パート・アルバイトをめぐる法律と契約・就業規則の注意点

「パートだから就業規則はいらないかな」「アルバイトに有給ってあげるの?」——パート・アルバイトを雇うとき、こうした疑問が出てくることは多いと思います。正社員とは違うイメージがあるぶん、扱いがあいまいになりがちです。

私も総務でパートの方の手続きを担当しますが、「パートだから」と軽く考えていると、思わぬ法律違反やトラブルにつながることがあります。パート・アルバイトにも、正社員と同じく労働法が適用されるからです。

今回は、パート・アルバイトをめぐる法律と、契約・就業規則の注意点を整理しました。短時間・有期の働き手を雇う総務・人事の方の参考になればうれしいです。

タップできるもくじ

パート・アルバイトとは?法律上の位置づけ

まずは、パート・アルバイトが法律上どう位置づけられているかを整理しておきましょう。

呼び方は違っても「短時間・有期雇用労働者」

「パート」「アルバイト」「契約社員」などの呼び方は、会社が便宜的につけているもので、法律上の区別ではありません。法律では、所定労働時間が正社員より短い人を「短時間労働者」、契約期間に定めのある人を「有期雇用労働者」と呼びます。呼び方ではなく、働き方の実態で扱いが決まる、と理解しておきましょう。

パート・アルバイトの法律上の位置づけの図

正社員と同じく労働法が適用される

パート・アルバイトにも、労働基準法をはじめとする労働法が当然に適用されます。労働時間や休憩、割増賃金、最低賃金、年次有給休暇などのルールは、正社員と同じように守る必要があります。「短時間だから」「アルバイトだから」といって、これらのルールを外すことはできません。

「パートだから」で軽く扱えない

もっとも気をつけたいのが、「パートだから」という思い込みです。契約書を交わさない、有給を与えない、社会保険に入れない——こうした扱いは、法律違反になることがあります。雇用形態にかかわらず、働く人の権利は守られている、という前提で対応しましょう。

適用される主な法律

パート・アルバイトに関わる法律のうち、とくに押さえておきたいものを見ていきましょう。

パート・アルバイトに適用される主な法律の分類図

パートタイム・有期雇用労働法

パート・アルバイトや契約社員を雇うときの中心となる法律が、パートタイム・有期雇用労働法です。労働条件の明示や、待遇に関するルール、相談体制の整備などが定められています。短時間・有期で人を雇うなら、まずこの法律を意識しておきましょう。

同一労働同一賃金(不合理な待遇差の禁止)

同じ法律のなかで、いわゆる「同一労働同一賃金」のルールも定められています。これは、正社員とパート・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇の差を設けてはいけないというものです。仕事の内容や責任の程度などが同じなら、基本給や手当、賞与などで不合理な差をつけることはできません。待遇に差を設ける場合は、その理由を説明できる必要があります。

社会保険・雇用保険の加入条件

パート・アルバイトでも、一定の条件を満たせば社会保険(健康保険・厚生年金)や雇用保険への加入が必要です。労働時間や日数が一定以上になると加入対象になるため、「パートだから入れなくていい」と思い込むのは禁物です。加入条件は法改正で変わることもあるので、最新の基準を確認しましょう。詳しくは、会社の社会保険の加入条件をまとめた記事もあわせてご覧ください。

契約・採用時の注意点

パート・アルバイトを採用するときは、契約まわりの手続きを正しく行うことが大切です。

パート・アルバイトの契約・採用時の注意点チェックリスト図

労働条件の明示(パート特有の明示事項に注意)

採用時には、労働条件を明示する必要があります。パート・有期雇用労働者の場合、通常の明示事項に加えて、昇給の有無・賞与の有無・退職手当の有無・相談窓口も文書などで明示することが義務づけられています。これらの記載漏れがないように注意しましょう。

雇用契約書・労働条件通知書を必ず交付する

「アルバイトだから口約束で」というのは避け、雇用契約書や労働条件通知書を必ず交付しましょう。書面があれば、労働時間や賃金などの条件をめぐる行き違いを防げます。後から「言った・言わない」のトラブルにならないよう、書面で残すことが基本です。

有期契約は更新の有無・基準を明示する

契約期間に定めのある有期契約の場合は、契約を更新することがあるのか、更新する場合の判断基準は何か、を明示する必要があります。更新の有無があいまいだと、雇止め(契約を更新しないこと)の際にトラブルになりやすくなります。最初の契約時に、はっきり示しておきましょう。

