高年齢者雇用安定法と定年後再雇用の手続き

高年齢者雇用安定法と定年後再雇用の手続き

社員が定年を迎えるとき、「どこまで雇い続けないといけないの?」「再雇用の条件はどう決めればいい?」と悩むことは多いと思います。高齢化が進むなか、定年後の働き方をめぐるルールは、会社にとって避けて通れないテーマになっています。

私も総務で定年や再雇用の手続きを担当しますが、高年齢者雇用安定法のルールを知らないと、対応を誤ってしまいます。「定年だから退職」とは単純にいかない時代になっているからです。

今回は、高年齢者雇用安定法の基本と、定年後再雇用の手続き・注意点を整理しました。定年を迎える社員への対応を考える総務・人事の方の参考になればうれしいです。

タップできるもくじ

高年齢者雇用安定法とは?

まずは、高年齢者雇用安定法がどういう法律なのかを整理しておきましょう。

高齢者が働き続けられる社会を目指す法律

高年齢者雇用安定法は、高齢になっても意欲のある人が働き続けられるようにするための法律です。少子高齢化が進み、働き手が減るなかで、高齢者の経験や能力を活かそうという考え方が背景にあります。会社には、高齢の社員が一定の年齢まで働けるよう、雇用を確保する仕組みが求められています。

65歳までの雇用確保(義務)と70歳までの就業確保(努力義務)

この法律のポイントは、大きく2つあります。一つは、65歳までの雇用確保は義務であること。もう一つは、70歳までの就業確保が努力義務とされていることです。65歳までは必ず働ける環境を整える必要があり、70歳までは「できる限り対応するよう努める」という位置づけになっています。

65歳まで雇用確保義務・70歳まで就業確保努力義務の図

65歳までの雇用確保措置(3つ)

会社は、定年を定める場合、65歳までの雇用を確保するために、次の3つのうちいずれかの措置をとる必要があります。

65歳までの雇用確保措置3つの分類図
措置内容
①定年の引き上げ定年を65歳まで引き上げる
②定年の廃止定年そのものをなくす
③継続雇用制度定年後も希望者を引き続き雇用する(再雇用・勤務延長)

このうち、多くの会社が採用しているのが③の継続雇用制度です。いったん定年で区切ったうえで、改めて雇用契約を結び直す「再雇用」が一般的です。なお、継続雇用制度をとる場合、希望者は原則として全員が対象になります。「この人だけ再雇用しない」と会社が自由に選ぶことはできない点に注意しましょう。

70歳までの就業確保措置(努力義務)

2021年4月からは、70歳までの就業確保が努力義務として加わりました。65歳までの雇用確保が「義務」なのに対し、こちらは「努めること」とされている点が違いです。

70歳までの就業確保では、定年引き上げや継続雇用といった雇用による方法に加えて、業務委託契約を結ぶ、会社が関わる社会貢献事業に従事してもらう、といった雇用以外の選択肢も認められています。働き方の多様化に対応した、柔軟な仕組みになっています。現時点では努力義務ですが、今後の動向にも注意しておきましょう。

定年後再雇用の手続きと実務

もっとも一般的な継続雇用制度(再雇用)について、実務の流れを見ていきましょう。

就業規則・継続雇用制度を整える

まず、就業規則に継続雇用制度のルールを定めておきます。再雇用の対象や、契約の形、労働条件の決め方などを明確にしておくと、運用がスムーズになります。制度が整っていないと、定年を迎えるたびに対応がぶれてしまいます。

再雇用の労働条件を決める

再雇用では、改めて労働条件を決めます。1年ごとの有期契約とすることが多く、賃金や職務内容、勤務時間を見直すのが一般的です。現役時代とまったく同じ条件にする必要はありませんが、後で述べるとおり、引き下げ方には注意が必要です。本人とよく話し合い、納得のいく条件を決めましょう。

