総務・経理の担当になって最初の1冊を選べと言われると、まず思い浮かぶのが「小さな会社の経理・人事・総務がぜんぶ自分でできる本」だと思います。
当サイトでもいろいろな本を紹介してきましたが、この本が一番反響がありました。
ただ、書名だけ見ても「ぜんぶ自分でできる」がどこまでを指すのか分かりませんよね。この記事では、この本に何が載っていて、どういう人に向いていて、逆にどういう人には物足りないのかをまとめます。
買う前の判断材料にしてもらえればと思います。
会社宛に請求書が届くAmazonビジネスなら、会社で使う本も事務用品も色々買えて便利です。「Amazonビジネスのメリットとデメリット」で詳しく解説しています。

「小さな会社の経理・人事・総務がぜんぶ自分でできる本」はどんな本?
ソシムから出ている実務書で、著者は北川知明さんです。
ひとことで言うと、中小企業の事務処理を「経理」「人事」「総務」の3分野まとめて1冊で扱う入門書です。はじめてこれらの業務を担当する人を対象に、それぞれの業務の概要と具体的な手続きを図解つきで説明しています。
3分野を1冊で扱っているのが最大の特徴
この本の一番の価値は、経理・人事・総務が1冊にまとまっていることだと思います。
というのも、小さい会社だと担当がきれいに分かれていないですよね。経理をやりながら社会保険の手続きもして、備品の管理もして、というのが普通です。分野ごとに本を買うと3冊必要になりますし、それぞれが分厚くて読み切れません。
本文中の各項目に[経理][人事][総務・他]の区分が付いているので、自分が担当している分野だけ拾って読むこともできます。この作りは実務書としてはありがたいところです。
増補改訂でインボイスと電子帳簿保存法に対応
今の版は2023年9月に出た増補改訂版で、インボイス制度と改正電子帳簿保存法に対応しています。
この2つはここ数年で実務が大きく変わったところなので、対応済みかどうかは買うときの大事な判断材料になります。中古で安い版を見つけても、この対応が入っていない版だと使いにくいと思います。
全ページフルカラー・A5判344ページ
増補改訂版から全ページフルカラーになりました。A5判で344ページ、定価は1,848円(税込)です。
実務書は白黒2色刷りが多いので、フルカラーで図解が入っているのは読みやすいです。A5判なので、机の引き出しにも入りますし、持ち歩くのも苦になりません。
収録内容|どんなことが載っているか
章立ては5つに分かれています。仕事の発生する周期で分けているのが分かりやすいところですね。
| 章 | 内容 |
|---|---|
| Chapter1 | 経理・総務・人事の事務の基礎 |
| Chapter2 | 日常的に行う経理関連の事務 |
| Chapter3 | 日常的に行う人事関連の事務 |
| Chapter4 | 年に1回行う事務 |
| Chapter5 | 発生のつど対応する事務 |
Chapter1:まず知っておくべき事務の基礎
総務・経理・人事それぞれの事務のあらましから始まって、印鑑の種類と使い分け、書類の整理のしかたと保存期間、印紙と切手の管理、定款、マイナンバーの取り扱いといった項目が並びます。
就業規則、労働時間と休日、割増賃金と三六協定、年次有給休暇の管理あたりも、この章で押さえます。
ここは前任者から引き継がれないまま「なんとなく」でやっている部分が多いところだと思います。書類の保存期間なんて、聞かれてすぐ答えられる人はそう多くないですよね。
Chapter2・3:日常的に発生する経理と人事の事務
経理側は、現金の管理から入ります。手元の現金の管理方法、領収書やレシートの処理、立替払い、仮払いといった具合に、1つのテーマを細かく分けて説明する作りです。預金、借入金、小切手、売掛金と続きます。
人事側は給与計算が中心です。給与計算の基礎知識、残業手当と通勤手当の計算、社会保険と雇用保険の計算、と段階を追って進みます。
Chapter4・5:年1回の事務と、そのつど発生する事務
Chapter4は年1回の事務が中心です。社会保険の定時決定、労働保険の年度更新、年末調整といった、1年に1回しかないので毎回やり方を思い出すところから始まる手続きが並びます。あわせて、報酬が大きく変わったときに行う随時改定も扱っています。
個人的には、この章があることがこの本の価値だと思っています。日常業務は繰り返すうちに覚えますが、年1回のものは覚えられません。手元に置いて毎年開く使い方ができます。
Chapter5は、そのつど発生する事務です。社会保険・労働保険の加入手続き、従業員を採用したときの流れなど、発生したときに慌てる系の手続きがまとまっています。
この本が向いている人・物足りない人
ここが一番知りたいところだと思うので、正直に書きます。
向いている人
- 総務・経理に異動してきたばかりで、何をやるのかも分かっていない人
- 経理も人事も総務も1人か2人で回している会社の担当者
- 前任者のやり方をなんとなく続けていて、根拠を確認したい人
- 年1回の手続きを毎回ゼロから調べ直している人
- 社長が事務も見ていて、全体像を把握しておきたい会社
総務経理作業の大きな流れが一通り書いてある本で、とても分かりやすいと思います。タイトル通り、これを読めば一通りの業務はできますね。一冊あって損はないと思います。
物足りないと感じる人
逆に、次のような人にはこの本だけでは足りないと思います。
- 特定の手続きを深く知りたい人。3分野を344ページで扱っているので、1つの手続きに割かれるページ数は限られます
- 様式の記入例を細かく確認したい人。手続き専門の本のほうが記入例は充実しています
- すでに数年やっている担当者。基礎の部分は知っていることが多いはずです
- 上場企業や大企業の担当者。あくまで中小企業の事務処理を前提にした本です
この本は「全体をつかむ本」であって「引く本」ではない、と考えてもらうといいと思います。全体をつかんだあと、担当することになった分野の実務書を足していく。そういう買い方が無駄が少ないです。
同じシリーズの本との使い分け
ソシムの「ぜんぶ自分でできる本」シリーズには、分野を絞った本もあります。全体像をつかんだあとに足すなら、この2冊が使いやすいと思います。
社会保険・労働保険の手続きを引き継いだなら
手続き別・事例別に書類のサンプルが多い上に、訂正方法などもていねいに書いてあって、いい一冊だと思います。本体のほうでは触りだけだった手続きを、様式ベースで追えます。
給与計算と年末調整を任されたなら
給与計算と年末調整に絞った本です。社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税と、性質の違う控除が並ぶところを順番に追える構成になっています。
番外編|総務経理の「心構え」を知りたいなら
実務書ではないのですが、あわせて挙げておきたい1冊です。多部未華子さん主演のドラマで有名ですよね。
総務経理作業において、大切なのは“心構え”だと思います。何を大切に作業するか、どう考えるべきなのか、分かりやすく学べる作品です。
苦労したり苦悩する主人公の思いに共感できることも多く、エンターテイメントとしても面白いと思います。度々この本を読んで、自分がやっていることが正しいかどうか振り返ったりしています。
ほかの総務・経理の本も見てみたい方へ
この記事では1冊を掘り下げましたが、担当業務別に20冊を整理した記事もあります。経理・税務の本や、産休・育休、ハラスメント対応など分野を絞った本もまとめているので、あわせてご覧ください。