就業規則の注意点

パート・アルバイトを雇うなら、就業規則にも気を配る必要があります。

パート用の就業規則を整える

正社員向けの就業規則だけでは、パート・アルバイトの労働条件をカバーしきれないことがあります。労働時間や休暇、手当などが正社員と異なる場合は、パート・アルバイト用の就業規則を別に整えるか、適用範囲を明確にしておきましょう。どのルールが誰に適用されるのかがあいまいだと、トラブルのもとになります。

作成・変更時の意見聴取

パート・有期雇用労働者に適用される就業規則を作成・変更するときは、その人たちの過半数を代表する者の意見を聴くよう努めることが求められています。当事者の声を反映させることで、実態に合ったルールになり、納得も得られやすくなります。

休暇・福利厚生の適用範囲

休暇制度や福利厚生について、パート・アルバイトにどこまで適用するかも整理しておきましょう。とくに、食堂や休憩室などの福利厚生施設の利用は、正社員と同じように利用させる配慮が求められます。待遇差を設ける場合は、その理由を説明できるようにしておくことが大切です。

待遇・労務管理で気をつけたいこと

日々の労務管理でも、見落としやすいポイントがあります。

パート・アルバイトの待遇・労務管理の注意点チェックリスト図

年次有給休暇は要件を満たせば付与する

パート・アルバイトでも、半年以上勤務し、所定労働日の8割以上出勤すれば、年次有給休暇が発生します。週の労働日数が少ない場合は、日数に応じた「比例付与」になりますが、与えなくてよいわけではありません。「パートに有給はない」という誤解は禁物です。

不合理な待遇差の説明義務

パート・有期雇用労働者から、正社員との待遇差について説明を求められたら、会社は説明する義務があります。「なぜこの手当はないのか」と聞かれたときに、合理的に説明できるよう、待遇の違いとその理由を整理しておきましょう。説明できない差は、不合理な待遇差と判断されるおそれがあります。

社会保険の加入漏れに注意

労働時間や日数が増えて加入条件を満たしたのに、社会保険に加入させていない、という漏れは起こりがちです。勤務実態が変わったら、加入対象になっていないかを確認しましょう。加入漏れは、後からまとめて保険料を求められるなど、会社にとっても大きな負担になります。

まとめ

パート・アルバイトは、呼び方こそ違っても、法律上は短時間・有期雇用労働者として、正社員と同じく労働法が適用されます。「パートだから」と軽く扱うのではなく、パートタイム・有期雇用労働法や同一労働同一賃金のルールを踏まえて対応することが大切です。

採用時は労働条件をきちんと明示し、雇用契約書を交付する。就業規則はパート用に整え、有給や社会保険の取り扱いも正しく行う。待遇差を設ける場合は理由を説明できるようにしておく。こうした基本を押さえることが、トラブルのない雇用につながります。

よくある質問

パート・アルバイトにも有給休暇は必要ですか?

必要です。半年以上勤務し、所定労働日の8割以上出勤すれば、パート・アルバイトにも年次有給休暇が発生します。週の労働日数が少ない場合は、日数に応じた比例付与になりますが、与えなくてよいわけではありません。「パートに有給はない」というのは誤解なので、正しく付与しましょう。

パート用の就業規則は別に作る必要がありますか?

労働時間や休暇、手当などが正社員と異なる場合は、パート・アルバイト用の就業規則を別に整えるか、正社員規則の適用範囲を明確にしておくことをおすすめします。正社員向けの規則だけだと、パートの労働条件をカバーしきれず、どのルールが適用されるのかがあいまいになり、トラブルのもとになります。

同一労働同一賃金とは何ですか?

正社員とパート・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇の差を設けてはいけない、というルールです。仕事の内容や責任の程度などが同じなら、基本給・手当・賞与などで不合理な差をつけることはできません。待遇に差を設ける場合は、その理由を合理的に説明できる必要があります。

有期契約に更新の上限はありますか?

法律で一律の上限が決まっているわけではありませんが、契約時に更新の有無や判断基準を明示する必要があります。また、有期契約が通算5年を超えて更新されると、本人の申し込みにより無期雇用に転換できる「無期転換ルール」があります。更新を重ねる場合は、この点も意識しておきましょう。

パートを社会保険に入れる条件は何ですか?

労働時間や日数が一定以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象になります。週の所定労働時間が正社員の4分の3以上ある場合などが基本ですが、一定規模の企業ではさらに広い範囲が対象になります。加入条件は法改正で変わることがあるため、最新の基準を確認し、加入漏れのないようにしましょう。

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