契約書を印刷して、印紙を貼って、ハンコを押して、郵送して、返送を待って、ファイリングして…という流れを毎月くり返していると、けっこう時間が取られますよね。
最近は電子契約に切り替える会社が増えてきました。今回はその基本をまとめました。
「電子契約って法的に有効なの?」「収入印紙はどうなるの?」あたりがとくに気になるところだと思うので、そのへんも順番に整理していきます。
電子契約とは何か?

電子契約って?
電子契約とは、紙の契約書を印刷・押印・郵送する代わりに、PDFなどの電磁的記録に電子署名を付けて契約を結ぶやり方のことです。
「電子契約」という言葉そのものを直接定義した法律はありませんが、契約の成立は当事者の合意があれば書面でも電磁的記録でも有効、というのが民法の基本ルールです(民法第522条)。
実務的には、専用のクラウドサービス(電子印鑑GMOサイン、クラウドサイン、freeeサインなど)を使って、相手にメールで通知 ⇒ 相手がWebで内容確認 ⇒ 電子署名 ⇒ 締結完了、という流れが一般的ですね。
電子契約のメリット・デメリットは?
電子契約を導入するメリットは次のとおりです。
- 契約の承認・締結までのスピードが早い(郵送の往復が不要)
- 契約書の保管・検索・バージョン管理がクラウドで一元化できる
- 印刷代・郵送費・ファイリングの手間が減る
- 紙の使用が減り、環境負荷が下がる
- 収入印紙が不要になる
収入印紙が不要なのは経理目線だと地味に大きいですね(年間で考えるとそこそこの金額になりますし、貼り忘れによる過怠税のリスクもなくなります)。
一方で、電子契約のデメリットは次のとおりです。
- 取引先が電子契約に対応していない場合、結局紙で進めることになる
- デジタルツールに不慣れな担当者にとっては最初のハードルがある
- 電子帳簿保存法の保存要件(検索性・改ざん防止など)に合わせた運用が必要
- 長期契約では電子署名の有効期限切れ対策(長期署名)を考えておく必要がある
- アカウント管理・退職者対応などセキュリティ運用の負担
「導入したけど取引先が紙のままでうまく使えていない」というのが、現場で1番よく聞く悩みな気がします。
電子契約って法的に有効なの?
結論からいうと、電子契約は法的に有効です。電子的に締結された契約の有効性を認める裁判例も出ています。
下記の内閣府「民事訴訟法第228条第4項とは」の説明にもある通り、政府も電子契約で使われる電子署名の有効性を認めています。
メールが裁判で証拠として扱われるのと同じで、真正(偽造されていないこと)が証明されれば、その手段は問われない形ですね。

引用「内閣府「民事訴訟法第228条第4項とは」」
海外でも電子契約は認められてるの?
海外でも電子契約はおおむね認められています。多くの国で、電子署名は手書きの署名と同じ法的効力を持つ前提で整備されているみたいです。
有名なところだと、アメリカの「電子署名に関するグローバルおよび国内商取引法(ESIGN)」、EUの「電子識別および信頼サービス規則(eIDAS)」などがあります。
ただ、種類によっては電子契約が使えない契約もあるので、海外と契約を結ぶときはその国・地域の法律を確認しておく必要があります。
電子契約はどれくらい普及してる?
電子契約の普及率は、デジタル庁の調査(2022年度実績)で56.3%、JIPDEC「企業IT利活用動向調査2024」では77.9%と報告されています。

出典:デジタル庁「電子契約の普及状況等について」(2023年)/JIPDEC「企業IT利活用動向調査2024」
対象企業の規模や調査年度で数字に幅がありますが、おおむね半数以上の企業ですでに電子契約が使われている、という感じですね。
ちなみにデジタル庁は令和7年(2025年)3月に「電子契約の導入・活用ガイドライン(案)」も公表していて、国としても普及をさらに後押ししています。
電子契約は収入印紙が要らないって本当?
電子契約は、収入印紙が不要というのが現在の取り扱いです。
国税庁では、収入印紙が必要な「課税文書」を次のように定義しています。
印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。
(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」
国税庁としては、収入印紙が必要な文書の中に電子契約は明記されていないものの、必要ないとも明記されていない、という状況ですね。ただ一般的には「文書」とは紙のものを指すので、電子契約は印紙税の対象外という整理になっています。
この裏付けとして、次の小泉首相(当時)の答弁書でも、電磁的記録には印紙税が課税されないことが明確に示されています。
五について 事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである
参議院「答弁書第九号」
印紙税の細かい取り扱い(電子契約をプリントアウトしたらどうなるか?など)は別記事にまとめています。気になる方はあわせてご覧ください。

電子契約の種類と用途
BtoBとBtoCで電子契約は違う?
BtoB(企業間取引)とBtoC(企業と消費者間取引)では、電子契約の使われ方がけっこう違います。
BtoBでは、業務委託契約・取引基本契約・NDA・雇用契約など、社印を押して郵送していた書類を電子化するケースが中心ですね。複数の決裁者が関わることが多いので、ワークフロー機能や電子帳簿保存法対応が重視されます。
一方BtoCは、ECサイトでの規約同意・サブスクの申込・保険契約・賃貸借契約など、消費者がスマホで「同意する」をタップするタイプが中心です。こちらは使いやすさ(UI)と本人確認の方法が大事になります。