総務・経理・会計・税務などの実用書を専門に取り扱う買取サイト「専門書アカデミー」を「会社の古本を高価買取で効率処分する方法」で紹介しています。改訂版に買い替えたときの旧版の処分に、よかったらご覧ください。

よくある質問
- 中古で古い版を買っても大丈夫ですか?
-
おすすめしません。今の版はインボイス制度と改正電子帳簿保存法に対応した増補改訂版で、この2つはここ数年で実務が大きく変わったところです。安く買えても、対応していない版だと結局調べ直すことになると思います。仕事の流れをつかむだけの用途なら困らない場面もありますが、経理を担当するなら最新版のほうが安全です。
- 簿記の知識がなくても読めますか?
-
読めると思います。はじめて経理・人事・総務の仕事をする人を対象にした本なので、前提知識がなくても進められる作りになっています。ただ、仕訳の考え方までは深く扱っていないので、そこを知りたい場合は別途、簿記や勘定科目の本を足すことになります。
- 電子書籍版でもいいですか?
-
通して読む用途なら電子書籍でも困らないと思います。ただ、年1回の手続きのたびに開き直す使い方をするなら、紙のほうが付箋を貼れて便利です。パソコンで作業しながら横に開いておけるのも紙の強みですね。
- 個人事業主向けの版もありますか?
-
同じシリーズに「増補改訂 個人事業主の事務処理がぜんぶ自分でできる本」があります。フリーランスの方も対象にした内容なので、会社ではなく個人で事務処理をする立場なら、そちらのほうが合うと思います。
- この本があれば、ほかの本はいらないですか?
-
最初の1冊としては、これで足ります。ただ、担当する業務が決まってくると、その分野の実務書が欲しくなると思います。特に社会保険・労働保険の手続きと、給与計算・年末調整は、様式の記入例が多い専門の本があると作業が早くなります。
まとめ
「小さな会社の経理・人事・総務がぜんぶ自分でできる本」は、3分野を1冊で扱う入門書です。異動してきたばかりの方や、ひとりで事務を回している方の最初の1冊に向いています。
逆に、特定の手続きを深く知りたい方や、すでに数年やっている方には物足りないと思います。そこは分野別の実務書で補うのがいいですね。
買うなら、インボイスと電子帳簿保存法に対応した増補改訂版を選んでください。仕事のお役に立てれば幸いです。