「これってハラスメントになるの?」という相談、総務や人事をしているとよく受けますよね。パワハラ、セクハラ、マタハラと種類も多く、線引きがあいまいで判断に迷う場面も多いと思います。
ハラスメントは、放っておくと従業員の心身の不調や離職につながるだけでなく、会社の法的責任や信用問題にも発展しかねません。だからこそ、まずは「どんな行為がハラスメントにあたるのか」を正しく知っておくことが大切なんですね。
この記事では、職場のハラスメントとは何か、パワハラ・セクハラ・マタハラといった代表的な種類の定義を、総務・人事の担当者向けにやさしく整理してみました。会社の対策の第一歩として、全体像をつかんでおきましょう。
職場のハラスメントとは?
職場のハラスメントとは、立場や優位性などを背景に、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、就業環境を悪化させたりする言動のことです。本人にそのつもりがなくても、相手が苦痛を感じ、職場環境が害されれば、ハラスメントになりうる点がポイントです。

ハラスメント=相手を不快にさせる嫌がらせ
ハラスメントは、ひとことで言えば「嫌がらせ」です。ただ、職場では上司と部下、先輩と後輩といった力関係があるため、本人が「指導のつもり」「冗談のつもり」でも、受け手が深く傷つくことがあります。「意図」よりも「相手がどう感じ、職場にどう影響したか」で判断される、という感覚を持っておくとよいですね。
会社が対策を求められる背景(法整備の流れ)
近年は、ハラスメントの防止が法律で会社に義務づけられるようになりました。セクハラやマタハラに加え、パワハラについても、いわゆるパワハラ防止法により、すべての企業に防止措置が義務づけられています。会社として「知らなかった」では済まされない時代になっている、というわけです。
パワーハラスメント(パワハラ)
まずは、相談件数も多いパワハラから見ていきましょう。指導との線引きが難しく、もっとも判断に迷いやすいハラスメントです。

パワハラの定義(3つの要素)
パワハラは、次の3つの要素をすべて満たすものとされています。逆に言えば、業務上必要かつ相当な範囲の指導は、パワハラには当たりません。
- 優越的な関係を背景とした言動……上司から部下など、抵抗しにくい関係を背景にしている
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えている……指導の範囲を明らかに超えている
- 就業環境が害される……労働者が苦痛を感じ、就業環境が悪化する
パワハラの6類型
パワハラは、代表的な行為が6つの類型に整理されています。どんな言動が該当しやすいか、確認しておきましょう。
| 類型 | 例 |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 殴る・蹴る・物を投げつける |
| 精神的な攻撃 | 人格を否定する暴言・長時間の叱責 |
| 人間関係からの切り離し | 無視する・一人だけ別室に隔離する |
| 過大な要求 | 明らかに不可能な業務を押しつける |
| 過小な要求 | 仕事を与えない・程度の低い仕事ばかりさせる |
| 個の侵害 | 私生活に過度に立ち入る |
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
対価型と環境型
セクハラは、職場における性的な言動によって、労働者が不利益を受けたり、就業環境が害されたりするものです。大きく2つのタイプに分けられます。
- 対価型……性的な要求を断ったことを理由に、解雇・降格・減給などの不利益を与える
- 環境型……性的な言動で職場環境を不快にし、働きづらくさせる
同性間・性的指向や性自認に関する言動も対象
セクハラは異性間に限りません。同性に対する言動もセクハラになりますし、性的指向や性自認をからかうような言動も対象です。「冗談」「悪気はない」では通らないので、性に関する話題は職場では慎重に扱う、という意識が大切ですね。
マタニティハラスメント(マタハラ)など
マタハラ・パタハラ・ケアハラ
妊娠・出産・育児・介護に関するハラスメントもあります。それぞれ呼び方が分かれています。
- マタハラ……妊娠・出産した女性に対する不利益な取扱いや嫌がらせ
- パタハラ……育児休業などを取得しようとする男性に対する嫌がらせ
- ケアハラ……介護休業などを利用する人に対する嫌がらせ
妊娠や育休・介護休業の取得などを理由に、解雇や降格といった不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。制度を利用しづらい雰囲気をつくること自体も問題になります。
そのほかのハラスメント(カスハラなど)
このほかにも、顧客や取引先からの著しい迷惑行為である「カスタマーハラスメント(カスハラ)」や、お酒の場での「アルコールハラスメント」など、さまざまなハラスメントが知られています。職場で働く人を守るという観点では、社外からの迷惑行為への対応も近年は重視されてきています。
ハラスメントを放置するリスク
法的責任・損害賠償・企業イメージへの影響
ハラスメントを放置すると、会社が責任を問われることがあります。加害者本人だけでなく、防止措置を怠った会社が損害賠償を求められるケースもあります。さらに、外部に知られれば企業イメージが大きく傷つき、人材の流出や採用への悪影響にもつながります。「個人間の問題」と片づけず、会社の問題として対応することが欠かせません。
【ポイント】まずは相談窓口と社内ルールの整備から
ハラスメント対策の基本は、相談窓口を設け、就業規則などに方針を明記することです。とくにパワハラについては、防止措置が法律で義務づけられています。具体的な措置の内容は、別の記事でくわしく解説する予定です。
「指導」と「ハラスメント」を分けて考える
対策を進めるうえで大切なのが、正当な指導まで萎縮させないことです。業務上必要かつ相当な範囲の指導は、ハラスメントではありません。感情的にならず、人格を否定せず、業務に必要な範囲で伝える、という基本を共有しておくと、指導とハラスメントの線引きがしやすくなりますよ。

