契約社員など、期間を決めて雇う「有期雇用」は、多くの会社で活用されています。ただ、「契約はどう結べばいい?」「更新を断ってもいいの?」「5年を超えると正社員にしないといけないって本当?」など、ルールが分かりにくい部分も多いと思います。
私も総務で契約更新の手続きをするなかで、無期転換ルールの管理に気をつかいます。知らずに更新を続けていると、思わぬタイミングで無期転換の申込みが来て慌てる、ということもあるからです。
今回は、有期労働契約の基本ルールと、無期転換ルールの仕組みを整理しました。契約社員を雇う総務・人事の方の参考になればうれしいです。
契約社員(有期雇用)とは?
まずは、契約社員(有期雇用)がどういう働き方なのかを整理しておきましょう。
期間の定めのある労働契約で働く人
契約社員とは、一般に、契約期間の定めがある労働契約(有期労働契約)で働く人を指します。「1年契約」「6か月契約」のように期間を決めて雇い、期間が満了すると契約が終了します。更新して働き続けることもありますが、基本は期間を区切った契約である点が特徴です。
正社員(無期)との違い
正社員は、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)で働きます。契約に期間の定めがあるかどうかが、契約社員と正社員の大きな違いです。仕事の内容が似ていても、契約の形が違えば、適用されるルールも変わってきます。
呼び方より契約内容で判断する
「契約社員」「嘱託」「臨時社員」など、呼び方は会社によってさまざまですが、法律上は呼び方ではなく、契約に期間の定めがあるかどうかで判断されます。期間を区切って雇っていれば、呼び方にかかわらず有期労働契約のルールが適用されます。
有期労働契約の基本ルール
有期労働契約を結ぶときに、押さえておきたい基本のルールを見ていきましょう。

契約期間の上限(原則3年)
1回の有期労働契約の期間は、原則として3年が上限です。ただし、高度な専門的知識を持つ人や、満60歳以上の人を雇う場合は、上限が5年になります。1回の契約でこれより長い期間を定めることは原則できません。なお、契約を更新して通算でこれを超えるのは問題ありません。
労働条件の明示(更新の有無・判断基準)
有期契約を結ぶときは、労働条件を明示する必要があります。とくに、契約を更新する場合があるのか、更新するかどうかの判断基準は何かを明示することが求められます。更新の有無があいまいだと、後の雇止めでトラブルになりやすいので、最初にはっきり示しておきましょう。
2024年4月から明示事項が追加された
2024年4月から、有期契約に関する明示のルールが強化されました。更新回数や通算契約期間の上限を設ける場合はその内容を明示すること、また、後述する無期転換を申し込める時期になったら、申込みができることと、転換後の労働条件を明示すること、が必要になっています。最新のルールに沿って、明示漏れがないようにしましょう。
雇止めの注意点
有期契約でとくに注意したいのが、契約を更新しない「雇止め」です。自由にできると思い込んでいると、トラブルになることがあります。
雇止めとは(契約を更新しないこと)
雇止めとは、有期契約の期間が満了したときに、契約を更新せずに終了させることをいいます。本来、期間が来れば契約が終わるのが有期契約ですが、状況によっては、雇止めが認められないことがあります。
反復更新している場合は合理的理由が必要
契約の更新を何度も繰り返し、実質的に期間の定めのない契約と変わらない状態になっている場合や、社員が「更新されるだろう」と期待することに合理的な理由がある場合は、雇止めに客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされます(雇止め法理)。これがないと、雇止めが無効となり、契約が更新されたものとして扱われることがあります。「期間満了だから」というだけで簡単に雇止めできるとは限らない、と理解しておきましょう。
雇止めの予告
有期契約を3回以上更新している場合や、1年を超えて継続して雇用している場合に雇止めをするときは、少なくとも30日前までに予告することが求められています。突然の雇止めは社員の生活に大きく影響するため、早めに伝える配慮が必要です。
無期転換ルールの仕組み
有期契約で長く働く人に関わるのが、無期転換ルールです。仕組みを正しく理解しておきましょう。
通算5年を超えると本人の申込みで無期契約に
同じ会社との有期労働契約が更新され、通算の契約期間が5年を超えると、社員は無期労働契約への転換を申し込む権利を得ます。社員が申し込めば、会社はそれを断ることができず、無期契約に転換します。これが無期転換ルールです。