電子契約の実際:導入から運用まで
電子契約ってどう進むの?
電子契約は次のような流れで進みます。Webやメールでやり取りされて、電子署名が使われる点以外は、紙の契約とそんなに違わないですね。
送信者が電子契約サービスに契約書(PDF)をアップロードし、相手のメールアドレス宛に通知を送ります。
受信者がメールのリンクからWebで契約内容を確認します。多くのサービスは会員登録なしで確認・署名できます。
受信者が電子署名のボタンを押すと締結完了。締結済みの契約書はクラウド上に保管され、双方がいつでも参照できます。
電子署名って?
電子署名は、公開鍵暗号方式という仕組みで「誰が署名したか」「署名後に改ざんされていないか」を担保する技術です。法的な根拠は電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)で定められています。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
e-Gov「電子署名及び認証業務に関する法律」第二条
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
電子署名には大きく分けて「当事者型」と「立会人型」の2タイプがあります。サービスを選ぶときによく出てくる用語なので、ざっくり整理しておきます。
| タイプ | 署名する人 | 特徴 | 主なサービス例 |
|---|---|---|---|
| 当事者型 | 契約当事者本人 | 本人の電子証明書が必要。本人性が強い反面、相手も準備が必要 | 電子印鑑GMOサイン(当事者型)など |
| 立会人型 | サービス事業者(第三者) | メールアドレス認証ベース。相手の準備が不要で導入しやすい | クラウドサイン、電子印鑑GMOサイン(立会人型)、freeeサインなど |
中小企業では、まず相手側の負担が少ない「立会人型」から始めるケースが多いですね(取引先に「これ何?登録必要?」と聞かれにくいので)。

電子契約サービスはどう選べばいい?
電子契約サービスは各社特徴があるので、選ぶときに見ておきたいポイントをまとめました。
| 項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 料金・費用対効果 | 月額・送信件数あたりの単価と、削減できる印紙代・郵送費のバランス |
| 法的効力 | 改ざん防止・タイムスタンプなどの証明機能が備わっているか |
| 安全性 | 暗号化・アクセス権限管理などのセキュリティ機能 |
| 自社の用途との適合性 | 業務委託・雇用契約・NDAなど、自社が結ぶ契約類型に合うか |
| 電子署名のタイプ | 当事者型/立会人型のどちらか。両対応のサービスもある |
| 既存システムとの連携 | 会計ソフト・人事システム・ストレージとの連携 |
| 機能 | ワークフロー・テンプレート・検索・アラート通知など |
| 長期契約への対応 | 10年以上の保存が必要な契約なら、長期署名(PAdES-LTV等)への対応 |
| 操作性 | 毎日触る担当者がストレスなく使えるか |
| 取引先の負担 | 相手に会員登録を求めるか、メール1本で完結するか |
サービス選びの考え方は別記事でさらに詳しくまとめています。

電子契約、どのサービスがいいか悩んだら
会社によって契約書の量や使い方が全然違うので、「全社にこれ!」というサービスはないと思います。
ただ、初めて電子契約を調べていて何からスタートしたらいいかわからない、ということなら電子印鑑GMOサインの資料を見てみるのがいいと思います。電子契約の進め方や費用感が一通りまとまっているので、勉強用としても役立ちますよ。
下のような分かりやすい資料がそろっていて、今すぐ導入予定がなくても勉強として読んでみるのもおすすめです。

電子契約のよくある質問(Q&A)
- 電子契約とFAXやPDFをメール送付するのは何が違うの?
-
FAXやPDFメール送付は「合意の連絡手段」なだけで、本人性や改ざん防止の仕組みはありません。電子契約は電子署名やタイムスタンプによって「誰が・いつ・何に同意したか」を技術的に証明できる点が大きく違います。
- 取引先が電子契約に対応していない場合はどうする?
-
立会人型のサービスなら、相手は会員登録なしでメールから署名できるので、ハードルはかなり低いと思います。それでも難しい相手とは、その契約だけ紙でやる、というのが現実的な落としどころですね。
- 電子契約は電子帳簿保存法の対象になるの?
-
電子契約で締結した契約書は、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当するので、電子データのまま保存する必要があります(紙に印刷して保存だけ、はNG)。検索性・改ざん防止などの保存要件を満たした形での保管が必要です。
- 電子契約をプリントアウトしたら収入印紙はいるの?
-
原則として印紙は不要です。電子契約の契約成立時点は「電磁的記録」なので、後から紙にプリントアウトしても「写し」の扱いになり、課税文書には該当しないとされています。詳しくは別記事「電子契約における印紙税の取り扱いガイド」をご覧ください。
- 電子契約に切り替えると過去の紙の契約はどうなる?
-
過去の紙の契約はそのまま紙で保管しておけば問題ありません。電子契約に切り替えるのは「これから新しく結ぶ契約」からが基本で、既存の紙の契約をわざわざスキャンして電子化する必要はないですね。
- 電子契約で使えない契約はあるの?
-
以前は事業用定期借地契約や任意後見契約など、書面が必須の契約がいくつかありましたが、近年の法改正で電子化が認められた契約も増えてきました。実務上、ほとんどの契約類型で電子契約が使えるようになっていますが、まれに書面必須の契約も残っているので、特殊な契約のときは個別に確認しておくと安心です。