職場のハラスメントに関するよくある質問(FAQ)
- 指導とパワハラの違いは何ですか?
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業務上必要かつ相当な範囲の指導はパワハラに当たりません。パワハラは、優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で、就業環境を害するものを指します。たとえば、ミスを改善するために具体的に指摘するのは指導ですが、人格を否定する暴言を浴びせたり、大勢の前で長時間叱責したりするとパワハラになりえます。
- 本人に悪気がなければハラスメントになりませんか?
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悪気がなくてもハラスメントになりえます。ハラスメントは、行為者の意図よりも、相手が苦痛を感じ就業環境が害されたかどうかで判断されます。「冗談のつもり」「指導のつもり」であっても、相手を傷つけ職場環境を悪化させればハラスメントに当たる可能性があります。受け手の立場で考える意識が大切です。
- セクハラは異性間だけが対象ですか?
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異性間だけではありません。同性に対する性的な言動もセクハラになりますし、性的指向や性自認に関するからかいなども対象です。性別にかかわらず、性的な言動で相手を不快にさせたり就業環境を害したりすればセクハラに当たりえます。職場では性に関する話題を慎重に扱うことが大切です。
- 小さな会社でもハラスメント対策は必要ですか?
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必要です。パワハラの防止措置は、会社の規模にかかわらずすべての企業に義務づけられています。セクハラやマタハラの防止措置も同様です。相談窓口の設置や就業規則への方針の明記など、規模に応じた形で対策を整えておく必要があります。「人数が少ないから大丈夫」とはなりません。
- ハラスメントを放置すると会社はどうなりますか?
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会社が責任を問われることがあります。加害者本人だけでなく、防止措置を怠った会社が損害賠償を求められるケースもあります。また、従業員の離職やメンタル不調、企業イメージの悪化といった影響も大きくなります。ハラスメントは個人間の問題ではなく会社の問題として、早めに対応することが重要です。
職場のハラスメントは、「相手が苦痛を感じ就業環境が害されたかで判断される」「パワハラ・セクハラ・マタハラなど種類ごとに定義がある」「放置すると会社の責任になる」という点を押さえておくことが第一歩です。正当な指導まで萎縮させないよう、定義を正しく理解したうえで、相談窓口や社内ルールを整えていきましょう。