カウントの起算とクーリング(空白期間)
通算5年のカウントは、2013年4月1日以降に始まった契約から数えます。また、契約と契約の間に一定以上の空白期間(クーリング期間)があると、それまでの通算がリセットされます。空白期間が原則6か月以上あると、それ以前の期間は通算されません。更新を管理するときは、この通算のルールを押さえておきましょう。
転換後の労働条件
無期転換しても、別段の定めがなければ、労働条件は転換前と同じままです。つまり、無期転換=自動的に正社員になる、というわけではありません。期間の定めがなくなるだけで、給与や仕事内容はそのまま、というのが基本です。ただし、無期転換者用の区分や処遇を別に定めることもできます。
無期転換への実務対応
無期転換に備えて、会社として準備しておきたいことを整理します。

無期転換した社員の労働条件や区分を、就業規則などで整理しておきます。転換後にどう扱うかを決めておくと、申込みがあっても慌てません。
各社員の通算契約期間を把握しておきます。5年に近づく人を管理しておくと、無期転換の時期を見通せます。
無期転換の申込みは断れません。申込みを受けたら、確実に無期契約に切り替え、必要な手続きを行います。
まとめ
契約社員(有期雇用)は、期間の定めのある労働契約で働く人です。契約期間は原則3年が上限で、契約時には更新の有無や判断基準を明示する必要があります。2024年4月からは、更新上限や無期転換に関する明示も求められています。
更新を繰り返している場合の雇止めには合理的な理由が必要で、簡単には行えません。また、通算5年を超えると、本人の申込みで無期契約に転換します。通算期間を管理し、就業規則を整え、申込みには確実に対応する——こうした備えが、トラブルのない有期雇用の運用につながります。
よくある質問
- 有期契約の期間に上限はありますか?
-
1回の有期労働契約の期間は、原則として3年が上限です。ただし、高度な専門的知識を持つ人や、満60歳以上の人を雇う場合は、上限が5年になります。1回の契約でこれより長い期間を定めることは原則できません。契約を更新して、通算でこれを超えることは問題ありません。
- 契約期間が満了すれば自由に雇止めできますか?
-
必ずしも自由ではありません。更新を何度も繰り返し、実質的に無期契約と変わらない状態の場合や、社員が更新を期待することに合理的な理由がある場合は、雇止めに客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(雇止め法理)。これがないと雇止めが無効になることがあるので、慎重に判断しましょう。
- 無期転換すると正社員になるのですか?
-
必ずしも正社員になるわけではありません。無期転換は、契約期間の定めがなくなるだけで、別段の定めがなければ、給与や仕事内容などの労働条件は転換前と同じままです。「無期転換=正社員化」ではない点に注意しましょう。もちろん、会社が無期転換者用の区分や処遇を別に定めることもできます。
- 無期転換はどうやって申し込むのですか?
-
通算契約期間が5年を超えた後の有期契約期間中に、社員が会社に対して無期転換を申し込むことで成立します。申込みの方法に決まった様式はありませんが、後の確認のために書面で受けるのが確実です。会社は申込みを断ることができず、申込みを受けた時点で、次の契約から無期契約に転換することになります。
- クーリングとは何ですか?
-
クーリングとは、契約と契約の間に一定以上の空白期間があると、それまでの通算契約期間がリセットされる仕組みのことです。空白期間が原則6か月以上あると、それ以前の期間は通算されなくなります。ただし、無期転換を避ける目的で意図的に空白期間を設けるような運用は、トラブルのもとになるため避けるべきです。