手続きの流れ

STEP
本人の希望を聴く

定年が近づいたら、本人に継続雇用を希望するかを早めに確認します。希望や働き方の意向を聴き取っておきます。

STEP
労働条件を提示し、合意する

再雇用後の賃金・職務・勤務時間などの労働条件を提示し、本人と話し合って合意します。労働条件通知書で明示します。

STEP
契約を結び、社会保険の手続きをする

新たな雇用契約を結びます。定年再雇用で労働条件が変わる場合、社会保険の手続き(同日得喪など)が必要になることもあります。

定年後再雇用の手続きの流れ図

定年後再雇用で気をつけたいこと

再雇用では、いくつか注意したいポイントがあります。トラブルを防ぐために押さえておきましょう。

不合理な待遇差は避ける

定年後の再雇用で有期契約になる場合、正社員との間に不合理な待遇差を設けることはできません(同一労働同一賃金の考え方)。仕事の内容や責任が現役時代とほとんど変わらないのに、賃金だけを大きく下げると、不合理な待遇差として問題になることがあります。職務内容に応じた、説明できる条件にすることが大切です。

賃金を下げる場合は、職務内容や責任の程度の変更とセットで考えるのが基本です。仕事は同じままで賃金だけ大幅に下げると、トラブルにつながりやすくなります。判断に迷うときは、社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

公的な支援制度を活用する

定年後に賃金が下がる場合、一定の要件を満たせば、本人が高年齢雇用継続給付を受けられることがあります。こうした公的な支援制度を知っておくと、本人の収入の不安をやわらげる助けになります。会社としても、こうした制度を案内できると親切です。最新の支給要件は、ハローワークなどで確認しましょう。

まとめ

高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保が義務、70歳までの就業確保が努力義務とされています。65歳までは、定年の引き上げ・定年の廃止・継続雇用制度のいずれかで対応し、継続雇用制度では希望者が原則全員対象になります。

定年後再雇用では、就業規則を整え、本人の希望を聴いて労働条件を決めます。賃金を見直す場合も、不合理な待遇差にならないよう、職務内容とのバランスに配慮することが大切です。高年齢雇用継続給付などの公的支援も活用しながら、高齢の社員が安心して働き続けられる環境を整えましょう。

よくある質問

社員を65歳まで必ず雇わないといけませんか?

定年を定める場合は、65歳までの雇用を確保する義務があります。具体的には、定年を65歳まで引き上げる、定年を廃止する、継続雇用制度を導入する、のいずれかの措置が必要です。多くの会社は継続雇用制度(再雇用)を採用しています。希望者は原則として全員が継続雇用の対象になります。

定年後の再雇用は有期契約でもいいですか?

はい、定年後の再雇用は、1年ごとの有期契約とすることが一般的です。賃金や職務内容、勤務時間を見直すこともできます。ただし、正社員との間に不合理な待遇差を設けることはできないため、職務内容に応じた、説明できる条件にすることが大切です。契約のたびに労働条件を明示しましょう。

再雇用で賃金を下げることはできますか?

賃金の見直しは可能ですが、下げ方には注意が必要です。仕事の内容や責任が現役時代とほとんど変わらないのに賃金だけを大きく下げると、不合理な待遇差として問題になることがあります。賃金を下げる場合は、職務内容や責任の程度の変更とセットで考えるのが基本です。判断に迷うときは専門家に相談しましょう。

70歳まで雇うのは義務ですか?

70歳までの就業確保は、現時点では努力義務です。65歳までの雇用確保が「義務」であるのに対し、70歳までは「対応するよう努める」という位置づけです。雇用による方法のほか、業務委託や社会貢献事業への従事といった、雇用以外の選択肢も認められています。今後ルールが変わる可能性もあるので、動向に注意しておきましょう。

継続雇用を希望する社員を断ることはできますか?

継続雇用制度では、希望者は原則として全員が対象です。会社が好き嫌いで再雇用する人を選ぶことはできません。ただし、就業規則に定めた解雇・退職の事由に該当するような場合など、限られたケースでは継続雇用しないことが認められる余地もあります。判断に迷うときは、慎重に検討し、専門家に相談することをおすすめします。

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