実的です。たとえば「ハローワークで無料の求人を出しつつ、急ぎのポジションだけ人材紹介を使う」「自社サイトとリファラルを基本にして、足りない分を求人広告で補う」といった具合です。
どのルートでも共通して大事なのが、求人情報で仕事内容や条件を正直に伝えることです。良く見せようとして実態と違うことを書くと、入社後のミスマッチで早期退職につながり、結局また採用コストがかかってしまいます。等身大の情報を出した方が、長く働いてくれる人と出会えると思います。
まとめ
人材募集のルートは、求人広告・ハローワーク・人材紹介・人材派遣・リファラル採用・自社採用・ダイレクトリクルーティングなど、いくつもの選択肢があります。それぞれ費用・スピード・向いている採用が違うので、「採りたい人がどこで仕事を探しているか」を起点に選ぶのがコツです。
費用を抑えるならハローワークや社員紹介、急いで即戦力を採るなら人材紹介、というように、目的に合わせて使い分けたり組み合わせたりするのが実務的だと思います。募集ルートを決めたら、次は選考から内定・入社までの流れです。全体像は求人〜採用など<入社前の手続・準備>でまとめているので、続けて確認してみてください。
人材募集のルートに関するよくある質問
- 採用にかける費用が少ない場合、まずどのルートから始めるべき?
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無料で使えるハローワークと、社員に紹介してもらうリファラル採用から始めるのが現実的です。どちらも掲載費がかからないので、予算が限られていてもトライしやすいです。それで集まらない職種だけ、有料の求人広告や人材紹介を追加する形にすると、ムダな費用を抑えられます。
- 複数の求人サイトに同時に掲載してもいいの?
-
問題ありません。複数の媒体に出せば、それだけ多くの求職者に届きます。ただし、媒体ごとに費用がかかるので、応募がどの媒体から来たかを記録しておくと、次回からムダな掲載を減らせます。どの媒体が自社に合うかは、出してみないと分からない面もあります。
- 人材紹介の手数料は値引き交渉できる?
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会社によっては相談に応じてくれることもあります。複数のポジションをまとめて依頼する場合や、継続的に取引している場合は、料率を調整してもらえるケースもあります。ただ、人手不足で売り手市場のときは、なかなか下がらないのが正直なところです。返還金の規定とあわせて、契約前に条件を確認しておくとよいです。
- ハローワークの求人だけで採用できる?
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職種や地域によっては、ハローワークだけで十分採用できることもあります。地元志向の事務職や現場職などは集まりやすい傾向です。一方で、専門性の高い職種や若手のIT人材などは、ハローワークだけだと出会いにくいことが多いので、他のルートとの併用を検討した方がいいと思います。
- 求人を出すのに資格や届出は必要?
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自社の社員を採用するために求人を出すこと自体には、特別な資格や届出は不要です。ハローワークや求人サイトに申し込めば募集できます。なお、他社に人を紹介して手数料を得るような「職業紹介事業」を行う場合は許可が必要ですが、自社採用の募集はこれにあたりません。




